胸に顔をうずめ、キスする人も…“世界一有名な胸”を持つ銅像に対する扱いが酷いと抗議の声が殺到

  • 文:大村朱里
Share:

 

shutterstock_2010414341.jpg
Shutterstock-staras ※写真はイメージです

アイルランド・ダブリンの街角に立つ「モリー・マローン像」。観光名所として知られるこの銅像の“異変”に気づいているだろうか? 近年、モリーの“胸元だけ”が異様に輝いているのだーー。

ある都市伝説から、多くの人がモリーの胸を撫でたり、キスをしたりする光景が日常化。しかし、この行為に異議を唱える大学生が現れ、SNSを通じて「モリーを放っておいて!」と訴えた。その呼びかけは瞬く間に広まり、大きな議論を巻き起こしている。

話題になったモリー・マローン像は、胸が大きく開いた服をまとったダブリンの象徴。このモリー・マローンは、アイルランドの非公式アンセム 「Molly Malone 」の題材にもなっている架空の若い女性だ。U2からジョニ・ミッチェルまでがカバーしたこの歌は、ダブリンの路上で商売をしていた若い海産物売りが熱病で亡くなったことを歌っている。

そんなモリーの像に触れると「幸運が訪れる」という都市伝説も相まって、写真撮影のついでに彼女の胸を撫でたり、時にはキスをしたりする観光客が後を絶たない。いまでは多くの人が彼女の胸を揉んだり触ったりするので、ブロンズの色が劇的に変わったという。

---fadeinPager---

「触るのはもうやめて!」SNSで呼びかけ

そんな現状に「もうたくさんだ!」と声を上げたのが、トリニティ・カレッジの学生であり、シンガーソングライターでもあるティリー・クリプウェルさん。彼女は銅像のそばでバスキング(ストリートパフォーマンス)をしており、この問題を日々目の当たりにしていたのだ。

クリプウェルさんは、銅像が単なる観光スポットではなく、文化的なシンボルであることを訴えるため、昨年「#LeaveMollymAlone(モリーを放っておいて)」といSNSキャンペーンを立ち上げた。

「伝統というより、ここ15、20年の“悪い流行”です。みんな写真を撮るためにモリーの胸を後ろから触るし、キスしたり、顔をうずめたり、大声で騒ぐ人も多い」と彼女は語る。男性だけでなく女性も触ることがあるが、特に男性の方が遠慮がない傾向があるという。

彼女は、ダブリン市議会にも働きかけ、銅像の台座を高くするよう要請。「ダブリンのほとんどの男性像は高い台座にあるのに、なぜモリーは地面に近いままなの?」と問題提起し、モリー・マローンの本来の物語を説明するプレートの設置も提案した。

---fadeinPager---

「このままでいいの?」女性の権利問題にも発展

この運動は単なる銅像の保護にとどまらず、女性の尊厳や社会の意識にも問いを投げかけている。「観光客がモリーの胸を触った後、私に向かって同じジェスチャーをすることがある。これは単なる冗談で済まされることじゃない」とクリプウェルさんは語っている。

今年の国際女性デー(3月8日)には、新たな試みとして「Leave Molly mAlone」という楽曲を発表し、メッセージを音楽を通じても発信。「女性の権利向上への小さな一歩かもしれない」と彼女はインスタグラムでコメントした。

モリー・マローン像は、これからもダブリンの象徴であり続けるだろう。しかし、その扱い方が変わるかどうかは、私たちの意識次第なのかもしれない。

---fadeinPager---

【画像】触りすぎ…?モリー・マローン像の胸をさする男性。

---fadeinPager---

【動画】#LeaveMollymAlone(モリーを放っておいて)運動をする、シンガーソングライターのティリー・クリプウェルさん。新曲もリリース。

---fadeinPager---

【動画】#LeaveMollymAlone運動をする女性たち。