ひと目で惹きつけられる有機的なフォルム。手仕事による丁寧な磨きが生み出す、カシミアのような滑らかな質感。ブラジル発のアイウエアブランド「LAPIMA(ラピマ)」は、まるで彫刻作品のような存在感で、世界のファッションシーンに新たな風を吹き込んでいる。創業から10年、国際的な評価を高める同ブランドの魅力を、初来日したデザイナーのグスタフォ・アシスとパートナーのギゼラに聞いた。

サンパウロ郊外のアトリエで30人の職人たちとともに手作業でつくられるLAPIMAのフレーム。その独創的で力強いデザインの源泉は、ブラジルの豊かな自然と人体の有機的な曲線にある。ブランドのコンセプトについて尋ねると、グスタフォは柔らかな表情で次のように答えた。
「LAPIMAはブラジルのブランドで、ブラジルの感性を活かしたアイウエアを作っています。有機的で流動的なデザインとカラフルなパレットが特徴です。なかでも『Bossa Collection』には、私たちの哲学が集約されています。Bossaとはポルトガル語で『曲線』という意味。女性の身体とブラジルの風景、その曲線の間に私はパラレルを見出したのです」

実際にLAPIMAのアイウエアを手にすると、その言葉の意味を感じ取ることができる。光の反射まで計算された繊細なラインワーク、縁取りの質感の変化、手作業による緻密な磨き——細部へのこだわりが、他に類を見ない独自の美学を形成しているのだ。ギゼラが夫の言葉を補足する。
「LAPIMAのデザインの特別な点は手磨きによる仕上げです。この工程があるからこそ、アセテート素材にカシミアタッチのような感触が生まれるんです。私たちが大切にしているのは、ブラジルならではの手仕事の温もりです」

ブランド立ち上げのきっかけを聞くと、彼女は旅の思い出を振り返りながら語り始めた。
「私たちは一緒に旅行するたびに、さまざまな場所でアイウエアショップを訪れて、眼鏡を試着するのが習慣だったんです。グスタフォはもともとファッション業界にいて、非常に高い美的センスを持っていました。でも服を作りたくはなかった。ファッションと彫刻的要素を製品に取り入れたいと考えた時、アイウエアが最適だと判断したんです」

そのビジョンを実現するまでの道のりは決して平坦ではなかった、とグスタフォは当時を振り返る。
「製造の基盤が整っていないブラジルでは、眼鏡業界は非常に古い体制のままで、80年代の機械が今も使われています。私のデザイン案を見た工場からは『君は狂っているよ。こんなものは製造コストが高すぎる』と一蹴されました。それでも諦めず、自ら材料加工機を探し出し、アセテート板でデザインが実現できるか試作を重ねました。開発期間は約2年に及びましたが、皮肉なことに、この困難な道のりが私たちのブランドならではの個性を育む土壌となったのです」
ギゼラが微笑みながら続ける。
「もしLAPIMAがイタリアで生まれていたら、どこかの工場で眼鏡を作っていただろうし、おそらく他のブランドと似たようなものになっていたでしょう。でも、ブラジルという遠い場所にいたからこそ、製造の各段階を自分たちで開発する必要がありました。この地理的な制約が、逆に私たちの創造性を刺激したのです」

続いてグスタフォは、製品完成までの工程について詳しく説明してくれた。
「小さな工程に分けると100以上ありますが、主要な工程だけでも30から40ほどです。最も重要なのは手磨きの工程です。この作業があるからこそ、私たちのデザインを形にできるんです。デザインのプロセスは、私のドローイングから始まり、コンピューターに取り込まれ、プロトタイピングを経て製造へと進みます。『光の反射がどう見えるか』『鼻にどうフィットするか』など、細部にわたる検討を行い、一つのデザインに対して5〜15回のループを繰り返すこともあります」

完成した製品には、特徴的な仕上げ技法が施されている。フレームのフロント部分には「ナチュラル」と呼ばれる、材料加工機から出てきたままの削り跡を意図的に残す。対照的に、フレームの他の部分には丁寧な手磨きを加えるという独自の美意識が表現されているのだ。この対比こそが、LAPIMAならではの質感と個性を生み出している。

初来日のグスタフォ夫妻に、日本の文化や美意識についての印象を尋ねた。
「日本人はファッションに対して非常に自信を持っていて、個性的な表現をされています。この短い滞在でも、それを強く感じました。さらに建築における伝統と革新の共存に感銘を受けました。新しい建物も多いけれど、伝承されるものを現代に生かしている施設や古いものをできるだけ手を施して後世に残そうとしている。その歴史の重層性がとても魅力的です」
熱を込めて語るグスタフォに続けて、ギゼラも今回の来日で感じた印象を交えてこう付け加えた。
「お客様からよく聞くのは、LAPIMAのフレームを身に着けるには、自分自身に自信のある人でなければならないということ。自分を知り、『よし、これを着けよう』と決められる人が必要です。日本でもそれは自然なことだと感じました。日本人はどの方も自信を持って服を着こなし、それぞれが独自のアイデンティティを持っている。それがとても刺激になります。今回の来日で、日本のファッションシーンと私たちのブランドの親和性を強く感じました」

最後に、日本のアイウエア愛好家へのメッセージを求めると、夫妻は揃って微笑んだ。
「LAPIMAの世界へようこそ。私たちの眼鏡は単なるアクセサリーではなく、着用者の個性を輝かせるツールであり、ブラジルの文化と感性を伝えるメディアでもあります。これまでとは違うけれど、非常にエレガントなアイウエアの着け方を体験してください」
これから日本でも本格的に展開が始まるLAPIMA。アマゾンの豊かな自然と都市の洗練が融合したブラジルの美学が、この島国の目線を通して新たな「Bossa」を奏でようとしている。