BYDオートジャパンが電動SUV「シーライオン 7」を2025年4月15日から日本発売開始した。「SUVでも低重心で圧倒的なEV性能」とうたい、エンジニアリングの高さが喧伝されている。

元アウディのヘッドオブデザインが統括するデザインは、流麗な印象が強い。SUVといってもオフロード的な雰囲気は一才なく、「Sealion(シーライオン)」の最初の頭文字「S(スポーツ)」が強調されている。
見どころは、グリルレスのフロントマスクに、ブーメランタイプとも呼ばれる上下幅の薄い灯火がはめこまれたフロントビュー。側面にまわってプロファイルを見ると、フロントのAピラー以外のピラーがブラックアウトされた逆カンチレバールーフが、ファストバック的な印象のリア部分で、スポーティな雰囲気を高めている。
リアビューは、横一文字タイプのコンビネーションランプが上のほうにつけられることで、荷室の大きさを強調。もうひとつの視覚的特徴は、ルーフ後端の左右のふくらみだ。

ルーフ後端のエアの剥離をよくしないと、ドラッグといって、空気の乱流がクルマの速度を落とすことになる。そこで「シーライオン 7」では、ハッチゲートに付け足された後端部の左右にふくらみを大きく設けることで、ルーフを流れてきた空気を中央に集め、剥離がしやすいデザインにした。
おかげで、モーターをフロントとリアに搭載したAWD(全輪駆動)では、静止から時速100kmまでの加速が4.5秒と、かなり速い。ひと昔前のスーパースポーツカー並みの数値である。
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もうひとつ、大きな注目点はインテリアだ。デジタル技術を駆使して、多くの操作を液晶モニター内で行う。特に中央のモニターは、BYDお得意の90度回転する仕様で、目的によって縦にも横にも使える。ナビゲーションでは縦が便利だし、周囲の交通状況を把握しながら走るときには横、というふうに使い分けられる。

ドライバーの眼の前のスクリーンも情報量が多い。速度やバッテリー残量は当たり前で、便利な機能のひとつが「サラウンディング・リアリティ」。自車周囲の交通状況をリアルタイムで3D表示してくれる。
テスラ車を体験したことのある人ならおなじみのシステム。カメラからの情報を視覚化するので、死角にいる車両を含めて、トラックや乗用車など、車型まで表示される。加えて右左折時には死角の映像が表示される。すでにヒョンデ車が実用化していて、たいへん便利な機能が、この「シーライオン 7」にも搭載されたのだ。
また、カーナビゲーションシステムの情報量は多い。ゼンリンの精度の高い地図を使っているうえ、目的地までの料金など、表示は細かく、参考にしたい情報が多いのはありがたい。

快適性でいうと、ヘッドレストレイント(ヘッドレスト)一体型シートは、感触も座り心地も良好。身体がズレないので、長い距離でも疲労度は少ない。
車内から見るつくりの質感も、高い。選ばれた内装材やつくりつけの精度が高いうえに、上で触れたシートの出来のよさとともに、静粛性もその印象に寄与している。
ウインドシールドとともに、前席左右のサイドウインドウは防音性の高いアクースティックグラスを採用しているため、「音の大きな二輪車だって気にならないはず」(BYDオートジャパンの広報担当者)という言葉にも納得させられる。

車体全長は4,830mm、全高は1,620mmと比較的余裕あるサイズで、ホイールベースはさらに長く2,930mmに達する。おかげで後席の空間的余裕は大きい。エンジン車だと排気管を通すためのセンタートンネルが中央に盛り上がっているところだが、バッテリー駆動のため床面はフラット。それも広さ感に大きく寄与している。

日本に導入されるのリアモーターで後輪駆動の「シーライオン 7」と、先述のとおりデュアルモーターで全輪駆動の「シーライオン 7 AWD」。リアモーターは230kWの出力と380Nmのトルクを持ち、フロントモーターは160kWと310Nmだ。
乗ってみると、走りの印象はパワフル。モーターのトルクの出方はスムーズ。一時期のBEVのようにトルク感を強調することもなく、音もなくどこまでも加速していく印象だ。
後輪駆動モデルでも速度感に不満はないが、全輪駆動はパワフルという印象が加わる。ドライブモードが「コンフォート」モードの際やアクセルペダルの踏み込み量が多くないときは、後輪主体となってバッテリーをセーブする。

AWDモデルでは、前後のモーターのトルクを制御する「インテリジェンス・トルクアダプテーション・コントロール」を備え、乗り心地と操縦感覚に寄与している。実際に後輪駆動モデルよりひとクラス上という印象の乗り心地だ。もちろんどちらのモデルも、とりわけ、路面の状態がよいとか、タウンスピードで速度が低めなときは、乗り心地は良好。先述のとおり、広い後席の居心地のよさを中心に、ちょっとしたリムジン感覚で使えるだろう。
BYD シーライオン 7 (AWD)
全長×全幅×全高:4,830×1,925×1,620mm
ホイールベース:2,930mm
電気モーター バッテリー駆動 後輪駆動(全輪駆動)
車重:2,230kg(2,340kg)
最高出力:380kW(+フロントモーター160kW)
最大トルク:380Nm(同上310Nm)
バッテリー容量:82.56kWh
乗車定員:5名
航続可能距離:590km(540km)(ともにWLTP)
車両価格:¥4,950,000 (AWD ¥5,720,000)
問い合わせ先/BYDオートジャパン
https://byd.co.jp