若きシンバはムファサの威厳を身に付ける!? 圧巻の進化を果たした最高級SUV「ロールス・ロイス・ブラック・バッジ・カリナン・シリーズ Ⅱ」 【第220回 東京車日記】

  • 写真&文:青木雄介
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新しいグリルはよりシャープになり、デイタイムライトとエアインテークの形状が変更。

ロールス・ロイス初のSUVとして登場して7年。「カリナン」はモデルチェンジとともにシリーズⅡがスタートした。意欲的な内外装のリフォームが入ったものの走りに関してはホイールを大径化したことに伴うサスペンションの設定変更のみというアナウンス。

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専用 OS「SPIRIT」は直感的な操作が秀逸。使用フォントや大きさまで美しくデザイン。

またまたご冗談を、と言いたくもなるね。この控えめさがロールス・ロイスと覚えておくべきですよ。車重を持て余し気味だったハンドリングや足まわりが、シリーズⅡでは書家の筆筋のように迷いなく、連続した運動として流れていく。さながら絨毯の上を滑る巨大建造物のような重厚感を演出していて、ライオン・キングのイメージでいえば自分の力に戸惑っていた若きシンバが、一族の長としてムファサの威厳を湛えるようになった感じ (笑)

価格的なライバルはフェラーリの「プロサングエ」やベントレーの「ベンテイガ」になるんだろうけど、目指す場所がまったく違っている。あえてライバルを挙げるなら「レンジローバー」だね。エアサスによる悠久の時を感じさせるような浮遊感は、アフリカ大陸を旅するロマンや憧憬をかき立てる。価格的には倍以上の差があるものの、「砂漠のロールス・ロイス」と呼ばれた高級SUVの先達に学ぶところは大きい。

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黒いスピリット・オブ・エクスタシー像がショーケースに。 

そんな「レンジローバー」のクルーズ走行におけるエアサスのゆれ方を波間を走るヨットかクルーザーだとすると、カリナンは巨大艦なんだ(笑)。大型客船か戦艦かってぐらいのね。「カリナン」には非常に面白い聴覚的なギミックが施されていて、アクセルを踏み込むとフォーンとV12エンジン(ロールス専用)が吹け上がる。昨今の高級SUVはハイブリッドのモーター駆動で静かな圧とともに発進するけど、「カリナン」のそれはワイルドでクラシックな響きをあえて持たせている。

インテリアは特に、その豪奢さを重厚なドライバビリティに関連づけている。「ロールス・ロイスの本能的表現」としているビスポークプログラム、ブラックバッジの尖った気風とお約束の融合はもはやパワープレイですよ(笑)。ライムグリーンと黒の仕立てに、定番となった深みのあるラッカー塗装によるカーボンパネル、そして竹糸からつくられた新素材のレーヨン生地、デュアリティ・ツイルによる精巧な刺繍が施されたシートがある。その風合いは刺繍がグラマラスかつシックで、全長17.7km(11マイル)に達する糸を使用し、220万ものステッチで織り込まれているという。

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オプションでは18 個のスピーカーと1,400 ワットの強力なオーディオシステムを用意。車体のスペースフレーム構造を巨大なウーハーとして使用。

フロントパネルにはアナログ時計とスピリット・オブ・エクスタシーがショーケースに入っていて、ライトで照らされている演出があるんだけど、惚れ惚れするよね(笑)。大邸宅の噴水にある女神像のようなすれすれのモチーフを、他には絶対真似できないアイコンとして強調する。

超のつく富裕層のお約束と、潜在的に求められることを知り尽くした上で再構成するブラックバッジの表現が、購買層の年齢を下げている理由なんだろう。常にエッジの立ったアティテュードを示すことでブランド性を保つこと。まるでハイブランドのようだけど、これが出来るのもロールス・ロイスの真髄なのだ。

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2台のカメラで路面を継続的にスキャンし、エアサスペンションを適切に調整するフラッグベアラー機能を搭載している。

ロールス・ロイス・ブラック・バッジ・カリナン・シリーズ Ⅱ

全長×全幅×全高:5,355×2,000×1,835㎜
排気量:6,750cc
エンジン:V型12気筒ツインターボ
最高出力:600PS /5,250-5,750rpm
最大トルク:900Nm/1,700-4,000rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥54,154,040~
問い合わせ先/ロールス・ロイス・モーター・カーズコミュニケーションセンター
TEL:0120-980-242
www.rolls-roycemotorcars.com

※この記事はPen 2025年5月号より再編集した記事です。