時空を超えた没入体験、古代エジプトが最も輝いた時代へ! 『ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』が開催中

  • 文&写真:はろるど
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1.jpeg『ラムセス2世の巨像の上部』 新王国時代、第19王朝 シャルム・エル・シェイク博物館。2021年にアメリカのヒューストンからスタートした本展。以降、サンフランシスコ、パリ、シドニー、ケルンを巡回し、総入場者が200万人を超えるなど人気を博した。アジアでは東京が初の開催となる。

東京・豊洲のラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyoで『ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』が開催されている。エジプト史上最も偉大な王と呼ばれるラムセス2世とその時代にまつわる至宝を約180点展示する、エジプト政府公認としては過去最大級の展覧会だ。

神とあがめられた太陽王・ラムセス2世の偉業とは? 

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「ラムセス2世の巨像の頭部」 新王国時代、第19王朝 エジプト博物館。中王国時代の王の像をもとに作り直したもの。古代エジプトでは上エジプトと下エジプトの両方の支配者がファラオとされるが、ここでは上エジプトの象徴である細長い冠をかぶっていることから、上エジプトの王としてラムセスを表していることがわかる。

ラムセス2世はどのようなファラオだった……? 第19王朝第3代君主であるラムセス2世(紀元前1305年ー紀元前1213)は、25歳にて即位すると、実に67年間もの長きにわたってエジプトを統治。自らも優れた戦士であり外交能力にも長けていたラムセス2世は、敵国ヒッタイトとの間にあったカデシュの戦いにて人類の歴史上初めての平和条約を締結し、王国に平和と繁栄をもたらす。

またルクソール神殿の塔門やアブ・シンベル神殿など、現代のエジプトにも残る多くの巨大建築物の建造を指揮しただけでなく、当時としては92歳という驚異的な長寿をまっとう。さらに有名なネフェルタリやイシスネフェルト1世など優れた王妃や妻との間に100人以上もの子どもをもうけ、人を超えた「神」として崇められたファラオを代表する大王として知られている。

伝説のファラオと対面! 国内初公開の巨像も展示

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『雄羊の頭を配した器を捧げるスフィンクスとしてのラムセス2世像』 新王国時代 第19王朝 エジプト博物館。古代エジプトの力と威厳の象徴であるラムセス2世。このスフィンクスはかつてルクソールの北に位置するカルナクのアムン・ラー大神殿に鎮座していた。

ライオンと人間を融合させた『雄羊の頭を配した器を捧げるスフィンクスとしてのラムセス2世像』が、ラムセス2世の絶対的な権力と神への深い信仰心を表している。力強さの象徴であるライオンは、古来より王族と密接な関係にあり、神々の王であるアムン・ラーに聖なる水を入れた器を捧げている。

一方の「ラムセス2世の巨像の上部」とは、両手にメケスと呼ばれる書類ケースを握りしめて立つラムセス2世を表した石灰石の巨像。王のみが着用する縞模様の頭巾のネメスをかぶり、付け髭をたくわえ、プリーツスカートを履くためのベルトには短剣が差し込まれている。偉大なファラオとしてのラムセス2世のイメージが不朽のものとなった像として位置付けられ、エジプト国外で展示されるのは初めてだ。その堂々たる姿を前にすると畏怖の念すら覚える。---fadeinPager---

ラムセス2世の棺と蓋が、国内で史上初めて揃って公開

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『ラムセス2世の棺』 新王国時代、第19王朝 エジプト博物館。蓋にあるヒエログリフはラムセス2世のカルトゥーシュ(古代エジプトの王名枠)を表し、墓から最終的にミイラが安置された隠し場までの道のりが語られている。今回の世界巡回展の前にこの棺の蓋と本体が揃ってエジプトから出たのは、1976年から77年のこととなる。

エジプト当局から特別に貸与された『ラムセス2世の棺』が展覧会のハイライトを飾っている。美しいカーブを描き、ラムセス2世の強さや慈悲を表したという顔が描かれた棺は、神話においてオシリスの遺体を守ったとされる神聖な香木、レバノンスギにて作られたもの。もともとラムセス2世のためにデザインされた棺ではなく、ツタンカーメンの治世からラムセス2世の治世初期の頃の特徴が見られ、詳細な理由こそ不明なものの、計3回にわたって遺体の移されたラムセス2世の移送のための棺だと分かっている。

蓋には「ラムセス、アメンから愛されし者」などの碑文が書き込まれ、薄い板を貼り合わせて作られることが多い中、分厚い材からくり抜かれ、重厚な棺であることが見てとれる。過去、蓋のみは国内でも展示されたことがあったが、棺本体と蓋が揃った状態としては初めての公開となる。

煌びやかな宝飾品からプロジェクション・マッピング、そしてVRまで

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『プスセンネス1世の襟飾り』(第3中間期、第21王朝 エジプト博物館)などが並ぶ展示風景。プスセンネス1世は、第21王朝(いわゆるラムセス王朝)の後継者のひとり。襟飾りの重さは8kgにおよび、5段に並んだ約5000個の輪と、小さな鐘があしらわれた鎖で構成されている。

こうしたラムセス2世にまつわる遺物だけでなく、ファラオの黄金のマスクや贅を凝らした襟飾りや短剣といった宝飾品も数多く公開された本展。「これほどのスケールのエジプト展はもう国内では開かれないかも…」と思うほどにゴージャスだが、アブ・シンベル神殿の精巧なジオラマやプロジェクション・マッピングでカデシュの戦いを再現するなど、一般的な博物展示とは異なる臨場感にあふれた会場デザインも大きな見どころだ。

そしてラストのヴァーチャル・リアリティー(VR)による『オシリスへの旅』も絶対に体験したい。ここではアブ・シンベル神殿とネフェルタリ王妃の墓をネフェルタリとともに冒険する物語を、ゆりかごのようなモーションチェアに座りながら、まるで実際に神殿の中をさまよっているような感覚を楽しめる。

『ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』

開催期間:開催中〜2025年9月7日(日)
開催場所:ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo
東京都江東区豊洲6-4-25 
開館時間:10時〜18時(月~金) ※最終入場17時まで
9時〜19時(土、日、祝、特定日) ※最終入場18時まで
入場料:一般¥4,100(月~金)、¥4,300(土、日、祝、特定日)
※VR:¥2,500(別チケット)
https://ramsesexhibition.jp