分解して自在にカスタマイズ。アンダーカバーのエッセンスで進化した、リーバイスの名品デニムジャケット「TYPEⅡ」

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
Share:
コラボレーションのベースになったのは、1953年に誕生したリーバイス®︎の「TYPEⅡ」。両胸にボタンフラップのポケットとプリーツが入った前身頃のデザインが特徴的。一見、普通の「TYPEⅡ」に見えるが、各パーツがジッパーで繋がっており、取り外して自在に着こなしを楽しむことができる。素材はセルビッジデニムを採用している。¥82,500/リーバイス®︎×アンダーカバー

大人の名品図鑑 デニムジャケット編 #1

薄着で出掛けられる、これからの季節に便利なのがデニムジャケットだ。最近では大きめのデニムジャケットをスウェットの上に羽織ったり、逆にコートなどのインナーとして着たり、通年で愛用する人も増えていると聞く。今回のシリーズで取り上げるデニムジャケットは、デニムウエアを愛するブランドやショップ、人物とコラボレーションして生まれた名品だ。ポットキャスト版を聴く(Spotify/Apple)

「大人の名品図鑑」では2022年7月にジーンズやデニムウエアの名品を取り上げている。その時にも言及したが、デニムジャケットは日本では「Gジャン」と呼ばれることが多い。「Gパン」同様、これは和製英語で、英語の正式名称は「デニムジャケット」「ジーンジャケット」「ウェスタンジャケット」など。しかし最近は「トラッカージャケット」と呼ばれることも増えてきた。ジーンズの生みの親であるリーバイス®︎のウェブサイトをチェックしてみると、デニム素材を使ったこの種のジャケットはどれも「トラッカージャケット」と呼ばれている。

『MEN’S FASHION BIBLE─男の定番51アイテム』(ジョシュ・シムズ著 青幻舎)でも、スタンダードなアウターウエアのひとつとしてこのデニムジャケットを取り上げているが、こう解説されている。「1962年、リーバイスはプリシュランク(防縮加工済み)を使用する557XXを発売。伝統的な『トラッカー』とファンから呼ばれ親しまれた。リーバイスは牧童労働者をターゲットとしていたのにもかかわらず、実際には長距離トラックのドライバーに好まれた」

仲間同士の通称だったのかもしれないが、ずいぶん昔からこの名称が使われてきたことがうかがえる。また同書には「557はオートバイのライダーに愛用され、『イージー・ライダー』のカウンターカルチャーを体現した」ともある。ウエスト丈は乗馬などで便利なようにデザインされたのだろうが、クルマやバイクを操るときも便利だ。日常着として多くの人に愛用されるだけでなく、当時のカルチャーを象徴するアイテムになったのだ。この本に書かれている「557XX」は、現在では「TYPEⅢ」と呼ばれる1967年に誕生した名品で、いまでもリリースされ人気が高い。同じような名称を持つ同社のデニムジャケットの名品は、1936年に誕生した「TYPEⅠ」、1953年に生まれた「TYPEⅡ」などがあり、オリジナルの古着市場ではクルマ一台をも買えるような高価格で取引されている。

---fadeinPager---

ジッパーで大胆に遊ぶ、多様な着こなし

今回紹介するデニムジャケットは、カリスマ的な人気を誇るアンダーカバーとコラボレーションした特別なモデルに仕上がっている。リーバイス®︎のデニムジャケットの名品である「TYPEⅡ」をベースにしながらもアンダーカバーらしい大胆な発想でデザインされた、これまでにないデニムジャケットだと断言できる。

袖、襟、ボディのサイドシームなどにジッパーが付けられていて、それぞれのパーツを取り外したり、付け替えたりすることができる。両袖を外してベストにしたり、襟を外してノーカラーのジャケットにすると、無骨なデニムジャケットにエレガントでモードな雰囲気が漂う。着る人それぞれが自在にカスタマイズできるようにデザインされているのだ。このジャケットのアイデアのもとになったのは、アンダーカバーが1998年秋冬のコレクションで発表した「エクスチェンジ(Exchange)」というコンセプトで、そのコレクションでも襟や身頃などの各パーツを分解し、ジッパーで結合するデザインが特徴的だった。今回のコラボではそれが見事に再現されている。

実はアンダーカバーの創業は1990年で、今年ちょうど35周年を迎える。2025年3月に開催された直近のパリ・ファッションウィークのショーでは、デザイナー高橋盾がベストなコレクションとして考える2004-05秋冬のテーマがフォーカスされているが、このデニムジャケットもそうしたアンダーカバーの過去のコレクションに想いを馳せ、さらに進化させたものに違いない。さらに、今回発表されたデニムジャケットは、当時のコレクションで使用されていた「Small Parts」のネックラベルも付いている。アンダーカバーのマニアならずとも欲しくなる要素が詰まった希少な一着だ。

---fadeinPager---

20250319_Pen_online2211[1].jpg
リーバイスの象徴とも言える「ツーホースマーク」が描かれたパッチをよく見ると、「FOR UNDERCOVER」の文字があしらわれている。襟には1998年のコレクションにも付けられた「Small Parts」の織りネームが縫い付けられている。

---fadeinPager--- 

20250319_Pen_online2214[1].jpg
襟、袖、身頃にジッパーが付けられているので、こんな風に各パーツを取り外すことができる。着こなしの幅も格段に増すに違いない。

---fadeinPager--- 

20250319_Pen_online2215[1].jpg
襟と袖のパーツを外してベストに変身した様子。インナーとしても着こなすことができ、着用できる期間もずっと長くなるだろう。

アンダーカバー

TEL: 03-5778-4805
https://undercoverism.com