日本酒の「久保田」だからこそ、造り上げることができた馥郁たるジン

  • 文:西田嘉孝
Share:

活況を呈するジンシーンにおいて、大注目の国産ジンがまたひとつ。清酒「久保田」の蔵元・朝日酒造の蒸留酒事業への挑戦となる、「KUBOTA GIN」の実力とは?

kubotagin_main.jpg

地域とともに歩む歴史ある蔵元の新たな挑戦

昨今、世界でその認知度や人気を最も高めている酒類カテゴリのひとつがジンだ。日本でも2014年以降に多くのジン蒸留所が誕生。その数はいまや約150にもなり、規模の大小を問わず各メーカーから嗜好を凝らしたジンがリリースされている。

2008年に制定されたEU法などによる細かな定義や分類などはあるものの、「ジュニパーベリーを使った蒸留酒」というルールさえ守れば、世界のどこでも造れるのが自由度の高さがジンの魅力。ジュニパーベリー以外のボタニカルは自由に選択できるため、それぞれの国や地域で特徴的なボタニカルを使ったジンが生まれるわけだ。

すでに日本でも柚子や山椒、玉露や抹茶といった茶葉など、和のボタニカルを使ったジンが数多く造られており、そのうちのいくつかの製品は海外でも高い評価を受けている。そんな国産ジンの注目株として、2024年に新たに登場したのが「KUBOTA GIN」だ。

日本の酒好きにとって“久保田”といえば、真っ先に思い浮かぶのは新潟の朝日酒造が醸す日本酒の「久保田」だろう。県内でも屈指の米どころである越路地域で1830(天保元年)年に創業した朝日酒造は、以来、約200年に渡り風土を活かす酒造りを続けてきた。酒の仕込みに使うのは、創業地の地下水脈に流れる清澄な軟水。“農醸一貫”を実現するため1990年には「有限会社あさひ農研」を設立し、栽培研究や環境保全型農業の実践など、当地での理想的な酒米づくりを追求する活動も行なっている。

そんな朝日酒造が新事業に向けた構想をスタートさせたのは2020年頃のこと。創業200周年の節目を迎える2030年を前に、「次の100年を見据えた新たな挑戦」として、蒸留酒事業への新規参入を決めたという。

kubotagin_releaseB_06.jpg

---fadeinPager---

16種類のボタニカルを使った「久保田」らしさが薫るジン

そして2024年9月には、同地に立つ本社敷地内に越路蒸留所を竣工。現代的な蒸留設備であるハイブリッド式蒸留機2基を導入し、スピリッツの製造をスタートさせた。

kubotagin_release02.jpg
kubotagin_release04.jpg

数ある蒸留酒の中でもジン市場への参入を決めたのは、国内外におけるジン市場の成長と表現の自由度の高さが理由だ。原料とするボタニカルの選択の幅が広いジンでは造り手の想いや風土の恵みが存分に活かせるうえ、県内の米農家との持続的な繋がりを大切にする同社なら、将来的には米を使ったジンづくりの可能性なども拓けてくる。

製造や開発に関わるのは、同社が誇る酒造りのスペシャリストたち。技術アドバイザーを務める「五島つばき蒸留所」蒸留家兼ブレンダー鬼頭英明氏のもと、蒸留やブレンドなどの技術を学び、“朝日酒造らしさ”を突き詰めることで新たなジンを完成させた。

コンセプトとなったのは、四季折々の風景や香りで「くつろぎ」や「癒し」をもたらす里山のイメージ。使用されるのはジュニパーベリーやコリアンダーシードの他、杉の葉やクロモジ、笹の葉、ヨモギ、柚子や新潟の県木である雪椿の種といった16種類のボタニカルだ。

kubotagin_releaseB_04.jpg

まあるくふくよかな香りとともに感じられるのは、清々しくも複雑な里山の自然を思わせるアロマ。ボタニカルに新潟が名産の舞茸や同社の甘酒が使われているのもユニークで、飲めばたっぷりの旨味とやさしい米の甘味が感じられ、四川青山椒に由来する後口のドライさが後を引く。

ストレートはもちろんロックやジントニックにソーダ割り、さらにはお湯割りでも楽しめそうな、まさに日本酒の「久保田」のエッセンスが詰め込まれたジンとなっている。

他のジンとは一線を画す、波のような加工がされたボトルやラベルは、自然の神秘性を表現したもの。水面のゆらめきや木立のざわめき、森の中や田んぼの風景など、見る物の心象風景に訴えかけるデザインのボトルは、高級感もあり大切な人へのギフトにもぴったりだ。

KUBOTA GIN_bottle.jpg

ジン好きだけでなく、日本酒ファンにもおすすめしたい「KUBOTA GIN」。未体験の人にはぜひトライして欲しい、老舗酒造が真摯に造り上げた馥郁たる国産ジンだ。

kubotagin_release07.jpg
朝日酒造オンラインショップなどで販売される「KUBOTA GIN」(ギフトBOX版)。16種類のボタニカルをそれぞれ個別に蒸留した原酒を、繊細なバランスでブレンド。手間を惜しまない手法で「久保田」らしい世界観を纏った香味を実現した。700ml ¥6,600、通常BOX版¥6,050

朝日酒造株式会社

https://www.asahi-shuzo.co.jp