2019年秋冬からスタートした新ラインの「ジル サンダー+(プラス)」は、リラックスしたシルエットに、クリーンで落ち着いたデザイン。日常で着たい服として、いまとても気になります。「ジル サンダー」のブランドヒストリーを振り返りながら、ジル サンダー+を大解剖します。
春夏もののセールが終わり、秋冬ものがいよいよ立ち上がり始めたこの季節。今シーズンは何を着ようか? と考えるのも楽しい時期です。「ストリート」のトレンドが落ち着き始めたといわれますが、ダッドスニーカーやロゴプリント、ビッグフォルムはまだまだ健在。しかしその一方で、シンプルで落ち着いた上質な服はやはり着やすく、大人のライフスタイルにフィットします。そこで注目したいのが、今シーズンからスタートする「ジル サンダー+(プラス)」です。
紆余曲折を経て返り咲いた、ルーシー&ルーク・メイヤーのジル サンダー
ジル サンダーといえば、ミニマリズムの旗手。ドイツ出身のジル・サンダーがスタートしたファッションハウスです。彼女はファッションジャーナリストを経てセレクトショップをオープンし、自身の名を冠したブランドをローンチ。1973年にパリを拠点にコレクションを発表。当時のパリはジャンポール・ゴルチエやティエリー・ミュグレーなどシアトリカルなデザインがファッションシーンを牽引しており、ジル サンダーのミニマルなテイストは評価されませんでした。80年代後半、ミラノに発表の場を移し、徐々に評価を獲得。90年代にはパワフルな80年代モードからの反動か、シンプルで上質、そぎ落としたデザインが大きくヒットしました。そのDNAは現在まで一貫しています。ブランドのポリシーは“Design without Decoration”。服を構成するのは、素材と縫製と着る人。ジル サンダーの服は、見る人触れる人に語りかけてきます。
90年代のヒットから、1999年にプラダ・グループが買収。しかし翌年、ジル・サンダー本人がデザイナーを退任しました。以降本人の復帰・退任が繰り返されます。鉄の女と形容される彼女は妥協を知らず、そのため経営陣ともめることがしばしばあったようです。ブランドとしての態勢が安定しない中、ラフ・シモンズがクリエイティブ・ディレクターを務めた期間(2005~2012年)がありました。彼のアートな感性、テーラリング技法、ソリッドな色づかいはジル サンダーと親和性が高く、在任中のブランドは再び栄華を迎えました。ラフ退任後はまた不安定になりましたが、2017年、再びこの歴史的ファッションハウスを輝かせるマリアージュが起こったのです。
それを引き起こしたのが、2017年にクリエイティブ・ディレクターに就任し、現在ブランドを率いているルーシー&ルーク・メイヤー夫妻。ルーシーはラフ・シモンズ時代のディオールでヘッドデザイナーを担当、ルークはジョージタウン大学、オックスフォード大学でビジネスを学び、シュプリームのヘッドデザイナーを務めたデザイナーデュオです。パリモードとストリートシーンの中心で活躍していた彼らがつくり出すコレクションは創業者のデザインポリシーを進化させ、そのエフォートレス、モダンなコレクションが毎シーズン高い評価を得ています。
クリーンでオーガニックな「ジル サンダー+」
幼い頃から自然に囲まれて育ったというメイヤー夫妻。“都会から抜け出した暮らし”をコンセプトに、この秋冬からメインコレクションを補う新ラインとして始まる「ジル サンダー+(プラス)」は、都会的なメインコレクションに対して、温もりが感じられ、山や田園を想起させます。その印象の違いは、より機能性を重視したデザイン、そしてオーガニックな素材づかいでしょうか。
淡いイエローのブルゾンはリサイクルナイロンとウールの混紡生地を玉ネギで染めたボディ。袖はリップストップナイロンでアウトドアプロダクトのエッセンスを感じさせます。3mを超えるグレーのロングマフラーはコートをつくる際に破棄されたカシミア残糸を集めて編んだもの。シンプルなブーツのソールはビブラムソール。「+」にはさらなる素材と機能を追求する意図を込めたというステイトメントにも頷けるこだわりです。
色、シルエットともに優しく身体を包んでくれます。重厚なスニーカーや装飾に富んだストリートもいいけれど、纏うたびに落ち着き、毎日着たくなるのは、こういった優しさを感じさせる服ではないでしょうか。
「マッキントッシュ」とのコラボレーションに注目。
「+」には、パートナーシップという意味も込められています。ファーストシーズンでは英国の老舗コートブランド「マッキントッシュ」とコラボレーション。永遠の名品、ゴム引きコートをステンレスボタンでジル サンダー仕様にしています。シンプルなカスタムですが、クリーンかつラグジュアリーな佇まいに見えるのは、絶妙なカラーリングとのバランスでしょう。コートの他にも、オリジナルデザインのガーメントも開発。ゴム引きテキスタイルを使用したハット付きポンチョは、タウンとアウトドアを行き来するモダンなデザインに仕上がっています。
日本製のデニムもラインアップしている「ジル サンダー+」。クラフツマンシップを感じさせるアティチュードと優しい佇まいを、いち早く取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと心地よいシーズンを送れること間違いないでしょう。
問い合わせ先/ジルサンダージャパン TEL:0120-919-256