自分を満たす服を選ぶきっかけになった、和泉 侃とシャツの出会い

  • 写真:加藤佳男
  • 文:力石恒元(S/T/D/Y)
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いま注目を集める4人に、お気に入りのシャツを披露してもらった。今回は、アーティストの和泉 侃。洋服に対する意識を変えた、シャツとの大きな出合いがあったと語る。

重たいコートを脱ぎ去る季節がやってきた。今特集では、老舗ブランドの新作から最旬シャツカタログまで、さまざまな視点からシャツを紐解く。無限の可能性を秘めるシャツの楽しさを、存分にお届けする。朝、目を覚まして春を感じたら、シャツを主役に出掛けよう。

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和泉 侃(いずみ・かん)●アーティスト。東京都生まれ。空間やプロダクトにおける香りのデザインやディレクションを手掛ける。「感覚の蘇生」をコンセプトに、身体感覚の変化を生み出す作品を探求。現在は淡路島を拠点に原料の製造や蒸留、調香を行っている。 photo: Masako Nakagawa

ヨーガンレールのウールツイルシャツ

「私の活動はあくまで手掛ける香りが主役で、『目に見えないものを感じ取ってほしい』という思いがあり、自分の存在があまりフォーカスされない匿名性のある服を好んでいました」

和泉にとっての服は、対外的な視点で選ぶものであり、シャツもシンプルなデザインや無垢な白を着用していた。しかしいま愛用するのは、繊細なウールを使った優しい風合いの一着だ。その変化のきっかけは、昨年、宇都宮有希が主宰するギャラリー・ケウとヨーガンレールが一緒に製作したウールツイルのシャツとの出合い。

「袖を通して、シャツへの意識が変わったんです。着心地に心が落ち着き、満たされるというリッチな体験をし、『外からの見え方ではなく、自分のために服を着たい』と初めて思いました」

実際に着て、風をはらみ空気を含んだ時に生まれる、たゆたいやシワに見惚れたという。

「この佇まいは、土を用いた私のアトリエや古い建築など、自然や経年によるエレガンスを感じる場所にもうまく馴染みます」

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いまではヨーガンレールの服の虜である和泉が、最初に手にしたシャツ。「香りの原料と同じく、天然素材が人に与える心地よさも肌を介して感じます」。なめらかなウール生地で仕立て、やわらかな雰囲気を湛えている。

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