“空撮”をカバンに入れて持ち歩く――。 超小型ドローン「DJI MAVIC MINI」は、憧れの映像を叶えてくれる。
『グラン・ブルー』と『レオン』、リュック・ベッソン監督のこの2作がたまらなく好きで、もう何度見直したかわからない。彼の作品は、タイトルシーンでカメラが疾走しながら地面を映し、徐々にレンズを持ち上げていくという手法がよく用いられている。カメラが正面を向き切ったとき、観客は作品の舞台となる景色にぐっと迫り、一気に物語の世界に引き込まれるのだ。前に挙げた2作は、水面を走るように捉えた空撮が特に秀逸。美しい海岸線や湖の畔に立つたび、「ああいう映像を撮ってみたい」と嘆息していたものだった。
その願いがついに叶う日が来た。折りたたんでズボンのポケットに入れられるドローン「DJI MAVIC MINI(ディージェーアイ マビック ミニ)」が発表されたからだ。
日本の航空法では、200g以上の無人航空機を飛ばすには許可が必要だ。しかし発表された新商品は、そのぎりぎりを見切った199gという驚異の軽さ。これにより、事前の申請がなくても屋外でドローンの飛行が可能になった。もちろん空港や国家機密にかかわる施設、文化財や人口集中地域など、飛行を禁止されたエリアはあるが。驚くべきは、従来のドローンでは禁止されていた「イベント上空での飛行」ができること。私有地飛行の許可、運営側の許可、また肖像権の問題さえクリアできれば、フェスをはじめ、ライブやスポーツ観戦で、よりダイナミックな映像体験を楽しめるようになるだろう。
この新しいドローンには、4Kに次ぐ解像度2.7Kの動画を撮れるカメラが搭載されている。機体中央の小型レンズは3軸モーターのジンバルに支えられ、急降下や急旋回を試みても、ブレずになめらかな映像を撮り続ける。カメラアングルも真下から正面、左右の首振りを実現している。憧れだった「疾走する地面からカメラを持ち上げ、目の前の景色を映し出す」というドラマチックな演出をいよいよ再現できる、というわけだ。
操作方法も、ラジコンやプレイステーションに慣れている世代ならすぐに対応できるだろう。自分のスマホをリモコンにセットすれば、撮影している映像をリアルタイムで確認できる。またパソコンに接続せずとも簡単な編集を行えるので、映像作品をスマホ経由ですぐに発信できるというのも非常に実用的だろう。
体験コーナーで実際に操縦してみた。右へ左へ、上へ下へ……。飛ばしている自分自身がスマホ画面に映ったとき、とても不思議な感覚を覚えた。スマホのインナーカメラで自撮りを行うのとはまったく違った、上空からの視点。いままで自分の世界にはなかった景色が、両手の中に映し出されていた。
ドローンのエントリー機としては十分な性能と、手を出しやすい価格の本機。どこでも飛ばせる、どこにでも持っていけるという魅力が詰まった小さなボディは、多くの人に新しい視点や発見をもたらしてくれるはずだ。(編集YK)
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