オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」は、1972年の誕生から半世紀以上も人気を保ち続ける、稀代のベストセラーである。今年150周年を迎えたオーデマ ピゲは、1875年の創業以来スイス高級時計のゆりかごであるジュウ渓谷を離れたことがなく、いまも独立経営を守る。そんな伝統のブランドが誇る傑作「ロイヤル オーク」は、巨匠ジェラルド・ジェンタがデザインしたことでも知られる。時計ファンの尊敬と憧れを重ねるその系譜から、いまラインアップに並ぶ珠玉の7本を紹介する。
オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」とは?

「ロイヤル オーク」は1972年、“ラグジュアリーな防水スポーツウォッチ”という当時では斬新なコンセプトを引っ提げて登場した。いまでは“ラグジュアリー・スポーツ”のコードともいえるこのコンセプトは、当時では未知の分野であり、世界で初めてといえるものだった。その時計は、世界の腕時計に革命的なインパクトを与えた歴史的名品となる。名門オーデマ ピゲの高級腕時計がスチール製であることも、当時では考えられないことでもあった。
今日ではよく知られていることだが、デザインしたのは時計デザイナーの巨匠、ジェラルド・ジェンタ。ビス留めされた八角形ベゼル、スクエア模様が連続する独特のタペストリーパターンなど、特徴的なモチーフが描き出す「ロイヤル オーク」不動のスタイルは、半世紀を経ても少しも揺るがない。変わらない評価と人気のまま50年を超えるベストセラーとして、「ロイヤル オーク」の存在感は不動である。
1. ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー オープンワーク“150周年アニバーサリー”

ブランドの設立150周年を記念した、世界で150本の限定モデル。ミュゼ アトリエ オーデマ ピゲに展示されている歴史的なオープンワーク パーペチュアルカレンダー懐中時計(Ref.25729)からインスピレーションを得た特別モデルだ。見逃せないのは、歴史的なオープンワークのパーペチュアルカレンダーのムーブメントである「キャリバー 5135」の最後の搭載作であると発表されていること。稀代の名ムーブメントへの最後のトリビュートとなる。その惜別の印にアニバーサリーデザインコードを散りばめた一方で、ケースはチタン製で、ブレスレットはチタンを堅牢性の高いBMG (バルクメタリックガラス)リンクでつなぐという、最先端のマテリアルを駆使した技術も反映されている。
2. ロイヤル オーク ダブル バランスホイール オープンワーク

2025年に初登場したのが、「ナイトブルー、クラウド 50」カラーのセラミック。そもそもこのブルーは、1972 年に発表された「ロイヤル オーク」初代モデル(モデル5402)の⽂字盤に由来したもの。現在も「ロイヤル オーク」の代名詞であり、ブランドの象徴的なカラーだ。その色をインナーベゼルに採⽤しつつ、開発には数年を要したという「ナイトブルー、クラウド 50」のセラミックを躯体に得たモデル。ムーブメントは2016年に特許を取得したダブルバランスホイール機構。同軸上のふたつのバランスホイール(テンプ)とふたつのヒゲゼンマイが完全にシンクロして振動する、超絶機構である。
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3. ロイヤル オーク オートマティック

自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径41㎜、パワーリザーブ約70時間、シースルーバック、50m防水。¥4,125,000
ステンレス・スチール製ケースの3針モデルは、1972年に始まった「ロイヤル オーク」伝説の王道をいく不動のスタイル。エルゴノミックなデザイン進化に対応したこの最新モデルでも、オリジナルモデルのオーラを色濃く残している。72年のオリジナルモデルでも世界を魅了した「グランドタペストリー」模様の文字盤は「ナイトブルー、クラウド 50」カラー。「ロイヤル オーク」のデザイナーであったジェラルド・ジェンタがジュウ渓谷の夜空にインスピレーションを得て、初代モデル(モデル5402)にその色の再現を試みたもの。現在は PVD(蒸着)加⼯を⽤い、より均⼀な⾊味を実現している。
4. ロイヤル オーク クロノグラフ

2025年3月に、全世界に先駆けて日本で先行発売されると発表されて話題となった新作だ。下3つ目のクロノグラフで、ダイヤルはスモークブルーカラーの「グランドタペストリー」パターンを地に敷いたもの。同系色のブルーカウンターにはスネイル仕上げを施し、3時・6時・9時位置に配した。18Kホワイトゴールド製のアワーマーカーとロイヤル オーク針に施された暗闇での視認性を高める蓄光加工によって、ダイヤルの深みのある色合いと繊細なコントラストを演出。エレガントでラグジュアリーな、ホワイトゴールドのクロノグラフだ。
5. ロイヤル オーク"ジャンボ"エクストラ シン

「ロイヤル オーク"ジャンボ"エクストラ シン」は、コレクションの中でも屈指の人気を誇る存在だ。その中でもスモークバーガンディのダイヤルを採用したモデルはひと際ユニークでアイコニック。軽量のチタンケースとBMG(バルク メタリック ガラス)のベゼルを備えたケースによく映える。搭載する「キャリバー7121」は2022年1月に「ロイヤル オーク」50周年を記念して導入された最新型で、厚さ3.2㎜ととても薄い(=ウルトラ シン)のが特徴。8.1㎜厚の極薄ケースにジャストフィットし、ケースバックからのぞく姿はコート・ド・ジュネーブ、サーキュラーサテン、スネイル、サーキュラーグレイン、ポリッシュ面取りなどの高級な手仕上げ装飾が施され、実に美しい。
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6. ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン オープンワーク

オーデマ ピゲが2024年に発表した素材である18Kサンドゴールドを採用した、新しい「ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン オープンワーク」。ユニークなデザイン的価値を秘めたニューゴールドが、卓抜な自動巻きフライング・トゥールビヨンを引き立たせる。サンドゴールドはホワイトゴールドとピンクゴールドの中間のようなニュアンスで、アングルと光によりカラーニュアンスが変化する魅力的なマテリアルだ。オープンワークブリッジと地板もガルバニック加工によるサンドゴールドカラー仕上げで、ロジウムトーンの部品とのコントラストでユニークな立体構造をアピールする。
7.ロイヤル オーク ミニッツリピーター スーパーソヌリ

音で時刻を知らせるコンプリケーションを、ブラックセラミックのケースで製作した超絶モデル。画期的な「スーパーソヌリ」のテクノロジーは、ミニッツリピーターに懐中時計と同レベルの音質と音量を与えるものだ。特許を得たこの技術は、オーデマ ピゲとスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)との、8年にも及ぶ開発研究の成果。セラミックの音響伝導性を向上させ、優れた音響効果を生み出している。ブラックのグランドタペストリーダイヤルと、ブラックラバーストラップを組み合わせたスポーティなスタイルが「ロイヤル オーク」らしい、異次元レベルの複雑時計である。

並木浩一(桐蔭横浜大学教授/時計ジャーナリスト)
1961年、神奈川県生まれ。1990年代より、バーゼルワールドやジュネーブサロンをはじめ、国内外で時計の取材を続ける。雑誌編集長や編集委員など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。ギャラクシー賞選奨委員、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『ロレックスが買えない。』など多数。
オーデマ ピゲ ジャパン
TEL:03-6830-0000
www.audemarspiguet.com
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