グラフィック好きの同志よ、ハートムット・ランダウアーのアート展に来たれ。
皆さんは、
「私の “好きなテイスト” ってなんだろう?」
と考えたりします?
芸術的な分野だけでなく、食べ物、匂い、景色、天気、時間帯、人間などあらゆる事柄に共通する感覚。
小学生くらいから続いている感覚。
あるとき、私を含む二人の外部エディター(ライター)で持ち回りするPenのファッション連載の仕事をいただきました。
二人のネタが被らないようにジャンルわけするため、仕切ってる編集部の近藤さん(実名)に尋ねました。
「あちらの担当ジャンルは、トラッド系、ベーシック系かな。じゃあおれは?」
近藤さんが答えました。
「えー、かずしさんは……グラフィック系で」
…… うにゃ !??
ファッションにはグラフィック系なんてジャンルはありません。
モード系でもスポーツ系でもなく、グラフィック系ってなんぞや ??
ところがあとあと、
この単語が心に残りまして。
独特な言語を話す(?)この人が考えてくれた私のテイストが、「グラフィック」だったのでしょう。
この連載は結果、1試合ごとに選手が打撃フォームを変えるファジーな体制になりましたが。
しかしながら、
「グラフィカルなものが昔から好きだったな。
小中学生のとき家にあった絵画のポスターやポストカードのうち、好きだったのはジャン・デュビュッフェやパブロ・ピカソだったし。
その後もピエト・モンドリアン、ワシリー・カンディンスキー、ホアン・ミロ、ロシア構成主義の作家なんかに惹かれていったっけ」
そう思い起こされました。
SF映画が好きなのも、公園のジャングルジムが好きなのも、M&Mチョコレートが好きなのも、たぶん似た感覚です。
そして今回ご紹介する展覧会も、
同様のグラフィック好きの人ならきっと楽しい、
色の構成が魅惑的なアート作品です。
★ ハートムット・ランダウアー「elements」
日本のギャラリーではハートムット・ランダウアーの個展の初開催のようです。
この方の美術界での位置づけは無学な私にはわかりません。
新しくできた長野県のアーティスト・イン・レジデンス(作家を招く長期滞在型の制作施設)に、今年2019年の約2ヶ月半滞在してつくった作品とのこと。
自然界がモチーフのようで、静けさが漂ってます。
ファッションデザイナーも色の参考になりそうな作品群。
素材が持つ味わいと、それを引き立てるアクリルペイントの乗せ方もさすが。
感想。
1. ミッドセンチュリーの家具のようで、家具ではなく。
2. 工業製品のようで、すべてが繊細な手仕事。
3. 撮影スタジオの小道具のように親しみやすい。
「これはアート。なぜなら、それ以外の何物でもないから」
そう思った展覧会です。
ずっとこの場にいられましたね。
たぶんもう、好きかどうかだと思うんですよ。
面白みを感じない人もいるかもしれません。
でも、
グラフィック好きの同志ならわかっていただけるはず。
私が惹かれた心持ちを。
廃材を使った家具で知られるオランダ人デザイナーのピート・ヘイン・イークにも通じる、味わい深いコラージュ感もある作品多しです。
Gallery 38での「elements」の開催期間は、2019年9月26日(木)から11月23日(土・祝)まで。
12時から19時で、月・日・祝が休みです。
住所は、渋谷区神宮前2-30-28。
入場無料。
ファッションショップ「ロンハーマン」や「カナダグース」がある通り沿いです。
この通りはホントに人が少ないです。
徒歩7分で着く原宿エリアとは大違い。
ですが、歩いてる人を見かけると洒落た人多し。
なにせ中小のアパレルメーカーが多い街です。
千駄ヶ谷周辺に馴染みがない人も、近くにメガネ「ayame」の路面店もできましたし、散歩がてらに訪れてもいい休日を過ごせるでしょう。
そんな一日にぴったりの、心地いい展覧会が待ってますから。
photos © 高橋一史
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