ハチドリのヒナが毛虫に変身!? 身を守る“驚きの擬態”が話題に

  • 文:山川真智子
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shutterstock_2503327209.jpgPhoto:Miroslav Srb/Shutterstock※写真はイメージです

ハチドリの一種のヒナが、同じ地域に生息する毛虫に擬態することが初めてわかった。この毛虫には毒があり、ヒナは捕食者から身を守るため、危険な毛虫に外見を似せていると考えられる。

学術誌『Ecology』の「The Scientific Naturalist」に掲載された論文を、複数の海外メディアが報じている。

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長毛をまとったヒナ、初撮影

スミソニアン熱帯研究所(STRI)の発表によると、同研究所で働く博士研究員のジェイ・フォーク氏率いるチームが、生物学史上初となる発見をした。フォーク氏ジェイは新熱帯地域に生息するハチドリの一種、シロエリハチドリ(学名:Florisuga mellivora)の研究を10年以上続けている。

2024年2月、チームはパナマのソベラニア国立公園でシロエリハチドリの巣を発見する。数週間にわたる観察の後、卵が孵化した。生まれたばかりのハチドリのヒナは通常、地肌がむき出しでつるんとしているが、チームはあることに気づく。ヒナが、背中に薄茶色の長い毛をまとっていたのだ。ほかのハチドリにこの特徴は見られないという。

同地域には、Megalopygidae科のガが生息する。幼虫は、虫とは思えないフサフサの毛に包まれているのが特徴。この毛に毒性があり、人が触れるとかゆみや痛みなどの炎症や、頭痛や吐き気、発熱を引き起こす。もちろん、ハチドリの天敵にとっても近づきたくない相手だ。

捕食者が巣に近づいたとき、逃げることも抵抗することもできないシロエリハチドリのヒナは、Megalopygidae科の幼虫に見せかけて身を守っている可能性が高い。

チームが撮影した映像には、ふわふわしたヒナの姿が映っている。頭を振る行動は、毛虫の威嚇行動をまねているという。

ヒナの毛は同地域に生えている高木、バルサ(Ochroma pyramidale)の種子にも似ており、天敵から身を隠すためのカモフラージュも兼ねているのではとチームは分析している。

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成鳥のメスも擬態、オスのフリをする

シロエリハチドリのメスの成鳥は、ほかのハチドリとの争いを避けるためオスに擬態することがすでに判明している。ハチドリのオスは、エサ場で攻撃的になる傾向がある。ほかのオスハチドリの攻撃対象にされないよう、羽毛の色を変え、強いオスのふりをしてエサにありつくそうだ。

ヒナの擬態は大きな発見だったが、ほかにも似た行動をとる種がいる可能性をふまえて、チームはより広範な研究を続けるという。

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擬態するシロエリハチドリのひな