腕時計ブランド「TRUME」に識者が迫る連載企画。第4回は気鋭の建築家、藤田雄介さんがデザインの方法論を軸に語ります。
TRUME(トゥルーム)は、エプソンが立ち上げた新コンセプトウオッチのブランド。さまざまなセンサーを搭載しながらも、その表現をすべてアナログの針で行うという大胆な発想で話題をさらいました。同じくアナログがもつ力を大切にして設計をする建築家、藤田雄介さんにTRUMEを使ってもらい、そのインプレッションを語ってもらいました。
最先端の技術を、 針だけで表現する。
木製のサッシでリノベーションされた住空間。そこには、人間性にあふれた表情が感じられます。生産効率やコスト優先でアルミのサッシが採用されている一般的な事例とは一線を画す魅力が、建築家・藤田雄介氏の作品にはあります。
「佇まいとしては、アナログに戻る感じです。見た目も勿論重要ですが、木製のサッシは熱伝導率が低く断熱性が圧倒的に高いのです。高性能であることと、アナログなものの融合というテーマが重要だと考えています」
エプソンの新コンセプトウォッチ、TRUME。この腕時計の本体にはGPSセンサー、気圧・高度センサー、方位センサーを内蔵。さらに付属のエクスパンデッドセンサーには紫外線、温度、歩数、消費カロリーを測定するセンサーを搭載。計測データは、すべて文字板のアナログ針だけで表示されます。
多機能でありながら、研ぎ澄まされた美しさを備えたアナログウオッチ。存在感のある外観デザインは、戦国時代の鎧からインスピレーションを得て具現化されました。情報化社会の現代を戦い続ける者が身に付ける、現代の小さな鎧。刀の鞘をモチーフとしたレザーバンドは、表地はシボを入れ渋みを演出。裏地には、漆の風合いを織り交ぜた奥ゆかしさを表現しつつ、朱色で胎動を表現しています。ケースはヘアライン仕上げにすることで、冷静に時を見つめる姿勢を表現したといいます。
「私の仕事は住宅の設計がメインですが、木工の作家さんにドアノブをつくってもらっています。かたちはシンプルですぐにつくれそうですが、微妙な面取りの仕方ひとつで、萌えるかどうか、気持ちよさが変わります。TRUMEにも針や文字盤といった細部へのこだわりや機能美を感じます。」とT RUMEの第一印象を藤田さんは語ります。
いかにもではなく、温かみも残したデザイン
腕時計と建築という違いはありますが、機能性だけに偏らない設計やデザインの姿勢に共通項があるようです。
「現代の住宅には、強い構造だけでなく高い環境性能が求められています。とはいえ、ただ高性能なだけでは建物に対して愛着がもてません。家であるかぎり、何か人間的な佇まいを求めたくなりますよね。それに応える設計を心がけています。TRUMEにも、同様の考え方があると思います。ぱっと見てすごい高性能だと主張し過ぎないのがいいですよね。文字板にいろいろあるので何かできそうですが、まさか紫外線のレベルや歩数の表示もできるとは分からない。アナログの中に最先端の技術を詰め込んでいるけれど、いかにもではなく温かみも残したデザイン。このことが重要だと思います」
多彩な機能をアナログウオッチとして昇華すべく、TRUMEの文字板と針のデザインには心血が注がれています。計測結果を示すのはセンターとインダイヤルに配された赤い針。時分針は時刻の視認性を向上させつつ、インダイヤルを極力隠さないように抜き加工を施すなど、随所に使い勝手を向上させるアイデアが込められているのです。
「デジタルは使わず、これ見よがしにしないためにすごい技術が必要なのだろうと思います。本当はもっとボタンが増えそうな所をあえて抑制しているのではないかと想像します。このようにシンプルなデザインに収める技術力がエプソンらしさなのでしょうか」
エプソンだから製造できる小型・高性能センサーを用い、時間のみならず空間や環境の変化から人間の活動まで、さまざまな瞬間をアナログの針で整然と可視化してくれる腕時計。それがTRUMEなのです。
問い合わせ先/エプソン販売株式会社 TEL:050-3155-8285
【TRUME、時を刻むアナログの鼓動】Vol.1はこちらから。
【TRUME、時を刻むアナログの鼓動】Vol.2はこちらから。
【TRUME、時を刻むアナログの鼓動】Vol.3はこちらから。