“未来のSUV”の姿を体感した、ボルボの7人乗りEV「EX90」試乗記

  • 写真&文:Pen編集部
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昨秋、ロサンゼルスの穏やかな気候のもと、ボルボ「EX90」の国際試乗会が開催された。広大なカリフォルニアの風景を背景にした試乗体験を通じて感じた、ボルボが描く未来のモビリティの姿、そして本国スタッフへのインタビューから見えてきたデザイン哲学をお届けする。

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会場にずらりと並んだ「EX90」の試乗車。(写真提供:ボルボ)
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試乗会の拠点はリゾートホテル 「The Resort at Pelican Hill」。(写真提供:ボルボ)

今回北欧スウェーデンの自動車ブランドであるボルボの試乗会の舞台としてアメリカ、LAが選ばれた背景には、米市場での戦略的な重要性があると考えられる。ボルボはアメリカ市場向けの生産拠点として、サウスカロライナ州チャールストンに大規模な工場を構えている。この工場では「S60」などが生産されており、同様に「EX90」も生産される。そして、カリフォルニア州はEVの普及が進んでいる地域であり、電動モビリティの未来を象徴する場として最適な環境だった。

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試乗会参加者が最初に見た「EX90」は、8色あるカラーのうちのマルベリーレッド。深みのある赤いボディは、光の加減によって異なる表情を見せ、エレガントかつ洗練された印象を与える。

ボルボは積極的に電動化を推進しており、すでに複数のEVモデルを展開している。主なラインアップは以下の通りだ。

コンパクトSUVで都市部でも扱いやすいサイズ感とスポーティな走行性能を兼ね備える「EX40」、クーペSUVデザインを採用しよりスタイリッシュなアプローチを施したモデルの「EC40」、2023年に発表されたエントリーEVモデルでコンパクトながら高いパフォーマンスを誇る「EX30」。そして、25年3月には「ES90」が欧州で発表された。

今回試乗した「EX90」はフラッグシップEVであり、ボルボの最新技術とデザイン哲学を象徴するモデル。ラインアップの中で最もラグジュアリーで先進的な技術を搭載した一台となる。特に、安全性、持続可能性、高い快適性の3点において、一線を画している。---fadeinPager---

スウェーデンの自然から着想を得た、デザイン哲学

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ヴェイパーグレーの車体。スカンジナビアの霧がかった風景や、穏やかでミニマルな北欧の建築からインスピレーションを得た、落ち着いたグレートーン。

ボルボ「EX90」のインテリアは、単なる豪華さを追求するのではなく、自然と調和した心地よい空間をつくり上げることに重点が置かれている。このクルマのカラー&マテリアル責任者であるマリア・スタークは、デザインのインスピレーションの源としてスウェーデンの自然を挙げる。

「私たちはスウェーデンの四季折々の風景から色や質感を学び、それをクルマのデザインに落とし込んでいます。たとえば、エクステリアの色調は、スウェーデンの夕焼けや湖の青、雪のような穏やかな白から着想を得ています。インテリアの素材も、自然の触感を再現するために、リサイクル素材やウールブレンドを使用し、より環境に優しい仕上がりになっています」

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インテリアに使用される木材はFSC(森林管理協議会)認証を受けた持続可能な方法で調達されたものを使用。木目の質感を活かしたデザインにより、温もりを感じリラックスできる車内空間を演出している。
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「EX90」のカラー&マテリアル責任者であるマリア・スターク。

また、ボルボのデザイン哲学には日本の美意識とも共通する要素があると指摘する。

「スウェーデンと日本は、四季があることでも共通していますよね。また、シンプルでありながら奥深い美しさを大切にする文化があります。無駄のないデザイン、落ち着いた色彩、そして自然との調和。これらはボルボのデザインに深く根付いているものです。私たちは常に、心地よい空間をつくるために、自然の要素とテクノロジーを融合させています」---fadeinPager---

洗練されたデザインと最先端技術を備えた、電動SUV

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物理ボタンを極力排し、シンプルかつ直感的な操作を実現したコックピット。14.5インチの縦型タッチスクリーンは視認性が高く操作性も抜群。Googleを基盤としたインフォテインメントシステムを採用し、Google マップや音声アシスタントと連携している。

機能面では、111kWhの大容量バッテリーを搭載し、最大600km(WLTP)という航続距離を実現。デュアルモーター仕様のAWD(全輪駆動)システムを採用し、最高出力517馬力、最大トルク910Nmという力強いパフォーマンスを発揮する。これにより、時速0から100kmまでの加速はわずか4.9秒というスポーツカー並みの加速性能を誇る。

また、最新のエネルギーマネジメントシステムを搭載し、回生ブレーキや高度なバッテリー管理により、エネルギー効率を最大化。長距離走行でも安定したパフォーマンスを維持できる。さらに急速充電にも対応し、DC急速充電では約30分でバッテリー容量の80%まで回復可能だ。 

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エレガントなデザインを際立たせる流麗なボディラインと、大径エアロホイール。ホイールのダイヤモンドカットデザインとポリッシュドアルミニウムのコントラストが独特の高級感を生み出し、空気抵抗の低減と重量削減に寄与している。

サスペンションにはアダプティブエアサスペンションが採用され、路面状況に応じて瞬時にダンピングを調整。都市部、高速道路、ワインディングロードといったさまざまな環境で、優れた乗り心地と安定性を確立する。

さらに先進のLiDARセンサーやカメラを駆使した衝突回避システムを搭載。周囲360度の監視によって危険を未然に防ぐ高度な安全技術を実現している。---fadeinPager---

街中・ハイウェイ・丘陵地帯で体感した、極上のドライビングエクスペリエンス

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左:高級住宅街の一角を走行。外の景色はどこを見ても素晴らしかった。 右:他の試乗会参加者が運転する「EX90」を街中で見かけた様子。どっしりとした車体と特徴的なリアランプのデザインの組み合わせが、クルマの存在感を際立たせていた。

LAの試乗ルートは、「EX90」の真価を体感できるよう設計されていた。都市部の交通渋滞を抜け、パシフィック・コースト・ハイウェイの開放的な海岸線、ワインディングロードが続く丘陵地帯を走ることで、「EX90」の静粛性、走行安定性、加速性能を実感することができた。

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ハイウェイを颯爽と走行。車内は実に静粛性に優れ揺れもない。まるで新幹線のような乗り心地だった。

特に印象的だったのは、エアサスペンションによる滑らかな乗り心地だ。路面の凹凸を巧みに吸収し、優れた衝撃吸収性能を発揮しながらも、ステアリングのレスポンスはシャープ。SUVでありながらスポーツカーのような一体感のあるドライブフィールを提供してくれる。このバランスの取れた設定により、長距離の移動も快適なものとなった。

試乗会が体現した、ボルボの世界観

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クルマのつくりがわかる展示物が用意された特設ラウンジ。
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ここで各担当者から直接話を伺うことができた。

今回の試乗会は、単なる新車発表の場ではなく、ボルボが目指す未来のライフスタイルを体験できる場として設計されていた。自然豊かなロケーションに設営された会場には、北欧デザインを基調とした特設ラウンジが用意され、参加者たちは落ち着いた空間の中でクルマについての説明を受けることができた。

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バンガロータイプのラグジュアリーな客室。長時間運転の疲れを癒してくれた。
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ルームキーも特別仕様に。

また、ボルボが掲げる持続可能な未来を反映するため、試乗会ではサステナブルな取り組みが随所に見られた。提供された軽食やドリンクはオーガニック素材を使用し、会場で使われるエネルギーも再生可能エネルギーを活用するなど、ブランドの環境配慮の姿勢が随所に感じられた。

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サステナブルをイメージした特別なディナー。自然を想起させる見た目と、素材本来の味を活かした滋味深い創作料理が並んだ。

「EX90」は、単なる電動SUVではなく、ボルボらしさを次世代に受け継ぐモデルである。サステナブルなデザイン、安全性を追求した技術、そして快適な乗り心地。これらを高次元で融合させた「EX90」は、ボルボが描く“未来のSUV”としての可能性を大いに感じさせた。

ロサンゼルスの空の下、ボルボ「EX90」が見せた走りは、EVの新時代に向けた確かな一歩だった。 

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ボルボ EX90 Twin Motor Performance

全長×全幅×全高:5,037×1,964×1,744mm
ホイールベース:2,985mm
バッテリー容量:111kWh
駆動方式:AWD(全輪駆動)
最高出力:380kW(517馬力)
最大トルク:910Nm
航続距離:600km(WLTP)
乗車定員:7名
価格:未定
問い合わせ:ボルボ・カー・ジャパン
www.volvocars.com/jp