ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』のキング役で脚光を浴び、映画『GO』で在日韓国人の高校生・杉原を演じ、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を史上最年少の21歳で受賞。未だその記録は破られていない。“カリスマ”窪塚洋介が芸能活動30周年を迎えた。
「人生は一度きりですが、本気で役を演じれば別の人生が生きられる。それがフィルムの中で生き続け、見た人の人生に影響を与えることがあります。たとえば、『在日だけれど「GO」の杉原を観て人生が変わった』とか『「ピンポン」を観て卓球を始めた』と言ってもらえる。実在しない役が作品を通して、それだけの影響力を持つのはすごいことですよね」
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生き方と作品づくりは一緒、あるがままを肯定したい
俳優に加えて、レゲエDeeJay ・ 卍LINE、モデル、執筆、ゴルフブランド・8G SHOOTや日本酒のプロデュースなど、その活動は多岐に渡る。開催中の個展『身土不二』では、ドローイングによる平面作品を初披露。新たな表現の扉を開けた窪塚は、多様な作品が並んだ光景を見て「寄せ鍋です」と言って笑った。
「陶芸と墨やペンで描いたドローイング作品は創作方法は違いますが、どれも製品ではなく作品なので割れてもいいし、欠けててもいいし、汚れててもいい。なるようになった“This is it”的な感覚があります。僕もいろいろなことがありましたし、いい面だけでなく人に見せたくない面もある。ひび割れているし汚れているけれど、いまこうして生きています。僕の生き方は作品づくりと一緒。自分がいちばんやりたいことはあるがままを肯定することですし、それをみんなにも見てもらいたい。僕は2004年にマンションから落ちましたが、あの出来事がなかったらいまの自分はいなかった。最悪なことでも肯定していくという大事な力をこれらの作品は内包しています」
窪塚は、全部の出来事が“いま”をよくするために起こっているというマインドセットさえできればなんでも楽しめるという。
「嫌なことや大変なことがあったとして、すぐにはポジティブなエネルギーに変換できないかもしれない。僕は、転落事故から立ち直るのに12年くらいかかりました。小さなきっかけをためていく中で、マーティン・スコセッシの映画『沈黙 - サイレンス-』に出演して一緒にレッド・カーペットを歩いたことで、ようやく清算できた感覚を味わいました。たとえば誰かに肌艶や愛車のバイクを褒めてもらえたり、小さなきっかけをためていくことで大きな扉までたどり着く。僕はお世辞ですら這い上がるきっかけにしました。いまや些細な嫌なことだったら一瞬でポジティブに変換できる術を身に付けています」
彼の信念を裏付けるかのように、『身土不二』展には力強い筆致で「過去は過ぎ去ってもうない 未来はまだ来てない 今を生きろ 今この瞬間を生きろ」と書かれたドローイング作品が飾られている。“いま”を全力で生きるからこそ不安に苛まれることなく、次々と新たな扉が開いていく。
「単にやりたいことをやっているだけなんです。ドローイング作品を創ることになったのも、一昨年大阪で開催した個展にギャラリー代表の長澤章生さんがいらして、
『東京でも個展をやらないか。絵を描いてみてほしい』と言われたことがきっかけ。一つひとつが楽しいことの延長線なんです」
「1日=86400秒を、バリエーションのある好きなことに使えてすごく楽しい」と言い切る。
「『いまがいちばんいい』と心から思えていますが、20年前も同じことを言っていました。このメソッドであと50年歩める感覚があるのでそれを離さずにいたい。自分の子どもたちに『人生は楽しい』と思ってもらいたいんですよね。彼らがちゃんと幸せな場所に行けるようにしっかり歩いていきたいです」
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WORKS
『身土不二』
2006年から陶芸を始め、22年、23年に個展をそれぞれ大阪で開いてきた窪塚にとって、初となる東京での展覧会。今回は陶芸作品に加え、初のドローイング作品も展示している。Akio Nagasawa Gallery Aoyamaで4月4日(金)まで開催。
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『大縁会』
今年、芸能生活30周年を迎える窪塚洋介の記念パーティ。本人のトークや縁あるDJ、アーティストによるライブパフォーマンスを予定しているほか、いままでの出演作品やオフショットなどのパネルやアーカイブを展示。限定アイテムも販売。5月10日(土)に開催する。
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映画『フロントライン』

2020年2月、日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での、災害派遣医療チームDMATたちの奮闘を描いた。当時の事実に基づく物語としてオリジナル脚本で映画化された。6月13日(金)より全国公開。
※この記事はPen 2025年5月号より再編集した記事です。