好奇心や旅への憧れを培ってくれた、安野光雅さんの絵本。

好奇心や旅への憧れを培ってくれた、安野光雅さんの絵本。

好奇心や旅への憧れを培ってくれた、安野光雅さんの絵本。

2016年に発行された『別冊太陽 安野光雅の本』。デビュー以来の作品とそれらに込めた思い、戦争体験と創作の関係などを収録し、読み応えたっぷりのムックだ。

安野光雅さんがお亡くなりになった。安野さんが手がけた絵本と幼少期に出合い、優しい色合いで細かく描き込まれた風景画を隅々まで見つめ、摩訶不思議なだまし絵に大いに驚いた。


特に思い出深いのは「旅の絵本」シリーズだ。1977年に初版が発行された第1作は中部ヨーロッパが舞台。私が生まれ育った日本の地方都市とはまったく違う、田園風景と美しい街並みに魅せられ、馬に乗った旅人の物語を勝手につくっては父母に話していた。見たこともない場所に行ってみたい、日本以外のこともいろいろ知りたいという好奇心の原点は、安野さんの絵本にあるように思う。


他の編集部にいた時、グラスゴー出身のロックバンド、トラヴィスを取材する機会があった。話を聞くことになったのはメンバー4人のうち、ボーカルのフラン・ヒーリーと、ギターのアンディ・ダンロップ。彼らの大ファンであったのと、当時どちらも小さな子どもがいることもあって、大好きな『旅の絵本』を贈った(取材者が取材対象に取るべき距離からは逸脱してしまったが)。ふたりのてらいのない、パパとしての笑顔をいまでも覚えている。


個人的にいちばん最初に触れたのは、『かず』だろうか。『かぞえてみよう』『もりのえほん』『あいうえおの本』『ABCの本 へそまがりのアルファベット』……強く記憶に残る作品がいくつもある(もうひとり、幼少期に出合った思い出深い作家が、かこさとしさん。かこさんは2018年にお亡くなりになった)。我が子にも体験してほしいと一緒に読み、新作が出れば購入した。


新作はもう読めないという事実が悲しみを大きくするが、これまで創ってくださったタイムレスな魅力をもつ作品は、今後もずっと読み継がれるだろう。ありがとうございますの思いとともに、ご冥福をお祈りします。(編集NS)

好奇心や旅への憧れを培ってくれた、安野光雅さんの絵本。

シリーズ8作目となる「旅の絵本」は2013年に発行。舞台は日本だ。2018年には9作目として、スイス編が発売されている。

好奇心や旅への憧れを培ってくれた、安野光雅さんの絵本。

2008年発行の『あいうえおみせ』。あいうえお順、いろは順に、たくさんのお店が登場する。