多様な出会いを生む、街のハブとなる複合施設「小千谷市ひと・まち・文化 共創拠点ホントカ。」【今月の建築ARCHITECTURE FILE #30】

  • 文:佐藤季代
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可動書架などで構成される「フロート」は、企画に応じて空間を組み替えられるフレキシブルな空間。天井は小千谷縮をイメージした和紙仕上げ。 photo: Kenya Chiba

日本有数の豪雪地帯として知られる新潟県・小千谷市。越後三山と信濃川を望める商店街の一角に、図書館を核とした複合施設「小千谷市ひと・まち・文化共創拠点ホントカ。」が2024年9月に開業した。設計を手掛けたのは平田晃久建築設計事務所。設計にあたって、地域住民とのワークショップで挙げられた100以上の活動をネットワーク化し、それらをもとに平面計画を決定。子どもから高齢者まで幅広い世代が集える居場所を随所に設け、四季折々に変化する小千谷の風景と呼応するような空間をつくり上げた。

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旧小千谷総合病院跡地に立つ。遠方に見える越後三山、信濃川、国道の3つの要素を軸に、風景に馴染むように地形のような屋根をデザインした。 photo: Daici Ano

 

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南側のファサード。室内からはガラス越しに小千谷らしい自然豊かな風景が楽しめる。屋上の広場へはスロープや階段からアクセスできる。 photo: Daici Ano

奥行きのある2階建ての建物は3つの空間要素で構成されている。そのひとつが、ガラスの大開口に沿った「フロート」と呼ばれる32台の可動書架を中心とした動く家具。その時々のテーマに沿って書架を組み替えて特集コーナーなどをつくり、新たな知との出会いを生む。さらに施設に点在する9つの活動の場=「アンカー」と呼ばれる部屋は「食」「博」「知」「演」などテーマで分類され、多様な活動や交流の場となっている。

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かつて多くの商店が軒を連ねたアーケード街と連続する。深い軒下空間では地元のイベントを開催するなど多目的な広場として活用される。 photo: Daici Ano

横へと広がる施設全体を覆うのが、山並みや地形を想起させる山谷形状の「ルーフ」。重い雪から建物を支えるだけでなく、雪のない季節には屋上が広場として機能する。変化に富んだ多様な居場所のある建築が小千谷の街に再び活気を取り戻していく。

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虫食いの葉っぱをイメージした滑り台やネット遊具などが一体となった屋内広場。雪の降る冬場でも子どもたちが思い思いに楽しめる。 photo: Kenya Chiba

小千谷市ひと・まち・文化 共創拠点ホントカ。

住所:新潟県小千谷市本町1-13-35
TEL:0258-82-2724
開館時間:9時~22時
休館日:第2・4火曜日、年末年始
https://hontoka.city.ojiya.niigata.jp
【設計者】平田晃久
京都大学大学院を修了後、伊東豊雄建築設計事務所を経て平田晃久建築設計事務所を設立。家具や住宅、公共施設、商業施設、都市再開発まで多様なプロジェクトを手掛ける。プロポーザルを経て本建築を担当。

※この記事はPen 2025年4月号より再編集した記事です。