【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ』

『本当の戦争の話をしよう』でピュリツァー賞の候補になったティム・オブライエンの20年ぶり、最後の小説と言われる作品が、村上春樹の翻訳で上梓された。カリフォルニアの田舎町でデパートの店長をしていたボイドは、銀行で金を奪うと、窓口係のアンジーを連れて逃亡する。かつてジャーナリストだったボイドは虚偽報道で失墜。ワケありの逃避行はスネに傷持つ人たちを巻き込んでスラップスティックなロードムービーさながら。嘘と陰謀論がたちまち現実化するトランプ時代のアメリカを映し出す。
※この記事はPen 2025年5月号より再編集した記事です。