福岡から世界に!米づくりから杜氏が手がけた理想の酒 「OKINA2020ビンテージ」が発売。
昨今、日本酒の産地としては表舞台に立つことが少なかった九州の酒がじわじわと人気を高めている。昨年の秋、東京大井町に開店した「國酒文化振興酒場・佐賀」では、近年ブームになりつつある佐賀県産日本酒の全銘柄が揃い、リーズナブルに立ち飲みできる。
一見、焼酎の国として全国に認識されている九州だが、芋焼酎を愛好しているのは鹿児島や宮崎などの南九州中心で、佐賀や福岡、長崎などの九州北部では古くから日本酒が主流だった
もちろん、製鉄ブームで沸いた1960年代の北九州のように、一時的に甲類焼酎がメインストリームになった地域もあるが、それは3交代制24時間勤務の労働を支えるパワードリンクとしての役割だった。
冠婚葬祭のあらゆるシーンで、九州の人々は人生の歓びに、掛け替えのない別れに、溢れる愛に、子どもの成長に、いつも日本酒の盃を酌み交わして来た。
そんな中、九州の食を代表する県、福岡から酒造りの現場に立つ杜氏自身が、理想の酒と自負する日本酒、純米大吟醸「OKINA(おきな)」が昨年誕生し、大きな話題になった。
初年度のビンテージは完売したが、この新年に2020ビンテージがリリースされることになり注目を集めている。
杜氏自身が田植えから米造りに関わり、その年の収穫に最もふさわしい酒造りをする。
いわば、自然派ワインの造り手たちのようなスタンスだからこそ、その年毎のビンテージに大きな期待が高まる。
「酒造りを志したからには、人生の重要なシーンを彩るお手伝いができるような素晴らしい酒、理想の酒を造りたい」。
長年抱き続けて来た翁酒造の杜氏の夢が具現化された酒。それが「OKINA」だ。
「OKINA」はいかにして生まれたのか、杜氏の全霊が傾けられた酒の誕生劇を追った。
もともとOKINA造りの目標は、宝暦13(1763)年創業から250年以上の歴史を持つ翁酒造の幹となるような酒を完成することにあった。
しかしながら、TVCMで連呼される紙パッケージの酒のように、日本酒業界は安売り合戦の真っただ中にある。
もちろん、価格勝負の酒には需要も存在価値もあるが、人員的にも設備的にも小規模な酒造では価格勝負では大手に叶うはずもない。
「私どものような小さい酒造は、酒造りの最高責任者である杜氏が仕込みから搾りまで一貫してできるため、本来は高品質な酒造りに向いています」。
そう語るのは、翁酒造の代表、安河内(重人)社長だ。
しかし、時間と手間とコスト、細部までこだわり抜いた酒を完成させると、高価な原価になってしまうため、流通に至るまでの見通しを立てるのが困難になる。
実は、前に1度チャレンジした時、卸問屋に相手にされなかった苦い思い出もある。
そんな時、強力な助っ人が現われる。同じく福岡から始まり、東京と福岡で、企業のパッケージやwebに至るまでのすべてのアートディレクションとブランディングを手がけるanicecompanyだ。
翁酒造の熱い想いとこだわりに感動したanicecompanyは、OKINAのデザインやすべてのクリエイティブ、事業戦略から資金面を全面にサポート。「福岡もん」同士の無敵のコラボが誕生する。
賽は投げられた、すべてにこだわり、贅を尽くした酒造りのスタートだ。
酒造りに重要なものは、まず清涼な水だ。しかも、単に清涼というだけでなく、酒造りに適した科学的な要素が必要となる。
OKINAに使われる水は、太閤水(たいこうすい)と呼ばれる福津市の湧き水だ。太閤の名の通り、天正15(1587)年に九州征服を目論んだ島津義久を討つために九州を訪れた豊臣秀吉の群がこの地で小休止したエピソードから名付けられた。
千利休が村人の案内で得た水を献上すると、太閤秀吉がそのおいしさに感動。以来、太閤水の名が付けられた。
この太閤水には、日本酒造りで高名な兵庫県灘の宮水と同じように、麹を活性化させるリンが多く含まれている。
OKINAの酒造りでは、すべての仕込みに使用するばかりでなく、洗米に使う水もすべて太閤水。しかも、直接手で洗うと酒米に無駄な傷が入ってしまうため、専用の布と大量の流水で洗米。
そのため、1回の洗米に使用する太閤水は、約200キロの米に対して4000リットルに及ぶと言う。
もちろん、洗米中の水温や気温はすべて杜氏が記録し、あらゆる反応の有無を掌握。その時々の水温・気温に応じた浸水時間を管理して、酒造りに万全を期している。
雑味がない綺麗な味を可能にするのは、一切のブレがない仕込み米あってこそだ。
OKINAの大きな特長である酒米は、杜氏自らが田植えし、自らの田んぼで栽培する。その理由は、日本酒の主原料である米の特質を最大限に把握し、成長過程をすべて把握した上で仕込みの調整をするためだ。
田んぼの状態、稲の生育、日照時間や降雨量などを知り尽くしていれば、どのような米が出来上がってくるかが手に取るように分かる。
もし粒が小さめに出来上がりそうなら、それに適した水の量で仕込み、発酵時間などの微妙なセッティングも可能になる。
この小さな調整こそが、香りや米のうまみを自由自在に活かし切った仕上がりに繋がっていく。
また、OKINAの田んぼでは減農薬で米を育てるため、害虫被害対策も欠かせない。栽培中の酒米を守るため、田んぼの四隅にはタニシの餌となる、米や筍の皮を置くなど、万全の対策で大切な酒米を育て上げる。
米の乾燥の際には、一切の熱を加えず、乾燥した風だけを当て続ける「自然乾燥」を採用。酒米を自然乾燥で仕上げるのは、日本酒業界ではかなりの少数派だ。熱を加えた乾燥と比較すると、工程にかかる日数は5日程度の差が生じる。
その分、多くの時間を費やすことにはなるものの、自然乾燥では割れ米の数を軽減することが可能になる。
もし仕込みの際に割れ米が混ざっていれば、米の吸水率にばらつきが生じ、その結果、発酵の際に酵母が均等に働かず、味にブレが生まれる原因となる。
割れ米の出現は、ほんの数粒かもしれない。しかし、そのたった数粒のせいで、できあがる酒は理想の味から遠ざかってしまう。
旨味とキレを両立させた理想の酒に近づけるためには、わずかに生じる誤差を排除することこそが重要。それがOKINAが辿り着いた答えだった。
酒造りの最終段階である抽出の工程では、古来の日本酒造りの手法である「しずく搾り」を採用。機械で圧をかけず、重力だけで抽出する「しずく搾り」製法は、数ある搾り方の中でも、最も長時間を要する手法だ。
しかも、最終段階でタンクの中に残った最後の3割の酒は廃棄する。一切の雑味を残さないための贅沢過ぎる選択だ。しかし、究極のおいしさを求めた理想の酒造りの上では妥協できない一点だった。
削るほど、研ぎ澄まされる米の味わい。複雑な発酵によって導かれる「うまみ」。発酵管理の緻密な技術。微生物を育むための観察力や、根気強さ。時間をかけて、重力だけに頼って抽出する搾りの方法。
そのすべてを経て生まれた、純米大吟醸酒OKINA。
世界水準のMade In Fukuokaの誕生は、日本の地で育まれて来た時間と空間の愉しみ方を世界の人々に伝えるきっかけになるはずだ。
OKINA
製造元:翁酒造株式会社
内容量:750ml
価格:12,000円
https://okinanosake.jp/