香取慎吾のすべてをアートで見せる、前代未聞の国内初個展へ潜入!

  • 写真:森山将人
  • 文:佐野慎悟
  • スタイリング:細見佳代
  • ヘア&メイク:石崎達也
  • 衣装協力:GUCCI
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香取慎吾さんの日本初個展が、東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京で開催中です。客席が360度回転する特殊なステージを駆使した珍しいスタイルの本展について、その見どころを香取さん本人に語ってもらいました。

今回の個展を象徴する巨大なオブジェ作品『BOUM! BOUM! BOUM!』と、その前に立つ香取慎吾さん。このオブジェに耳を寄せると、制作途中にサンプリングされた、香取さんの心音が聞こえます。「僕の心臓の音も、DNAも、内臓も、歯型も、全部をアートにしました」と香取さん。

昨年9月に、パリのルーヴル美術館地下にあるカルーセル・デュ・ルーヴルで、アーティストとしての初個展『NAKAMA des ARTS』を開催し話題となった香取慎吾さん。現在、IHIステージアラウンド東京で行われている日本初個展『サントリー オールフリーpresents BOUM! BOUM! BOUM! 香取慎吾NIPPON初個展』では、パリで披露した作品の凱旋展示の他、この展示のために新たに描き下ろした新作を含む、計126点の作品が展示されています。

「アーティストとして自分の個展を開くことが夢でしたが、まさか人生初の個展がルーヴルで、そして2回目がこんな形になるとは、まったく想像していませんでした。いま無事に開幕を迎えた状態ではありますが、これが完成というわけではなくて、会期中もどんどん作品を追加していこうと思っています」

ルーヴルのプレッシャーを克服できたのは、東京ドーム公演のおかげ?

今回展示されているのは、パリでの個展以前に制作した作品104点と本展のために制作した新作16点を含む、全126点にもおよぶ大量の作品。ここまで多作な上に、どれひとつとして似通ったものがないところに、アーティストとしての幅の広さを感じます。

1日9回の公演制を採用するこの個展では、来場者はまず劇場型の客席に座り、展示への導入となる映像作品を鑑賞します。映像に合わせて360度回転する客席に身を委ねているうちに、香取さんによるアートの世界観に、どんどんと引き込まれていきます。

「この映像は、昨年公開の映画『クソ野郎と美しき世界』でご一緒した児玉裕一さんにディレクションしていただいたもので、児玉さんと一緒に、お互いにアイデアを出し合いながらつくりました。やりたいことを全部詰め込んだので、はちゃめちゃな感じになっていますが、ステージの幕が開く前のオープニング・ムービーとして、皆さんの気分を最高潮まで高めたいという思いを込めました。まずは頭を空っぽにして、アートの楽しさを全身で感じてほしいと思っています」

映像が終わるとアート作品が展示された巨大な会場の全貌が露わになり、来場者は席を立ち、いよいよ本題の展示スペースへと進みます。

垂れ幕のような布地に描かれた『エッフェル塔』は、トリコロールの配色でフランスらしさを感じさせる作品。ライトアップされた夜のエッフェル塔を、抽象的に描き上げました。
会場の演出方法も香取さん自身が考え、オープン前日の夜中まで作業は続いたという。「作品のキャプションは昨晩付けたんですが、いざ付けてみると、照明を暗くしすぎて全然読めないってことに気づいて再度調整しました。アートとエンターテインメントの両方を、バランスよく表現するのが難しかった」

A、B、Cと3つのステージに分けられた展示スペースには大小さまざまなアートが所狭しと並び、壁や床にまでペイントがおよんでいる場所もあります。天井から吊るされた装飾的なオブジェもあり、空間全体がひとつの作品となっているようです。

「パリの個展で会場設営をしている時は、やはり初めての個展ですし、場所も場所ですし、結構プレッシャーと緊張を感じていました。でも照明を考えたり、会場で使う音楽の音量を調整したりするうちに、『あ、これって、コンサートの演出と一緒じゃん! 』って気付いて。その瞬間に、いつもの自分に戻れた気がして、『東京ドームと比べたら、このルーヴルのホールって超小っちゃいじゃん。全然余裕だわ(笑)』って思えたんです。今回も会場が劇場というところがまず特殊ですが、スモークを焚いたり、天井から吊るしたトルソーを上下させたりと、アートの展覧会という考え方に縛られずに、自由な発想で空間をつくりました。この展示でなにを伝えたいかっていうことはあまり意識していませんが、単純に新しい体験を楽しんでもらえたり、アートって楽しいんだってことを感じてもらえたり、むしろそれ以前に、香取慎吾って絵を描いてるんだ、って知ってもらえるだけでも、僕としては嬉しいです」

「この広い展示会場では、床にも壁にも、いくらでも絵を描けるスペースが残っているので、これからも会期中にちょっとずつ絵を描き足していこうと思っています」との言葉どおり、今回香取さんがもち込んだ作品以外にも、即興で描き上げたペインティングが床や壁のところどころに施されています。
左側の2点の作品は、2017年にカルティエの腕時計「タンク」の誕生100周年を記念して、香取さんが特別に制作したオブジェとペインティング。カルティエ ブティック 六本木ヒルズ店にて展示されました。

自分のすべてをアートに変える、裸のエンターテイナー。

今回の個展のために制作した新作『スペースダンス』の前で、オブジェと同じポーズを取る香取さん。宇宙服を着て踊っている感じをイメージしたそう。右後ろのケースに入っているのは、原型となった紙粘土の作品です。

香取さんの作品は、サイズも、キャンバスも、題材も、実に多種多様です。一般的な油絵用のキャンバスもあれば、テレビを梱包していた段ボール箱、布、立体物と、素材や形状を選びません。ただ、すべての作品に共通しているのは、パワフルでポジティブなエネルギーに溢れていること。まるで香取さんの人柄が、そのままダイレクトに表現されているようです。

「絵の題材も、それに使うキャンバスも、いつも思いついたままランダムに選びます。描き方もゲーム感覚に近くて、絵の具をどかっと大量に用意して、それを見ないで手に取っては、手に掴んだ色に合わせて絵を描いていきます。色によっては『ほほぉ、そうきましたか』とか『いま、ここで? 君は違うと思うけどなー……』って言いながら、でもちょっとだけ使ってあげたり。自分の無意識と遊んでいる感覚に近いかもしれません。あとは破壊衝動みたいなものもあって、細かく色を載せていって、もう塗るところがなくなったら、真っ黒のペンキで全部塗りつぶしちゃったり。何時間もかけた努力を跡形もなく埋めちゃうっていうのは、実は結構快感ですよ」

「キャンバスを色で埋め尽くすことが好きなので、作品を壁に飾ってみたら、今度は壁の余白を色で埋め尽くしたくなって、その衝動を抑えるのに大変。これは変化し続ける個展だし、僕自身も変化し続けていたいので、これで完成とは言いたくないのかもしれません」。会期中に書き加えた作品には、制作した日付けも書き込むそうです。
ステージBには、パリの個展で発表した作品や、香取さんが手がけるパーマネントポップアップショップ「ヤンチェ_オンテンバール」関連のアートピースも展示されています。

わずか6カ月のうちにパリと東京で個展を開催し、アーティストとしての活動を怒涛の勢いでスタートした香取さん。1回目がルーヴル、2回目がこの劇場型となれば、早くも3回目の個展に期待が膨らみます。

「まだこの個展もこれから進化していく過程にあるので、次になにをやればいいのかなんて、いまはまったく想像もつきません。でも、この6カ月で2回の個展を経験して、僕は僕の想像を遥かに超えていくんだなって、変な自信がついた気がします」

自分の想像を超えたステージで自由にアートと遊び、また新たなステージへと突き進んでいく香取さん。彼の日本初個展には、われわれの想像を超える、アーティスト香取慎吾のすべてが詰め込まれています。

今回の個展のために制作された新作には、10年分の切った髪の毛を使った作品や、自身の黒目の写真を撮り、その周囲に絵を描いたものなど、身体性をテーマにしたものが多くあります。自分のもてるものをすべて出しきり、ありのままの姿を見せようとする香取さんは、アーティストであると同時に、やはり最高のエンターテイナーなのです。

『サントリー オールフリー presents
BOUM ! BOUM ! BOUM ! (ブン!ブン!ブン!)
香取慎吾NIPPON初個展』

開催期間:2019年3月15日(金)~2019年6月16日(日)
開催場所:IHIステージアラウンド東京
東京都江東区豊洲6-4-25
TEL:0570-084-617
開演時間:10時、11時15分、12時30分、13時45分、15時、16時15分、17時30分、18時45分、20時
※1回公演あたり350名入場。各回120分の入れ替え制
※本開場は各開演時間の20分前予定
入場料:一般¥3,500(税込)
https://boum3.com