マイルドハイブリッド化されたアウディ「S5 アバント」は、官能的なステーションワゴンだ!

  • 文:小川フミオ
  • 写真:アウディジャパン
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アウディジャパンが新型車「A5」と「S5」を、2025年2月に発売した。このところ、ピュアEVに力を入れてきた同社が久しぶりに送り出すエンジン車で、走りとデザインとデジタル技術、見どころが多い。

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大きく目立つブレーキ冷却用ダクトと新世代デザインのグリルを備える。

電動化戦略に沿うモデルレンジ再構築と、「A5」シリーズ開発の背景が説明されている。最終的にはピュアEVへと向かうにしても、その過程では、エンジンやハイブリッドもありうるという考えだ。

新しい「A5」シリーズは、ガソリンとディーゼル、2つのパワープラントが用意されるが、48ボルトの「MHEVプラス」と名付けられたマイルドハイブリッドシステムが組み合わされている。

デザインもユニークだ。エンジンを縦置き(多くのクルマはスペース効率から横置き)にして、前輪にしっかり“重し”を載せることでタイヤの駆動力を確保する、1980年の初代「クワトロ」以来のアウディ独自のコンセプトだ。それを表現するロングボンネットが採用されている。

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ウインドウグラフィクスがきれいな弧を描いているのも特徴。

プロファイル(側面)では、サイドウインドウの輪郭線の上の部分が前から後ろまで大きな円弧を描いているのが見える。1997年に登場した第2世代の「A6」で初採用して話題になった、美しいデザインだ。

ボディは、やはり歴史的な引用が目につく。特に、先に触れた「クワトロ」でいち早く用いて、自動車デザイン界に衝撃を与えたブリスターフェンダー。これは自動車のフェンダーをパネルごと外側に大きく張り出させて、筋肉質なふくらみを持たせたようなデザインのことだ。

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ブリスターフェンダーというデザインを世に広めた「アウディ・クワトロ」(1989年型)。写真:Audi

ブリスターフェンダーが登場した1980年代初頭では、コンパクトカーのための表現として、ドイツのオペルがいち早く採用していた。アウディではフェンダー全体を張り出させる、いわゆるオーバーフェンダーの代わりに、パワー感の表現として大胆に拡大して採用した。

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最初にブリスターフェンダーを採用した小型車がオペルの初代「コルサ」(1982年)。写真:Stellantis

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その上で新しいディテール表現を組み合わせているのが、新世代の「A5」シリーズの特徴だ。フロントでは、上下幅の狭いLEDマトリクスヘッドランプ、輪郭をなくしたラジエターグリル、それにブレーキ冷却用の左右のエアダクトを強調したトリム、といった具合。

私がドライブしたのは、もっともパワフルな「S5 アバント」だった。荷室容量448Lのステーションワゴンボディを持つ一方で、スポーティなドライビングが楽しめる。これもアウディが得意としてきたコンセプト。

270kWの最高出力と550Nmの最大トルクを持つ3L V型6気筒エンジンに、大容量の7段デュアルクラッチ変速機の組合せ。エンジンでは、広い回転域で作動する可変ジオメトリーターボと、マイルドハイブリッドシステムが注目点だ。

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ボディ面は質感が高く、力強さがしっかり表現されている。

ドライブフィールをひとことで言うと、痛快。発進時はバッテリー駆動のモーターのおかげで車重をまったく意識させないし、そこからアクセルペダルを踏み込んでいくと、V6が(音もなく)始動。速い。加えて、かすかなバイブレーションとギアを操っての加速感は、エンジン車の醍醐味だ。

先にアウディはエンジンを使って前輪に重しを載せる、と述べたが、「S5」は大きめのエンジンを搭載しているものの、重量バランスに気をつかい、軽快な操舵感を追求しているようだ。

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20インチのSツインスポーク ホイールはオプション。

「S5」には、前後輪を駆動するクワトロシステムが搭載されている。最適な走行性能を目指したシステムで、車名にスポーツを意味する「S」が付くだけあって、加速時には後輪の駆動力もしっかり使う。一方、高速走行時などいわゆる負荷が低いときは、後輪はエンジンから切り離され、燃費の向上が図られる。

サスペンションシステムがしっかり車体の動きをコントロールし、カーブが連続する道を走るのも、クルマ好きには無上の悦びになりそうだと思った。---fadeinPager---

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MMIパノラマディスプレイと、MMIパッセンジャーディスプレイを備える。

インテリアも凝っている。まず目をひくのは、11.9インチの計器用ディスプレイと14.5インチのインフォテイメントシステム用モニター。アウディではカーブドディスプレイと名付けていて、ドライバーのほうに湾曲して操作感を向上させている。

S5専用シートも、大きな魅力だ。菱形のパターンが側面まで回りこむようなデザインが採用されていて、見た目はかなり官能的。機能としても、振動はきれいに吸収するし、身体をしっかり支えてくれるし、疲れは感じなかった。

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ぜいたくな素材とスポーティな形状のフロントシート。写真:筆者

後席も、2,895mmのロングホイールベースをもつパッケージを活かして、空間的余裕がたっぷりあり、居心地がよい。

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広々感の強い後席空間。写真:筆者

要するに、すばらしく出来のよいプレミアムクラスのステーションワゴンである。SUVもいいけれど、サスペンションアームの自由度が高く、つまり乗り心地と操縦性がうまく両立できるセダンベースのステーションワゴンのよさを、あらためて見直すチャンスをくれるクルマといえる。

参考までに、「S5 アバント」を含めた「A5」シリーズのラインナップを記しておこう。「S5」以外は2L4気筒で、アバントと車名にないものはファストバックスタイルのセダンになる。

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S5(セダン)はハッチゲートをそなえたファストバックスタイル。

「A5 TFSI」110kW 599万円
「A5 TFSI quattro」150kW 681万円
「A5 TDI(ディーゼル)」150kW 後日発売
「S5」1035万円
「A5 アバントTFSI」110kW 624万円
「A5 アバントTFSI quattro」150kW 706万円
「A5 アバントTDI」150kW 後日発売
「S5アバント」1060万円

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「A5 アバント」。

アウディ S5 アバント

全長×全幅×全高:4,835×1,860×1,435mm
ホイールベース:2,895mm
2,994cc  V型6気筒エンジン マイルドハイブリッド 4輪駆動
最高出力:270kW@5,500~6,300rpm
最大トルク:550Nm@1,700~4,000rpm
乗車定員:5名
燃費:13.4km@L(WLTC)
価格:¥10,600,000
問い合わせ先/アウディコミュニケーションセンター
TEL:0120-598106
www.audi-press.jp