大人の名品図鑑 デニムジャケット編 #2
薄着で出掛けられる、これからの季節に便利なのがデニムジャケットだ。最近では大きめのデニムジャケットをスウェットの上に羽織ったり、逆にコートなどのインナーとして着たり、通年で愛用する人も増えていると聞く。今回のシリーズで取り上げるデニムジャケットは、デニムウエアを愛するブランドやショップ、人物とコラボレーションして生まれた名品だ。ポットキャスト版を聴く(Spotify/Apple)アメリカを代表するデニムブランドのひとつで、日本でも人気が高いリーは、異業種からデニムウエアの製作に乗り出したブランドだ。
創業者はヘンリー・デイヴィッド・リーという人物で、彼がアメリカのカンザス州で1889年に起こした高級食材を扱う会社が、H・D・リー社。これがリーの始まりだ。『完本 ブルー・ジーンズ』(出石尚三著 新潮社)には、「今ではごく身近な食品になっているホール・アスパラガス、つまりアスパラガス一本丸ごと入った缶詰は、H・D・リー社が初めて売り出した商品」と書かれている。その後、会社は発展を遂げ、扱う商品も格段に増え続けていったが、その中にはアメリカ国民が作業用に着用していたワークウエアも含まれていた。しかし、ワークウエアの仕入れが順調に進まなかったため、リーは自ら縫製工場を建ててワークウェアの製造に乗り出す。同書には「この時の主力商品は胸当て付きのオーヴァーオールズであった。それは八オンスのデニムを使い、“ビブ・オーヴァーオールズ”と呼ばれ、農夫や鉱夫ばかりでなく、石炭を扱う鉄道員たちにも歓迎された」とある。
ワークウエアで大成功を収めたリーが次に狙いを定めたのが、オーソドックスな5ポケットジーンズだ。カウボーイやロデオ選手たちの意見を取り入れ、13オンスのデニムを採用した「カウボーイパンツ」の製作を始めたのは1924年のことだ。翌年には、このジーンズに「101」というスタイルナンバーが付いた。2025年はリーの「101」という名品ナンバーが命名されてからちょうど100年目に当たる。考えてみれば、今年は昭和100年にも当たる。昭和元年に生まれたこの「101」というジーンズは、現在でも穿き続けられ、驚くほどのロングセラー商品と言えるだろう。---fadeinPager---
モダンに纏う、大戦モデルの再解釈
実はリーのデニムジャケットの名品にも「101」というナンバーが付与されている。ジーンズの後、リーが1931年に発売したのが「101 SLIM JACKET」と呼ばれるデニムジャケットだ。前述の本の著書、出石は、「立体的な仕立て方が特徴」と書き、「“ジャケット”の名で呼んだ最初の例ではなかっただろうか」と推測する。それまで発売されていたデニムジャケットは“ブラウス”と呼ばれることが多かったとも出石は書く。
そんな「101」の記念の年であるため、このモデルに因んだデニムウエアが続々と発表されているが、今回取り上げるのはエディフィスの新ライン、ラ ブークルがリーとコラボレーションしたモデルだ。このジャケットのベースとなっているのは、1942年から43年の間に生産されていた「カウボーイジャケット 大戦モデル」で、リーのオリジナルモデルの中でも希少性が高いと言われているもの。第二次世界大戦に参戦していたアメリカでは、軍用品の生産を優先すべく、国内で生産される民生品の素材や部材などに統制をかけていた。国民的な日常着だったデニムウエアもその例外ではなく、素材や部材の簡素化が進められたという。軍用向けにジッパーが大量に必要となったため、リーの代表的なジーンズでジッパーを採用した「101Z」もボタンフライに変更された。通常のモデルと仕様やデザインが異なり、生産期間も短かったため、この「大戦モデル」は希少品としてデニムマニアの間でも高い関心を集めるモデルとなっている。
ラ ブークルのコンセプトは「ありふれた日常に、ちょっとした非日常を」と聞く。今回紹介したのは、まさにそのコンセプトに合ったデニムジャケットだ。日常着として多くの人に愛用されたスタンダードなデザインの中に、歴史に裏打ちされた要素を凝縮し、さらにシルエットなどをモダンに料理した、いわばバイブリッドな要素を併せ持った逸品と言えるだろう。---fadeinPager---
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リー フォー ラ ブークル /エディフィス ラ ブークル NEWoMan新宿店
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