1825年にイギリス南西部のサマセット州で創業したシューズブランド、クラークス。天然皮革を用いた履き心地のよい靴づくりによって、時代を超えて愛されている。そのクラークスが2024年11月、東京・渋谷に都内初となる旗艦店「クラークス渋谷」をオープンした。店舗設計を担当したのが、日本と中国を拠点とする小大建築設計事務所だ。ブランドのフィロソフィや靴が持つイメージを踏まえながら、都心の街に調和するデザインを構想した。


明治通り沿いという一等地にありながら、店の真正面には歩道橋が立つ。そこで、ショーウィンドウ越しの視認性を高めるため、左右の壁面に特徴的なデザインを施している。片側にはクラークスの靴からインスピレーションを得た、足を包み込むような緩やかな曲面を持つディスプレイを採用。通りを行き交う人々の目に、シナ材で構成されたやわらかな印象の円弧が飛び込む仕掛けだ。これによって商品が立体的に際立つだけでなく、空間に動きを与えている。
もう一方の壁には床から天井までのフルハイトミラーを設置。対面する曲面状のディスプレイを反射させることで視覚的な広がりを持たせながら、試着の際に全身を確認できるように配慮した。
街並みに調和しながら存在感を放つ空間が、特別な一足との出合いを提供している。

クラークス渋谷
住所:東京都渋谷区神宮前6-19-14神宮前ハッピービル 1FTEL:03-6427-7723
営業時間:12時~20時
定休日:無休
www.clarks.co.jp
【設計者】小大建築設計事務所
小嶋伸也と小嶋綾香が主宰。東京と上海を拠点として、グローバルな視点で設計活動を行う。風土や文化的背景を継承できる素材を取り入れることで、職人技術や地域の美しさを継承していくことを目指す。
※この記事はPen 2025年5月号より再編集した記事です。