ルイナールがサポートする新進気鋭の写真家、𠮷田多麻希の作品展が安藤忠雄の名建築で開催中【KYOTOGRAPHIE 2025】

  • 文:植田沙羅
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1729年に創業し、世界最古のシャンパーニュメゾンとして知られるルイナールが「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025」のメインプログラム、写真家・𠮷田多麻希の作品展『土を継ぐ―Echoes from the Soil』に協賛。京都・三条の安藤忠雄による名建築「TIME’S」にて、5月11日まで特別展示が開催中だ。

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会場となる「TIME’S」は、安藤忠雄らしい無機質なコンクリート壁と相対するように間近に川が流れ、窓の外から降り注ぐ太陽光が陰影を生みだした、自然を感じられるつくり。写真家・𠮷田多麻希の表現する“自然と人との関係”にも通じる空間で、展示作品により一層深みを持たせている。

シャンパーニュの銘醸地、コート・デ・ブランとモンターニュ・ド・ランスで収穫された最高品質のブドウを選び抜き、繊細で豊かな味わいを存分に引き出すことから“シャルドネ・ハウス”と称えられるルイナール。一方で1896年にアルフォンス・ミュシャにポスター制作を依頼するなど、古くからアートと深いつながりがあることも、メゾンの歴史を語る上で欠かせない。

そんなルイナールは2016年以来、京都を舞台に開催される「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」に協賛。2021年からは「KYOTOGRAPHIE インターナショナルポートフォリオレビュー」の参加者から選出する「ルイナール・ジャパン・アワード」を創設し、日本国内の若手アーティストの発掘を行っている。受賞者はフランス・ランスでのルイナールのアート・レジデンシー・プログラムに招待され、シャンパーニュづくりの現場や自然とのつながりを学ぶ。そこで得た経験をインスピレーションに新たな制作に励み、翌年のKYOTOGRAPHIEで発表の機会が約束されている。

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今回の展示は、古から存在する記録媒体である徳島県の阿波紙という和紙に、“ルイナールメゾンの土壌の記憶”を刷ることで、次世代へと継いでいくという試みだ。𠮷田がシャンパーニュの地で感じた大地の記憶と人々との関係性が、自ら漉いたという和紙のなかに瑞々しく表現されている。

2024年の受賞者である𠮷田多麻希は、コマーシャルフォトグラファーとして活躍する傍ら、“自然と人との関係の不平等さ”を見つめ直すべく作品づくりに取り組んでいる。ランス滞在を経た展覧会『土を継ぐ―Echoes from the Soil』では、ブドウ畑の土壌と気候変動についてや、土地と人間の営みが織り成す歴史が視覚的に表現されている。ランスの大地は何層にも重なる石灰岩の地層が特徴で、そこに閉じ込められた養分や時間は新たな世代へと受け継がれていくことから、土が単なる物質ではなく、過去の記憶を継承していくものだと実感し、𠮷田の制作は広がりを見せた。

また「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025」開催に伴い「ルイナール・ジャパン・アワード2025」が発表され、アーティストの柴田早理が受賞した。IT企業で金融関連の業務に従事したという異色の経歴を持つ柴田は、人間と自然の関係性や環境問題をテーマに作品制作を行う。ランスのアーティスト・イン・レジデンスでの滞在がどのようなインスピレーションをもたらすのか。2026年のKYOTOGRAPHIEの作品展に、早くも期待が寄せられている。

土地が育むテロワールを大切に守り抜き、長きにわたり磨き上げた伝統製法を駆使することで、清らかで上品な味わいをつくりあげてきたルイナール。その姿勢は、才能豊かなアーティストの独創性を活かしながらも、より一層の活躍の場を提供する芸術支援にも通じている。歴史ある京都の地で、新進気鋭の写真家が切り取るランスの風を感じてみてはいかがだろうか。

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左:𠮷田多麻希●2018年より人と生き物の新たなバランスを模索すべくプロジェクトをスタート。身近な視点から人と自然の関係を問いかけるスタイルで、現在は生活排水による環境問題や野生動物の事故などをテーマに創作活動を続ける。 右:4月17日までの期間限定で、会場内にはルイナールのシャンパーニュが味わえるバーコーナーが併設されていた。観客は作品とともにシャンパーニュを楽しむことで、ランスの土地とルイナールが育んできた歴史に想いを馳せていた。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025
『土を継ぐ―Echoes from the Soil』

開催期間:開催中~5月11日(日)まで
開催場所:TIME’S 京都府京都市中京区中島町92
開館時間:11時~19時 ※入場は閉館の30分前まで
無休 入場無料 
www.kyotographie.jp/programs/2025/tamaki-yoshida/