うわ立体なのか! イラストみたいな「ジュリアン・オピー」の “実物感” を知る展覧会。
そうですね、
わかります、よくわかります。
東京・初台駅 「東京オペラシティ アートギャラリー」
ここに行くのに、
「新宿駅まで出てさらに乗り換えかよぉ。プチ面倒じゃん。 この街、ほかに何かあんの〜 !?」
と、多くの人が考えるであろうことを。
(車が足な人を除く)
でも私にとっては、昔勤めてた出版社から徒歩15分の距離にあるこの施設。
いまでも近所のお散歩気分でフラフラ歩いてます。
(贅沢させてもらってますね)
オペラも劇場も無縁ですけども。
ギャラリーだけは行くことがありまして。
いい感じの “スキマ” な展覧会やるんですよ、ここ。
今回ご紹介するアート展も、「絶対行くべき」とは申しませんが、
「この作家は気になってたよ。でも実物を観たことはなくて」
ってな人はきっと楽しく、多くの発見ができると思います。
日本の美術館では11年ぶりの個展という、
「ジュリアン・オピー」展です。
入り口から何やら覗いてますが。
ワクワクします。
今回の記事では見どころというか、作品の成り立ち(材質や表現の工夫)をご一緒に見ていきましょう。
人の個性を損なわないギリギリまでディテールを削ぎ落とした(といわれる)、ミニマリズムな人物群像。
交差する都市の一瞬の光景でしょうか。
この作品には、単なる一枚の会場写真ではわからないことがふたつあります。
まずひとつめは……、
サイズがでかいこと!
部屋の左に立ってる人物と見比べてくださいませ。
さらにもうひとつは、
各パーツをパネル状に組み合わせてつくられた “構造物” であること。
知らなかったから驚きました!
しかもこの作品は壁面にエマルジョン塗装(油性と水性の特性を持つ塗料)し、そこに塗った木材パーツを重ねた仕上げ。
近くで見ても木材とは気づかない質感でしたが、パンフによるとそうらしく。
遠目に、もしくはネット上でさらりと写真を見るだけではわからない凝ったつくり込みです。
入り口すぐ脇にもジュリアン・オピーの基本スタイルである、「顔なし+横姿」の歩く人物像が。
右の壁一面がさきほどの作品と同一テーマの並びでして、
ストリートな男性のTシャツのクローズアップは、
これもパーツを組み合わせた、立体的なもの。
発色も素晴らしいんですよねー。
裏側に照明を仕込んでいない作品なのに。
素材はアクリルです。
この会場は、すごく明るく白い照明なのも好印象です。
アクリル板には、反対側の作品が反射して写り込むものの、
作風がすべて同じだから重なってもヤな感じがしません。
鳥が飛ぶ、一枚の風景画。
でも、なにかがちょっと不思議な……。
やはり立体構造でした。
鳥は穴を開けることで表されています。
凹凸の “凸” な鳥も混在して、さらに動きが足されてます。
真横から見るとこの重なりですよ!
素材はアルミニウムです。
LEDによるアニメーション作品。
人物が立方体の周囲をぐるぐると歩きます。
ずっと見てられる面白さ。
……さて、これらの作品たちが言わんとしている意味は……
よくわかりませんでしたっ。
(バカですみません ←前回のボルタンスキー展紹介でのセリフ再び)
感じたのは、仕事で人物ポートレートをフォトグラファーに撮ってもらったり、自分でも撮る身として、
「顔以外のところに、その人の個性がもっとも浮き出るケースもある」
ということの再認識。
古いモノクロ時代の写真家の写真を見ると、いろんな撮り方をしてますね。
(正確にいうと、その写真が “選ばれた” から世に出ている)。
写真家カルティエ・ブレッソンがスナップで撮った、
雨の中を歩く彫刻家ジャコメッティや、橋の上の哲学者サルトルの写真は、
史上最高のポートレートだと思いますし。
どちらも正面の顔出しですけども。
(画像はすみません、ググッていただけると。画像検索ですぐ出ます)
ジュリアン・オピーの制作プロセスは同じ人物の写真をたくさん撮り、
加工を繰り返して絵に仕上げているようです。
2つの大部屋内での作品数も少ない展覧会でしたが、楽しかったです。
初台のオペラシティ、行ったことない人はこの機会に。
会期は、9月23日(月)まで。
では最後に、この展覧会に行く前の私が「ジュリアン・オピーってこんな」と思ってた作品をお見せしましょう。
※ 展示されていません。
1990年代のイギリスで「オアシス」の対抗馬として頂点の人気を誇ったバンド「ブラー」。
そのベスト版「The Best of Blur」のアルバムカバー。
顔出てますが、みんな目がテン。
イケメンボーカルのデーモン・アルバーンしか記憶にない私でも、ちゃんと見ると左下が彼なのがわかりました。
(あとの3人はわかんねっす w)
photos © 高橋一史
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