レオナルド・ダ・ヴィンチ――彼はこう言い遺した。「画家は万能でなければ賞賛に値しない」。人類の英知の結晶ともいえる膨大な研究は、ただ「絵画」という表現を完成させるためだけに集約されたのだ。残された絵画作品は、わずかに13。それらをさまざまな角度から徹底解剖するとともに、研究のすべてを書き記した膨大な“手稿”をひも解く。――ルネサンスの天才は、何を描いたのか?
目次
芸術の寵児を育んだ、ルネサンスという時代。
「美の教科書」たる全絵画を、徹底解説!
受胎告知
圧倒的なまでの完成度を誇る、デビュー作。
カーネーションの聖母
作風の確立に向け、重ねた努力が見える。
ブノワの聖母子
マリアの微笑みに投影した、母への思い。
ジネヴラ・デ・ベンチの肖像
どんな“拡大(クローズアップ)”にも耐える、驚異の描写力。
聖ヒエロニムス
数奇な運命をたどった、“苦悶する聖者”。
東方三博士の礼拝
寓意と写実が交錯する、野心的な群像図。
岩窟の聖母
大胆な発想ゆえに、物議を醸した問題作。
白貂を抱く貴婦人
躍動感あふれる白貂に、目を奪われる。
ラ・ベル・フェロニエール
以後の絵を読み解くための、ヒントが満載。
最後の晩餐
幾多の災難を越え、人類の至宝は守られた。
ラ・ジョコンダ(モナ・リザ)
その微笑の持ち主は、いったい誰なのか?
聖アンナと聖母子
母性への憧れがあふれる、三世代の肖像。
洗礼者ヨハネ
“遺作”をもって、彼の芸術は頂点を極めた。
非凡さを雄弁に物語る、習作&未完の作品。
生涯をかけた研究の集大成、「手稿」をひも解く。
手稿とは?
軍事学、舞台、彫刻、都市、計画、解剖学、航空力学、天文学、哲学
67年の生涯は、西洋美術史そのものだった。
だからダ・ヴィンチは、永遠に輝く。
文・池上英洋