3者による鼎談を意味する「トライアローグ」。関東、中部、北陸地方を代表する3つの公立美術館の学芸員が話し合いを重ね、それぞれのコレクションを組み合わせながら20世紀の西洋美術をたどる展覧会が、横浜美術館で行われている。
『トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション』では、3つの美術館の所蔵品の中からピカソといったモダン・マスターをはじめ、アンディ・ウォーホルやゲルハルト・リヒターなどの第二次世界大戦以降の現代美術を約120点公開している。キーワードは、数字の「3」だ。展示を「アートの地殻変動」、「アートの磁場転換」、「アートの多元化」の3章で構成。さらに1900年からの100年間を30年区切りにして作品を並べている。20世紀美術の入門編といえるような内容だ。
各館の所蔵品を三つ巴にした「Artist in Focus(アーティスト・イン・フォーカス)」に注目したい。たとえばキュビスムの画家であるフランスのフェルナン・レジェ。3つの所蔵先の異なる『緑の背景のコンポジション(葉のあるコンポジション)』(1931年、愛知県美術館蔵)と『コンポジション』(1931年、横浜美術館蔵)、それに『インク壺のあるコンポジション』(1938年、富山県美術館蔵)が展示されている。どれもレジェが第一次世界大戦の従軍体験から兵器の機能美に魅せられ、戦後に機械的モチーフを組み合わせて描いた同時代の作品であることわかるだろう。各コレクションの異なる個性にも気を付けたい。横浜美術館はシュルレアリスム、愛知県美術館はドイツ表現主義、富山県美術館は第二次世界大戦以降の作品が充実。それぞれの手厚い部分を前面に押し出されている。また収集した当時、同時代の現代美術であり、いまほど評価が定まっていなかったリヒターの『オランジェリー』(1982年、富山県美術館蔵)など、美術館のコレクション史に残るような重要な作品も見どころだ。「まさかこれほどの傑作が国内にあったとは……」と、驚くことは一度や二度ではない。
コロナ禍のいま、海外の作品を借用する大規模な展覧会の開催は難しくなっている。しかしそうした状況だからこそ、美術館が持つ所蔵品の価値が見直されているとも言える。横浜美術館は本展を終えると、2021年3月から改修工事のため2年を超える休館に入る。長期休館前の最後の展覧会にて一堂に会した、誇らしく思うほど質の高い国内のコレクションで、20世紀の西洋美術の歴史をおさらいしたい。
『トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション』
開催期間:2020年11月14日(土)〜2021年2月28日(日)
開催場所:横浜美術館
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
TEL:045-221-0300(代表)
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木(2月11日は開館)、年末年始(12月29日〜1月3日)、2月12日
観覧料:一般¥1,500(税込)
※オンラインでの日時指定予約制。マスク着用や入館前の検温、手指消毒液を設置するなど、新型コロナ感染拡大防止のための対策を実施。
https://yokohama.art.museum/