東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムをデザインしたことで知られる美術家の野老朝雄と、コンピュテーショナル・デザインを駆使する建築デザイン事務所のnoizがコラボレーションした展覧会「DISCONNECT/CONNECT」が、愛知県常滑市のINAXライブミュージアム「土・どろんこ館」で始まった。単純な幾何学図形をつなげて平面を埋め尽くす「タイリング」の手法で数多くの紋様を作成してきた野老が、本物の「タイル」を使った作品に挑むという。それが気鋭の建築家による3次元の展示空間でインスタレーションされるとのことで、これはぜひ体験してみたいと思い、出かけてきた。なお、このふたりによる展覧会は、昨年、東京のLIXILギャラリーで予定されていたが、コロナ禍によってオンライン展示のみになった。実空間による公開は、今回が初めてとなる。

展示は2つのゾーンからなる。入ってすぐのゾーン1では、円形の台を10枚のパネルが囲んでいる。中央に置かれているのが、60個の菱形タイルを並べて12角形にした作品「RHOMBUS WORKS【JAGGED】」だ。鋳込み成形による凹凸の違いも合わせて5種類のタイルを使っているが、その並べ方には膨大なバリエーションがある。台の回転によって、微妙な色の変化を見せるところも面白い。パネルの方は野老紋様のひとつ「INTERTWINED」を、50mm、100mm、200mmの正方形タイルで制作して、さまざまな組み合わせで並べたものだ。どちらの作品も、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムと同じ藍色。これは使われている図形の面積比を、色彩を構成するCMYKのそれぞれの値に置き換えるという、理詰めの手法で導き出した色なのだが、ここでは焼き物を呉須で色付けしたときの濃い青にも見えてくる。

奥のゾーン2では、1辺400mmの立方体をピラミッド状に8段積み上げたものが向かい合っている。片方は野老紋様のタイルが貼られ、もう片方は白いタイルだ。そこに、動く野老紋様の映像が投影されている。眺めているうちに、紋様の宇宙に自分が入り込んでしまったような感覚が得られる。これはたしかに実空間の展示でないと味わえないものだ。展示で使われているタイルは、いずれもINAXライブミュージアム内にある、ものづくり工房で制作されたもの。オープニング・トークで野老は、タイルの精度を「正直、ここまでできると思わなかった」と讃え、noizの豊田啓介はタイルにプロジェクターで映像を投影した際の質感の良さを絶賛した。ふたりのアーティストにとっても、タイルの新しい魅力に出合える展覧会となったようである。