テニスプレイヤー錦織 圭が、撮影の合間に見せた素顔とは。
2019年12月、日の光が降り注ぐ冬の晴れ間、目黒の某テニスコートに錦織圭が姿を現した。ユニクロのグローバル ブランド アンバサダーを務めている錦織が2020年春夏商品のキャンペーン撮影のために訪れたのだ。カジュアルウエアからユニフォームに着替え、ラケットを手に、素振りをする。動くたびに筋肉が揺れる、その美しさはさすが一流アスリートである。細身だが、鍛え抜かれた肉体からは、研がれた刃がもつ鋭い切れ味のようなものを感じられる。さらに撮影の合間にも、ラケットのフレームにボールを乗せて真剣な表情でバランスを取る。きっと彼は心からテニスが好きなのだ。たとえば料理家の中には休日に料理をしない、調理器具は手にしない、という人もいるそうだが、錦織はオフの間でもテニスを楽しむかもしれない。
その一方で、彼がもつ飾らない一面も印象的だった。スタッフが準備したコーンポタージュを飲み干し、真顔で「これ美味しい!」と驚く。「漫才を見せてください」というスタッフからの無茶振りにも、「えー、テニスをやらせていただいております錦織圭と申します」とおどけてみせる。そして、スタッフのひとりが錦織さんの大きなバッグを大事そうに持っているのを目にすると、「地べたに置いてもいいですよ」と気遣う場面もあった。
「恰好悪くても、勝つことが大事」「プレッシャーのない人生ほど退屈な人生はない」などテレビのインタビューでの言葉からわかるように、ストイックな人物であるのは確かだ。ただ、テレビには映らない、飾らず謙虚、真摯な人柄を、今回の撮影で垣間見た気がする。
錦織 圭(にしこり・けい)
●1989年、島根県生まれ。2014年の全米オープンでは日本人として史上初となる準優勝を達成し、18年の全英オープンでは日本人選手としては23年ぶりのベスト8に進出。ユニクロのブランド グローバル アンバサダーを11年から務めている。