雑誌や書籍の挿絵、ANAカードのキャラクターなど、どこか懐かしくもスタイリッシュなイラストを描くソリマチアキラさん。雑誌などでタイドアップしたスーツスタイルをよく見かけますが、日差しも強まるこれからの季節、Tシャツや半袖シャツであればどのように着こなすのでしょうか。初夏を彩る「リゾートスタイル」というテーマで話を聞いてみました。
洒脱な作品を数多く描き、ウェルドレッサーとしても名高いイラストレーターのソリマチアキラさん。英国調を含め、欧米のヴィンテージファッションをこよなく愛します。今夏、英国の老舗ブランド「サンスペル」とコラボし、リゾート感あふれるTシャツ&シャツを発表したソリマチさんに、自身のリゾートスタイルを紹介してもらいました。イメージしたのはアガサ・クリスティ原作、1982年公開の『地中海殺人事件』です。劇中では、地中海のマヨルカ島を舞台に白麻のスーツやピンチバックジャケットで着飾ったコロニアルスタイルの紳士たちが登場。そんなレトロな時代の空気感を、いまの着こなしでどう表現するのでしょうか。
シンプルなTシャツを、トラウザーズでドレスアップ
「リゾートスタイルで頭に浮かぶのはクラシック、あるいはオーセンティックな情景です。アガサ・クリスティ原作の『地中海殺人事件』やジャック・タチの『ぼくの伯父さんの休暇』といった古い映画に登場しそうなスタイル。主役じゃなくても映像の中に普通に登場するような人たちのスタイルが特に好きなんです」
実践しているリゾートスタイルのイメージについて、こう語るソリマチさん。Tシャツを着てもテーラードなトラウザーズを合わせドレスアップするのがソリマチ流です。しかも全体の色みをワントーンにおさえたコーディネートが、都会で映える“大人のリゾートスタイル”を感じさせます。Tシャツに合わせた首元の茶系のスカーフとまっ白なキャンバススニーカーに、クラシックなスタイルを愛するソリマチさんのファッションセンスが薫ります。
クルーネックのTシャツはフランスの「アナトミカ」で、ヘビーウェイトのコットン生地が使われています。ボトムスに選んだチノーズは「ブッチャープロダクツ」のものです。カジュアルなチノーズでも裾はダブルで、しかも4.5cmのダブル幅。テーラードのトラウザーズと同じような感覚で着こなします。首元のスカーフ含め、全体を茶系でまとめています。「スカーフは暑い夏に汗を拭くときにも使いますね」とソリマチさん。白のキャンバススニーカーは英国の「サンスペル」。素足で合わせて、足元を軽やかに見せます。
ふたつ目のスタイルはリゾート感あふれるボーダーTシャツを取り入れた着こなしです。ボトムに選んだのが、ベルトレスタイプのトラウザーズ。リネンがクラシックなテイストを演出します。足元はソールの薄いエレガントなダンスシューズを。素材にはやわらかなレザーが使われています。パナマハット、ラウンドタイプのサングラスがクラシックなリゾートスタイルを彷彿させますが、ソリマチさんにとって帽子やサングラスは単なるアクセサリーではなく、実用品です。
「日本の夏は日差しも強いので、帽子は必需品ですね。サングラスにも同じことがいえます。イラストレーターは目を使う仕事。日差しが強い夏には、サングラスを手放せませんね」
白×ネイビーのボーダーTシャツは英国の「サンスペル」。首元のネイビーのトリミングがクラシックなテイストを奏でます。Tシャツをタックインして、ベルトレスのトラウザーズに合わせているところも、ソリマチさんらしいスタイルです。トラウザーズは「バタク」で仕立てたもの。白のレザーシューズは英国の「クラウン」のダンス用です。実用品として使っているというサングラスは英国の「カトラー&グロス」。帽子は最上級のパナマハットをつくる南米のモンテクリスティで手がけられたものです。
1950~60年代の雰囲気を醸す、開襟シャツ
ソリマチさんがリゾートスタイルで合わせるシャツは、開襟タイプです。
「クラシックな開襟シャツが好きなんですよ。1950〜60年代の雰囲気を感じます。この開襟シャツ、去年くらいから店頭に再び並ぶようになりましたが、それまでは全然なかったので、探して購入しました。裾のラインがスクエアなので、裾を出して、さらっと着ることが多いですね」
パンツはTシャツのコーディネートで登場したチノーズを再び合わせています。購入時にはもっと太いシルエットだったものを、好みに合わせて、シルエットを変えたそうです。
シルエットをアレンジした「ブッチャープロダクツ」のチノーズに合わせているのが、日本の「サンリミット」の開襟シャツ。
「このシャツは、『コム デ ギャルソン・シャツ』を担当していたデザイナーが手がけたもの。(仮縫いなどに使われる布の)シーチングのような色合いが気に入っています」
選んだ靴はグルカサンダルです。英国ノーザンプトンの老舗「チーニー」製で、いかにもリゾート気分を盛り上げてくれるデザインです。ここでも全体の配色はワントーンで。チノーズをはいてもクラシックなテイストを感じさせます。
最後はリネンの開襟シャツを用いたリゾートスタイルです。実はこのシャツにもソリマチさん独自のアレンジを加えています。ボタン糸をすべて取り替え、シャツと同じ色にしたそうです。そのシャツに組み合わせたのが、ドレスタイプのトラウザーズとビットモカシン。サマーウールのトラウザーズのしなやかな味わいやクラシックなディテールが往時のドレススタイルを彷彿させます。
ボタン糸をアレンジした開襟シャツはアメリカの「インディビジュアライズドシャツ」。クラシックなトラウザーズは、日本の「バタク」製です。足元の靴は「グッチ」のビットモカシン。「ずいぶん前から履いています」と話しますが、手入れは完璧です。帽子はTシャツの着こなしにも登場したパナマハットで、時計は「オメガ」のミリタリータイプ。
披露していただいたどのリゾートスタイルにもソリマチさんの個性が表現され、なおかつモダンさも感じられます。リゾートスタイルといっても、アイテム自体は特別なものではなく、クラシックでオーセンティックなものばかり。これからの夏の季節に、カジュアルな着こなしのヒントにもなるのではないでしょうか。
「サンスペル」とコラボした、ノスタルジックなTシャツ
モダンなリゾートスタイルを紹介してくれたソリマチさんがこの夏、160年の歴史をもつ英国の老舗「サンスペル」とコラボレーションしてTシャツや半袖シャツにイラストをのせました。
「英国で旅行シーズンに出回る昔のポスターや、プライベートビーチの海辺や岩場のシーンなどを思い浮かべながら描きました」
Tシャツに描かれたグラフィックは、レトロでノスタルジック。ソリマチさんの着こなしや人柄に通じるものがあります。巷で見かけるポップなデザインのTシャツとは違った印象で、大人の香り漂う仕上がりです。
今回リリースされたのは、Tシャツが2種類。ボディには「サンスペル」のリヴィエラポロシャツやキャンバススニーカーが描かれています。またシャツやトランクスにはリゾートを楽しむ紳士のイラストが総柄で入っています。
「1950年代のアメリカやヨーロッパのヴィンテージウエアでよく見られるようなプリントシャツは昔から好きで、10代から20代の頃はよく着ていました」と話します。シャツのデザインはソリマチさんが好きな開襟タイプで、夏のリゾート気分を満喫できるでしょう。
気分が軽くなる季節、ファッションに取り入れたいちょっとした遊び心。ソリマチさんのモダンレトロな雰囲気のイラストであれば、大人も取り入れやすいはず。今年はこんなTシャツやシャツを着て、バカンスに出かけるなんていかがでしょう?