
イギリスの博物館で、人間の皮膚を装丁に用いた本が見つかった。この博物館には同じ人物の皮を用いた人皮装丁本があり、2冊は並べて展示されることとなった。英BBCほか、複数メディアが報じている。
極めて稀な本が見つかったのは、英サフォーク州ベリー・セント・エドマンズのモイズ・ホール博物館だ。報道によると、この本は制作に関わった人物の親類から数十年前に寄贈されたもので、博物館の本棚に眠っていたという。この本の画像が公開されているが、一見するとただの古書にしか見えない。背表紙が一部剥がれていて、あまり状態は良くないようだ。
本の装丁に使用されているのは、19世紀の殺人犯ウィリアム・コーダーから採取された本物の皮膚だ。モイズ・ホール博物館にはすでに一冊、彼の皮で全面的に装丁された本があるのだが、今回見つかったのは余った皮を背表紙と角に利用したものだという。
ウィリアムは1827年に起きた赤い納屋殺人事件の犯人として知られる人物だ。そのミステリアスな経緯から発覚当初から大きな注目を集めており、のちに演劇や映画、歌などの題材になるなど、現在でもイギリスでは有名な殺人事件の一つとなっている。
赤い納屋殺人事件
1827年、ウィリアムは故郷のサフォーク州ポルステッドで恋人マリア・マーテンを射殺し、その遺体を赤い屋根が特徴的な納屋の下に埋めて隠した。その後ウィリアムはマリアと駆け落ちしたと見せかけて失踪、一人ロンドンへと向かった。
だが事件の翌年、マリアの継母が、マリアの遺体が赤い納屋の下に埋まっているという夢を見た。納屋を調べたところ、実際その通りに遺体が発見されたことで事件はにわかに注目を浴びることとなった。
この頃、ウィリアムはすでに別の女性と結婚して下宿屋を営んでおり、警察は容易に彼を発見できた。取り調べを受けたウィリアムは事件への関与を否定したが、家宅捜索でマリア殺害に使用されたと思われる拳銃2丁が見つかり、逮捕されてサフォークに連れ戻された。
ウィリアムはマリアと赤い屋根で口論になったことは認めたが、マリアを射殺したのは別の人物だと主張した。だが彼に下された判決は、死刑とその後の解剖だった。当時の犯罪者にとって、解剖は死刑より恐ろしいことだった。判決から3日後、ウィリアムは公開で絞首刑に処された。処刑には数千人の野次馬が集まり、遺体は翌日医師と医学生らによって解剖された。
事件の顛末は本にまとめられることになり、外科医ジョージ・クリードはその装丁にウィリアムの皮膚を使うことにした。犯罪記録を犯人の皮で装丁するという行為は、19世紀当時、たびたび行われていたという。モイズ・ホール博物館の所有する2冊は、この時作られたものである。また、この博物館にはウィリアムの頭皮も保管されている。
なお、人皮装丁本については、倫理的・人道的に大きな問題があると、その取り扱いをめぐって議論が起きている。人皮装丁本は世界で数十冊見つかっているが、2024年にはハーバード大学が所蔵する人皮装丁本(身元不明の精神病患者の皮膚を使ったとされる)の装丁をはがし、「尊厳ある処分」を検討中と発表している。
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今回見つかった2冊目の本。
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1冊目の本とコーダーの頭皮。
Our #creepiestobject has to be the Corder scalp. Near 200 year old scalp of the Red Barn Murderer, William Corder. Comes complete with a book bound in the skin from his back. Beautiful. #CURATORBATTLE pic.twitter.com/pHAqjBIwbq
— Moyse's Hall (@MoysesHallNews) April 22, 2020
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BBCのニュース動画。
@bbcnews The book is believed to have been made using the skin of William Corder, one of the UK's most notorious criminals. #CrimeTok #Book #Skin #WilliamCorder #MariaMarten #MoysesHallMuseum #BuryStEdmunds #Suffolk #History #HorribleHistories #BBCNews ♬ original sound - BBC News