“忘れられない”写真家・深瀬昌久の愛猫「サスケ」が、カットソーとして復活。
「僕自身猫と化し、子猫から成長するまでを共同生活者として写そうと思い立った」
写真家・深瀬昌久は、飼っていた仔猫のサスケが成長していく1年間を撮影した一連の作品群をこう語った。窓際から目だけをちょこんとのぞかせてこちらを見ている様子、大きく口と目を吊り上げた狐のような表情、網戸に張り付くまるでトカゲのような姿……。気ままなサスケの日常が写し取られたそのシリーズは、高品質のニットとカットソー製作を専業とするブランド「リヴォラ」によって、Tシャツとして蘇った。
深瀬はPenの2018年4月15日号『忘れられない写真。』の表紙を飾った写真家だ。1960年代からコマーシャルフォト、また「私性」をテーマに身の回りを写した写真で、森山大道、荒木経惟らとともに写真表現の第一線で活躍。しかし92年、新宿ゴールデン街で行きつけのバーの階段から転落し、以降20年間、作家活動を取りやめ治療に専念するも、2012年に他界。未発表作品も多く、長い間スポットライトが当たることはなかったが、14年にアートプロデューサーのトモ・コスガが発起人となる「深瀬昌久アーカイブス」が発足。国内外の回顧展をはじめとして、作品の評価が改めて高まっている。
私性、というテーマで深瀬が切り取ってきた世界は、晩年、深瀬自身を写真の中に表現することへ昇華していった。「猫の瞳に私を映しながら、その愛しさを撮りたかった」とも語る深瀬は、自分自身をサスケに投影したこのシリーズを「自写像」と語っていたという。深瀬は、目まぐるしく移り変わるサスケの表情や仕草に、自分自身のユーモアや孤独感を重ねていったのだろう。このカットソーを身につけるのは、自分の身体をフォトフレームとして、深瀬昌久の世界観を纏うことにほかならない。いつまでも心に残る猫を胸に抱いて、数奇な運命を辿った写真家に思いを馳せてみてはいかがだろう。
問い合わせ先/リヴォラ info@rivora.com
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