キュートでコンパクトでよく走る。乗ってわかった、ヒョンデ「インスター」が日本に最適な理由

  • 文:小川フミオ
  • 写真:ヒョンデ・モビリティ・ジャパン
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ヒョンデ・モビリティ・ジャパンが2025年4月に発売した「インスター」が面白い。あえてコンパクトな“5ナンバー”サイズにこだわったBEV(バッテリー駆動EV)で、デザインもキャラが立っている。

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全幅は1.6mだがブリスター型フェンダーがうまく力強さを表現。写真:筆者

「インスター」は、韓国で21年に発売された同地の軽自動車「キャスパー」をベースに開発されたモデル。彼の地ではキャスパー・エレクトリックと呼ばれるが、実際はバッテリー搭載のためにキャスパーよりホイールベースを延ばすなどしている。

車体全長は3,830mmにとどまる。これが大きな特長だ。ヒョンデ・モビリティ・ジャパンでは、日欧の市場向けに開発したといってもよいモデルとしている。

「日本の道路の規格は(いわゆる5ナンバーサイズの車両が99%だった)1970年代前半に決まったもので、コンパクトなインスターが受け入れられる余地があると考えています」とは担当者の弁。

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太いピラーが頑強さを感じさせる。写真:筆者

昨今の乗用車は、衝突安全基準などのせいで車体の大型化が進んでいるのが事実。「インスター」はコンパクトと謳われているものの、「国民車のような存在だった4代目カローラ(1979年発売)とほぼ同等サイズ」と、ボディディメンションの正当性を強調する。ここもまた面白い。

もちろん、いまのクルマなので、機能性とともに、エモーショナルな要素が随所に強調されている。

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見た目だけでなく、乗り心地も優れている。

最大のエモーショナルな点は、走りだ。バッテリー駆動のモーターによるスムーズな加速性が気持ちよい。49kWhのバッテリーと、85kWのパワーと147Nmのトルクのモーター(「ボヤージ」と「ラウンジ」)。数値的にはパワフルでないけれど、交通の流れをリードする加速力と、日本の道路を前提に調整した足まわりによる快適な乗り心地、それにカーブが楽しくなる高い操縦性と、中身のバランスがよい。

先述の「ボヤージ」と「ラウンジ」は、一充電走行距離が458kmに達する。都市内交通としての利便性を重視したボディだけれど、高速走行も得意で、遠出もできてしまう。

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一見2ドアだが実は4ドア。写真:筆者

もうひとつのエモーショナルな点はデザイン。いまでは日本で3割ぐらいに減ってしまったという5ナンバー車と同じ枠におさまるコンパクトさだが、太さを強調したピラーや、大きく張り出した印象のブリスター型フェンダー、それに大きめな円形シグネチャーランプと、小型のラリー車のようだ。

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高速道路で体感した、「インスター」の乗り味

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要素がうまくまとめられて居心地のよいインテリア。

内装も、日本に先に導入された「アイオニック 5」や「コナ」のように、住宅のこじんまりしたインテリアを思わせるデザイン。ベンチタイプの前席シート、大きく前後スライド量(160mm)がとられたうえにバックレストの角度が変えられる後席シート、などが特徴的だ。

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リアシートは小ぶりだが前後スライドとバックレストのリクラインが可能なので使い勝手はよい。

さらに、前席シートのバックレストまで倒せてフルフラット化がはかれる。

「2人で車内泊も可能です」とヒョンデ担当者が言うように、後日発売予定というマットを敷けば、キャンプでも使える。AC電源も備わっているので、使い勝手はよさそう。

ラインアップは「カジュアル」「ボヤージ」「ラウンジ」の3グレード。先に少し触れたように、出力や装備にちがいがある。今回乗ったのは、最上級グレードの「ラウンジ」だった。

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ウインカーに連動して死角の映像が出るのはヒョンデ車でおなじみの便利な機能。写真:筆者

「カジュアル」に対して、「ボヤージ」と今回の「ラウンジ」は、バッテリー容量が大きくなり、さらに、ロードホイール径も拡大。運転支援システムとしてNSCC(ナビゲーションベース・スマートクルーズコントロール)やHDA(高速道路ドライビングアシスト)、それにサラウンドビューモニターなどが装備される。

「ラウンジ」は、ロードホイール径が17インチになり、電動スライディングルーフ、前席シートヒーターおよびベンチレーション、それに、デジタルキーなどがおごられた仕様。

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丸型のシグネチャーランプで遠くからでもインスターの視認性は高い。

上記のNSCCとHDAを作動させて高速道路を走ってみた。日本の道路事情(壁が近い)とか一般的な運転感覚に合わせて、レーンキープ時のステアリングシステムへの介入タイミングなどを調整したという。ほかの国仕様は知らないけれど、たしかに安心してクルマに速度維持、前方の車両との関係で加減速、それにカーブでの操舵をまかせていられる。

クルーズコントロールは、回転数によってトルクが変動するエンジン車でなく、一定のトルクが維持されるEVとより相性がいいというのを実感できる。

しかも、サスペンションシステムの設定も、日本のよくない道路の状況に合わせて、韓国や欧州に向けての車両より、すこしソフトにチューニングしたという。高速道路の継ぎ目を超えるときも、街中でつぎはぎになっている路面を通過するときも、きついショックは伝わってこない。

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前席もバックレストが前に倒れて、床はほぼフルフラットになる。

結論的に言うと、サイズ、パワー、乗り心地、利便性、運転支援システムなど、すべての機能が使いやすい。日本で乗るのによく合っている。デザインも、以前からソウルに行く度に見かけて、かわいいなあと思っていた。その印象は日本でも変わらない。

価格は、「カジュアル」が284万9000円、「ボヤージ」が335万5000円、「ラウンジ」は357万5000円。国のCEV(クリーンエネルギー自動車導入促進)補助金の対象車両でもある。

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25年1月の東京オートサロン2025で公開された「インスタークロス(ターマックコンセプト)」も発売に向けて準備中とか。写真:筆者
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25年4月に公開されたラリーイメージのコンセプト「インステロイド」も魅力的。

ヒョンデ インスター ラウンジ

全長×全幅×全高:3,830×1,610×1,615mm
ホイールベース:2,580mm
電気モーター1基 前輪駆動
最高出力:85kW
最大トルク:147Nm
駆動用バッテリー容量:49kWh
乗車定員:4名
一充電走行距離:458km(WLTC)
価格:¥3,575,000
問い合わせ:ヒョンデ・モビリティ・ジャパン
www.hyundai.com/jp