独自の音楽表現を築く孤高の作曲家、日本古来の“ 季節感” を描いた意欲作【Penが選んだ、今月の音楽】 『平野一郎/二十四氣』

  • 文:小室敬幸(音楽ライター)
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【Penが選んだ、今月の音楽】
『平野一郎/二十四氣』

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石上真由子(Vn)、對馬佳祐(Vn)、安達真理(Vla)、西谷牧人(Vc)ワオンレコード WAONCD-600 ¥3,179(オープン価格)

多和田葉子の書き下ろしテキストに基づくオペラを発表するなど、ていねいに掘り起こした西洋とは異なる伝統的な感覚を基に、改めて日本独自の音楽表現を築いているのが、孤高の作曲家・平野一郎である。新譜は四季・二十四節気・七十二候に沿って、日本古来の季節感を描いた意欲作。聴けば、旧暦を意識しなくなった現代の日本人にも、文明の利器で自然をコントロールする以前の感覚が蘇ってくるから本当に面白い。四季は七十二候の均等な時間に分けられ描かれているのに、長さが均質に聴こえないのだ。

※この記事はPen 2025年4月号より再編集した記事です。