世界が待ち望んだ知と創造の祭典――大阪・関西万博が、ついにその幕を開けた。なかでも注目すべきは、LVMHがメインパートナーとして参加する「フランス館」。ルイ・ヴィトン、ディオール、セリーヌと、時代の美を牽引してきた名門メゾンが一堂に会し、フランスの感性を余すことなく伝える空間がここに誕生した。

“いのち輝く未来社会のデザイン”をテーマに、160を超える国・国際機関が参加する大阪・関西万博。6か月にわたり繰り広げられるこの国際的な祭典では、それぞれの文化と叡智が披露される。そんななかでも、目を引く存在が「フランス館」だ。フランス政府の公式パビリオンでもあるこの空間は、ラグジュアリーの象徴とも言えるLVMHグループがメインパートナーとして参加。フランスが誇るサヴォアフェール(卓越した職人技)とアール・ド・ヴィーヴル(自分らしく、美しく豊かに生きる)の精神軸に据え、傘下であるルイ・ヴィトン、ディオール、そしてセリーヌといった名門メゾンらが、それぞれの美学と哲学を体現する展示をここで展開している。
旅の世界へと誘う、ルイヴィトンの空間演出
まずルイ・ヴィトンの展示は、メゾンの根幹にある「旅」や「探求の精神」に焦点を当てて構成。19世紀のトラベルトランクをはじめとしたアーカイブピースが並び、ブランドのDNAともいえる“移動”の物語を空間で表現している。84 個のワードローブトランクで魅せる演出や、フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)との共同制作によるサウンドドラックが包み込むように流れ、来場者を“旅”へと誘う。


時代を超えて息づく、ディオールのインスタレーション
ディオールの展示では、オートクチュールの真髄であるクラフツマンシップと現代的な表現との融合が主題に。オートクチュールの源流を感じさせながらも、空間演出や映像インスタレーションには現代的な手法が取り入れられており、クラシックとコンテンポラリーが見事に融合している。そんな芸術的な空間の中で、体験者はまるでディオールのアトリエに迷い込んだかのような錯覚にとらわれることだろう。


日仏の美学が共鳴する、セリーヌの想い
一方、セリーヌは芸術とファッションの交差点を探るインスタレーションで挑む。ブランドが築いてきたフランスの美意識と、日本が誇る伝統工芸がマリアージュし、現代的な文脈で再解釈するアプローチが印象的だ。両国らしい静謐でありながら強い意志を宿すその表現が、観る者の感性に優しく、そして深く訴えかけてくる。


ほかにメゾン・ショーメは、2025年9月1日から10月13日までの期間、「ショーメ、自然美への賛歌」をテーマに、インスタレーション形式のエキシビションを開催。このエキシビションは、自然主義の世界への圧倒的な没入体験を提供するとともに、現代と歴史的なジュエリーを融合させ、感覚的な旅へと誘う。
さらにモエ ヘネシーは、フランス パビリオンのホスピタリティパートナーとして参加。4階の「ビストロ(Le Bistrot)」ではフランスならではの料理とともに、「モエ・エ・シャンドン」「ヴーヴ・クリコ」「ルイナール」といったシャンパンに加えてロゼワインも楽しめる。
LVMHは、2005年の愛知万博をはじめ、過去にもいくつかの万博に参加してきた。フランス館でのサステナビリティを意識した建築や展示設計、そして演出方法など、同社がこれまでに追求してきたのは「持続可能な未来」、そして「伝統の継承」と「その価値を世界とどう共有するか」という問いへの回答だ。それはまさに、今回の大阪・関西万博のテーマと深く共鳴するものでもある。ルイ・ヴィトン、ディオール、セリーヌ、そしてこれら名門ラグジュアリーメゾンを統括するLVMHの表明が、この空間で確かに感じられる。
Pen『大阪 再発見』の第2特集は、4月13日に開幕した「大阪・関西万博」。万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。会場には158の国・地域と7つの国際機関、8つのシグネチャーパビリオン、13の民間パビリオンと4つの国内パビリオンが並び、世界中からトップクリエイターと最先端テクノロジーが集結。パビリオンを手掛けているクリエイターや研究者たちに、知られざる万博の魅力や見どころを案内してもらった。
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