
グルメ好きが「この一軒のために旅に出る」ように、音楽好きにとってフェスは、それだけで旅の目的になるもの。日本国内にも数多くの魅力的な音楽フェスが開催されているが、海外で体験するフェスにはまた違った楽しさがある。
今回は、ゴールデンウィーク中に開催される注目の3フェスを含む、春から初夏にかけて6月までに行われる韓国の音楽フェス7つをピックアップ。EDMからヒップホップ、ジャズ、オルタナティブまで、ジャンルも世界観も実に多彩だ。 フェス自体の魅力はもちろん、会場周辺で立ち寄りたいギャラリーやカフェまで、旅の楽しみ方もあわせてガイドしていく。音楽をきっかけに、いまの韓国カルチャーを体験してみてはいかがだろうか。
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1. 2025 EDC KOREA
ゴールデンウィークの過ごし方にまだ迷っている日本のEDMファンに、ぜひ注目してほしいのが、「EDC Korea」。世界最大級のEDMブランド「EDC」の韓国版であり、ラスベガスまで足を運ばなくても、このビッグフェスを体感できる貴重な機会となる。日本でも「EDC JAPAN」が2019年に開催されたものの、その後コロナ禍によって中断。いまだ再開の見込みが立っていないこともあり、東京からわずか2時間ほどでアクセスできる韓国で、ゴールデンウィークのスタートに合わせて行われる「EDC」のニュースは、待ち望んでいたファンには何よりも嬉しいだろう。
2025年の「EDC Korea」は6年ぶりの再始動ということで話題を集めており、マーティン・ギャリックス(Martin Garrix)、スクリレックス(Skrillex)、スティーヴ・アオキ(Steve Aoki)、ペギー・グー(Peggy Gou)、イレニアム(Illenium)など、錚々たるDJ陣がラインアップ。圧巻のステージセットやライトアップ、花火などの演出も見逃せない。夜になると幻想的な空間が広がり、まるで別世界に飛び込んだような体験ができるのが「EDC」の醍醐味だ。
会場となるのは、仁川国際空港からほど近い「INSPIRE Entertainment Resort(インスパイア・エンターテインメント・リゾート)」。韓国最大規模の外国人専用カジノやドーム型屋内ウォーターパーク、レストラン&バーなどが揃った複合型施設で、フェス以外にも楽しめる要素が満載だ。フェス当日にはリゾート内の各種ストアで割引を受けられることもある。ソウル市内の主要エリアからはシャトルバスが運行予定で、チケットと宿泊がセットになったパッケージプランも販売されているため、移動を気にせずリゾート内で余韻を楽しみながらゆったり滞在することも可能。アクセスのよさも相まって、ゴールデンウィークの休暇を存分に満喫できるだろう。
2025 EDC KOREA
開催日時:2025年4月25日(金)〜26日(土)開催場所:INSPIRE Entertainment Resort(インチョン)
ジャンル:EDM、ハウス、テクノ、トランス、ハードスタイル
出演者:Martin Garrix、Skrillex、Steve Aoki、Peggy Gou、Illeniumなど
チケット・詳細情報:https://edckorea.frontgatetickets.com
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2. KMA Festival 2025
「KMA Festival」は、今年初開催ながら、韓国の音楽マニアから大きな注目を集めている。その理由は、権威ある音楽賞「韓国大衆音楽賞(Korean Music Awards)」の“アフターショー”として開かれるフェスだからだ。「韓国大衆音楽賞」は韓国の大衆音楽賞の中で唯一、商業的な成績や大衆的人気よりも“音楽性”を重視することで知られ、その公平な評価姿勢によって多くの音楽ファンから高い信頼を得ている。
今回のフェスも、そんなKMAを主催する団体が手掛けるだけに、新進アーティストからベテランまで幅広いジャンルの実力派が集結する注目のイベントとなっている。韓国音楽の奥深さを体感したい人には、実力が認められたアーティストたちと直接触れ合える絶好のチャンスだ。ラインアップには、「2025韓国大衆音楽賞」で3冠を獲得したイ・スンユン(이승윤)をはじめ、「今年のアルバム」など2部門を受賞したタンピョンソングァ・スンガンドゥル(Danpyunsun and the Moments Ensemble)、新人賞を受賞したサンマンハンシソン(Sanmanhan)など、ロック、フォーク、ジャズ、エレクトロニックと多彩な11組が名を連ねている。各アーティストのライブはもちろん、選定委員とのトークセッションやポップアップ展示など、KMAならではのプログラムも見どころだ。
会場となるのは、イテウォンエリアに位置する「Hyundai Card Vinyl & Plastic」とその複合施設だ。徒歩15分ほどの場所には「Leeum Museum of Art」や「Hyundai Card Storage」など、アートの最先端を体験できるスポットが点在する。加えて、「Kasina Hannam」「BEAKER Hannam」など感度の高いセレクトショップや、「Anthracite Coffee」「Fritz Coffee」といったカフェ、さらには独立系書店「Post Poetics」なども揃い、訪れるだけで最新の韓国カルチャーを満喫できること間違いなし。
KMA Festival 2025
開催日時:2025年5月2日(金)〜3日(土)
開催場所:Hyundai Card UNDERSTAGE/Music Library/Vinyl & Plastic(ソウル)
ジャンル:オルタナティブ、インディーポップ、フォーク、ロックなど
出演者:Lee Seung Yoon、Kang Asol、NET GALA、Danpyunsun and the Moments Ensembleなど
チケット・詳細情報:https://tkglobal.melon.com
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3. HIPHOPPLAYA FESTIVAL 2025
「HIPHOPPLAYA FESTIVAL」は、2000年から運営されている韓国最古参のヒップホップ系ウェブマガジン「HIPHOPPLAYA」が2016年より開催しているジャンル音楽フェスティバルだ。普段はなかなか一度に観られないトップティアのアーティストから、新進気鋭のアーティストまで、多数のライブを一挙に堪能できるため、韓国のブラックミュージック・ファンにとってはよく知られたイベントである。
今年は5月3日のワンデー開催で、ビンジーノ(BEENZINO)、シックケー(Sik-K)、ジャイオンティー(Zion.T)、チャンモ(CHANGMO)など、多彩な韓国ヒップホップ&R&Bアーティストが出演予定。とりわけ、伝説的クルーファンシーチャイルド(FANXYCHILD)(ジコ(ZICO)、ディーン(DEAN)、クラッシュ(Crush)、ペノメコ(PENOMECO))が久々にグループでステージに立つのではないかと期待も高まっている。また、VANDY THE PINK、NEW ERA、TIMBERLAND、UNDERMYCARなどのブランドによるポップアップイベントが行われるほか、レーベルKCの「KCOLLECTION」やCHANGMOの「LIBILLY」など、アーティストが展開するブランドのポップアップも予定されている。
会場となるKINTEX(キンテックス)は、本来は博覧会場として使用されるが、AdoやOfficial髭男dismなどが来韓公演を行った実績を持つコンサート会場としても知られている。ソウル市内からは地下鉄3号線のほか、江南(カンナム)や合井(ハプチョン)など主要エリアからのバスを利用すれば、1〜2時間ほどで到着可能。近隣には大型水族館「Aquaplanet Ilsan(アクアプラネット一山)」、ソウルミュージック・レーベル「Rhythm Somang Sarang」のスタジオ兼カフェ「RSS HOUSE」があり、クルマ好きならレストランやカフェを併設した「Hyundai Motorstudio Goyang(ヒュンダイ モータースタジオ高陽)」を訪ねるのもお薦めだ。周辺に宿泊するなら、人工湖で有名な一山湖水公園(イルサンホスコンウォン)で屋外ピクニックを楽しむのもよい思い出になるだろう。
HIPHOPPLAYA FESTIVAL 2025
開催日時:5月3日(土)
開催場所:KINTEX(キョンギド・コヤン)
ジャンル:ヒップホップ、R&B
出演者:Beenzino, ZICO, DEAN, Crush, Zion.T、Lee Young Ji など
チケット・詳細情報:https://www.instagram.com/hiphopplayafestival
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4. THE AIRHOUSE 2025
自然の中で特別なヒーリング体験を求めるなら、「THE AIRHOUSE 2025」が最適だ。ハウスやテクノを中心とするエココンセプトの音楽フェス「THE AIRHOUSE」は、2018年に観客数約200人の小さなフェスとして始まり、いまでは数万人が集う“唯一無二”のカラーを持つ韓国のフェスへと成長した。ローカルの実力派DJや海外アンダーグラウンド界の“ローカルヒーロー”たちが参加し、商業的なフェスとは一味違う自由で没入感のある雰囲気をつくり出す。
今年は、ミニマル&テクノ、ハウス&ディスコ、アンビエント&サウンドヒーリング、ライブバンドなど、全7つのステージに分かれて多彩なパフォーマンスが繰り広げられる予定。テクノとハウスを基盤にした公演は48時間ぶっ通しで続くため、自然の中でキャンプをしながら、一晩中音楽に身を任せることができるのが魅力のひとつだ。フェスのスローガン「Feel the Air Love this Moment」を体現するように、キャンプやヨガ、瞑想、エアロビクスなど多彩な体験コンテンツが用意されており、森林散策や瞑想、公演を同時に楽しむ特別な経験ができる。
江原道(カンウォンド)春川市(チュンチョンシ)に位置する南怡島(ナミソム)は、島全体がひとつの観光地となっているため、フェス期間中は公演とあわせて南怡島の自然を存分に堪能するのがお薦め。かつて名作ドラマ『冬のソナタ』のロケ地にもなり、多くの日本人ファンが訪れたことで知られている場所でもある。もしもう1日滞在できるなら、フェスのバイブスをそのままに、半径10kmほどの範囲にあるレールバイクを楽しめる「カンチョン・レールパーク(Gangchon Rail Park)」や「ジェイドガーデン樹木園(Jade Garden Natural Arboretum)」など、自然関連の観光スポットにも足を延ばしてみるのもよさそうだ。
THE AIRHOUSE 2025
開催日時:2025年5月23日(金)〜25日(日)開催場所:Namiseom Island(カンウォンド・チュンチョン)
ジャンル: ハウス、テクノ、エレクトロニック
出演者:Sven Väth、Âme、CIFIKA、Snake Chicken Soup、Wata Igarashiなど
チケット・詳細情報:https://ja.ra.co/events/2079890
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5. Seoul Jazz Festival 2025
韓国を代表するジャズ音楽フェスティバルとして、2007年に始まった「Seoul Jazz Festival」。とはいえ、ジャズだけにこだわらず、ポップやロック、ヒップホップなど多彩なジャンルが融合しているのが特徴だ。ジャズファンはもちろん、ほかのジャンルを好む友人とも気軽に足を運べる。
今年は、現代ジャズシーンの重要人物とされるサックス奏者のカマシ・ワシントン(Kamasi Washington)や、ブラジル出身のジャズピアニスト兼ボーカリストであるエリアーニ・エリアス(Eliane Elias)、グラミーを複数回受賞したインストゥルメンタル・バンドのスナーキー・パピー(Snarky Puppy)といった海外の著名ジャズアーティストたちがラインアップ。また、ダニー・クー・ジャズ・クルー(Danny Koo Jazz Crew)、ムン・ミヒャン(Moon Mihyang)、ユン・ソクチョル・トリオ(Yoon Seok Cheol Trio)などの韓国ジャズ陣に加え、ドヨン(Doyoung/NCT)、エピック・ハイ(Epik High)、ジャナビ(Jannabi)、チャン・ボムジュン(Jang Beom June)、シーエヌブルー(CNBLUE)といった、多ジャンルの実力派アーティストが勢ぞろいする。
初夏の爽やかな空気が漂うソウル・オリンピック公園で、並木や湖を散策しながらジャズの旋律に浸る時間は、きっと特別な思い出になるはず。さらに、会場はソウルの中心部に位置し、地下鉄5号線・9号線も通っているため、市内各所へのアクセスも抜群だ。ただし、フェス開催期間中は車の渋滞が激しいことが多いため、公共交通を利用するのがお薦め。フェス前後の時間を活用して、地下鉄やバスで気軽にソウル観光を楽しむのもいいだろう。もし近場で余韻を味わいたいなら、ほど近い「蚕室漢江公園(チャムシル・ハンガン・コンウォン)」に立ち寄り、 “漢江ラーメン”やデリバリーのチメク(チキン+ビール)で一日を締めくくるのも韓国らしい体験となるだろう。
Seoul Jazz Festival 2025
開催日時:2025年5月30日(金)〜6月1日(日)開催場所:Olympic Park(ソウル)
ジャンル: ジャズ、ポップ
出演者: Kamasi Washington、Eliane Elias、Snarky Puppy、Doyoung(NCT)、Jannabi など
チケット・詳細情報:https://tkglobal.melon.com
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6. DMZ PEACE TRAIN MUSIC FESTIVAL 2025
名前からもわかるとおり、「DMZ Peace Train Music Festival」は非武装地帯(DMZ)の近くで「平和」をテーマに開催される音楽フェスだ。南北分断の象徴的な場所として知られる高城亭(コソクチョン)の美しい渓谷や絶景を背景に、毎年多彩なライブが繰り広げられる。高城亭は休戦ライン(軍事境界線)から約10km以内の民間人統制区域近くに位置しているため、平和というメッセージがより強く感じられる独特のロケーションとなっている。
本フェスティバルは、2017年に「Glastonbury Festival」のアドバイザーを務めるマーティン・エルボーン(Martin Elbourne)がDMZを訪れたことをきっかけに、「音楽を通じて政治・経済・イデオロギーを超え、自由と平和を体感しよう」という趣旨で立ち上げられた。そのため、自由、平和、人権、寛容といった価値観を掲げており、一般的なロックフェスとは異なり、公式ポスターなどで特定の「ヘッドライナー」を設定しないのが特徴でもある。国境を越えたテーマを掲げているだけあって、韓国だけでなくイギリスやドイツ、日本などから幅広いジャンルのアーティストが一堂に会する。今年は海外からジャパニーズ・ブレックファスト(Japanese Breakfast)、ハイテック(HiTech)、アリ(Ali)をはじめ、韓国アーティストのスミン(SUMIN)やキム・トゥッドル(김뜻돌)、そしてジソクリクラブ(JisokuryClub)、ワワワ(Wah Wah Wah)など注目のインディー勢が集結。さらにMinami DeutschやTENDOUJIといった日本のアーティストもラインナップに名を連ねる。
また、開催地となる江原道(カンウォンド)・鉄原(チョロン)一帯は、朝鮮戦争当時、国連軍・中共軍・北朝鮮軍が激しい攻防を繰り広げた地域でもある。そのため周辺には、戦時中に北朝鮮が南侵用として掘った「第2トンネル」や、当時使用されていたバンカーや兵舎、1940年代に北朝鮮政権下で建てられた「労働党舎」、さらには北朝鮮へと通じる「金剛山電気鉄道橋」など、数多くの歴史的スポットが残されている。音楽フェスを満喫すると同時に、こうした現地の歴史を垣間見ることは、平和と自由の意味を顧みる貴重な経験にもなる。
DMZ PEACE TRAIN MUSIC FESTIVAL 2025
開催日時: 2025年6月13日(金)〜15日(日)
開催場所:コソクジョン(孤石停)周辺(カンウォンド・チョルウォン)
ジャンル: インディーポップ、ロック、エレクトロニック
出演者: Japanese Breakfast、Minami Deutsch、SUMIN、JISOKURI CLUB、TENDOUJIなど
チケット・詳細情報:https://ja.ra.co/events/2135439
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7. Asian Pop Festival 2025
「Asian Pop Festival」は、アジア出身、もしくはアジアで活躍するアーティストたちを中心に構成される音楽フェスだ。2017年からアジアのアーティストを招いて行っていた「Asian Pop Stage」という企画公演の延長線上にあり、昨年から本格的にスタートした。単なるライブイベントにとどまらず、“アジア大衆音楽の多様性と可能性を展望し、つなげるプラットフォーム”を目指している。韓国、日本、台湾、タイ、インドネシア、香港など、アジア各国の実力派アーティストたちが 一堂に集まる。
今年は、韓国からセソニョン(SE SO NEON)、シリカゲル(Silica Gel)、チャウリム(JAURIM)、チャン・ギハ(장기하)などが出演し、日本からはMei Ehara、MONO NO AWARE、Lampといったバンドが参加する予定。韓国と日本のみならず、多彩なアジア音楽の世界に触れられる特別なチャンスになりそうだ。ライブはホテルの複合文化空間を活用した4つのステージが展開される。「アジアン・ポップ」をテーマに掲げているだけあって、ポップ、ロック、ジャズ、ヒップホップ、フォーク、エレクトロニックなど、そのジャンルの幅はきわめて広い。
会場は、ホテル・アート・クラブが一体化した複合リゾートである「Paradise City(パラダイスシティ)」。海外からのアクセスも非常に便利で、仁川国際空港(第1ターミナル)から車で約5分、徒歩でも30分ほどの距離にあり、空港に到着してすぐにフェス会場へ向かうことができる。ホテルならではの快適さとゆったりとした雰囲気を存分に楽しめるのも魅力だ。ホテル内にはアート&スパが融合した空間「CIMER」や屋内型テーマパーク「WONDERBOX」、ダミアン・ハーストや草間彌生などの作品を展示するアートスペース、さらにレストランやバー、ショッピングエリアなどが揃っているため、フェス以外の時間帯でも多彩な楽しみが用意されている。
Asian Pop Festival 2025
開催日時:2025年6月21日(土)~22日(日)開催場所:Paradise City(インチョン)
ジャンル:ポップ、ロック、インディーポップ、エレクトロニック
出演者:Silica Gel、SE SO NEON、YOGEE NEW WAVES、MONO NO AWAREなど
チケット・詳細情報:www.globalinterpark.com/en/product/25002190