260年にわたって一大文化を築いた「江戸」。 大名から庶民まで、それぞれに目を見張るデザインを生み出していった。 なかでも、幕府の度重なる禁令によって、 さまざまな制限を強いられた庶民は、優れたクリエイションを発揮した。 大胆な構図やエロティックな浮世絵、絵や文字を駆使した出版物と広告、 庶民の生活を彩るグラフィック、そして、男たちの審美眼を表現した装い。 それらすべての根底に流れている「粋(いき)」という美意識に、 いまこそ注目したい。
目次
刻々と姿を変えた、「江戸」という都市。
庶民が愛した浮世絵は、江戸のポップ・アート
風景画×森山大道 歌川広重の斬新かつ大胆な都市のスナップ
花鳥画×川瀬敏郎 葛飾北斎のエロティックな眼差しを感じる。
美人画×緒川たまき 「美人たち」の秘めたるドラマに想いを馳せる。
世界の「眼」は、どのように評価したか。
V&A/ギメ東洋美術館/ボストン美術館
江戸の四季折々〔春〕
パワフルで「粋(いき)」な出版文化を大研究。
コラボレーション 大衆を沸かせた、仕掛け人と作家の名コンビ
バリエーション 小説から料理本まで、江戸は読み物パラダイス
ベストセラー 江戸っ子は、軽妙な風刺や洒落がお好き。
広告媒体 微笑ましくもしたたかな、広告あの手この手。
江戸の四季折々〔夏〕
庶民の生活を彩る、江戸グラフィック
着物 男たちの装いに表現された、意地と美意識。
縞 洒落者を気取る、男たちの飽くなき情熱。
色 無限の広がりを見せた、庶民の人気3色。
裏まさり 見えない部分にこそ、自己主張するのが通人。
書 風景に隠され、逆さに落ちる文字の楽しさ。
千社札 巡礼の印から、オリジナリティを競う名刺へ。
千代紙 錦絵のような花鳥風月や、遊び心を1枚に。
ぽち袋 小さなご祝儀袋に込められた、笑いや人情。
手ぬぐい 歌舞伎の家紋や舞台と、身近なモチーフの意匠。
浴衣 湯屋の流行とともに広がった、藍染めの装い。
風鈴 赤い魔除けが、目にも涼しげな夏の風物詩に。
切子 職人の技が生む、きらびやかで繊細な文様。