「火の鳥」展が六本木ヒルズで開催中! 生物学者・福岡伸一が読み解く、手塚治虫の生命哲学とは?

  • 文:門倉奈津子
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【エントランス】プロローグ 火の鳥・輪廻シアター ©Tezuka Productionsのコピー.jpgマンガの神様・手塚治虫の最高傑作『火の鳥』の初となる大型展覧会。エントランスから壮大な世界観に圧倒されるはずだ。 プロローグ 火の鳥・輪廻シアター©Tezuka Productions

数々の名作を生み出した手塚治虫が、自らのライフワークと宣言したマンガ『火の鳥』。その初の大型展覧会となる『手塚治虫「火の鳥」展 ー火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴ー』が、六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューにて開催中だ。

『火の鳥』は1950年代から30年以上の長期にわたって執筆された壮大な叙事詩。時空を超えて存在する超生命体・火の鳥を狂言回しに、過去と未来を交互に描きながら、テーマである「生と死」や「輪廻転生」といった哲学的な問題を深く掘り下げる、手塚治虫を代表する作品のひとつだ。

本展は、生物学者・福岡伸一が道先案内人として、生命論の視点から『火の鳥』の物語構造を読み解き、手塚治虫が生涯をかけて表現し続けた「生命とはなにか」という問いの答えを探求する。

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生物学者・福岡伸一が企画監修を行った。手塚治虫「火の鳥」展 キービジュアル©Tezuka Productions

生物学者の福岡は、『火の鳥』の世界観は、彼の生命論である、生命が絶えず自らの破壊と創造を繰り返しながら、エントロピー増大の法則に抗い続けている「動的平衡(どうてきへいこう)」と重なると語る。本展の狙いは、動的平衡の視点から『火の鳥』の意味を読み解くこと。そして、手塚治虫が描くことを約束しながら果たせなかった物語の結末を想像してほしい。

展示は、プロローグの「火の鳥・輪廻シアター」から始まり、第1章「生命のセンス・オブ・ワンダー」、第2章「読む! 永遠の生命の物語」、第3章「未完を読み解く」で構成。---fadeinPager---

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第1章 生命のセンス・オブ・ワンダー。ここでは、物語の複雑な構造を明らかにし、作品舞台の時代背景とともに年表形式で辿る。©Tezuka Productions
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第2章 読む! 永遠の生命の物語の展示風景。©Tezuka Productions

第1章では、1954年に誕生した『火の鳥』を、手塚治虫がどのように発想し、構想を深めていったのかについてフォーカス。創作の原点に迫りながら、作品にあふれる自然に対するセンス・オブ・ワンダー(畏敬の念)にも触れる。

第2章では、主要12編(「黎明期」から「太陽編」まで)の貴重な原稿を多数展示しているのが魅力的だ。この作品で描かれている“火の鳥”は、いったい何を象徴しているのか。「生命とはなにか」の問いに、手塚治虫はどのような答えを示そうとしたのかを福岡が読み解き、混迷を極める時代に向けて、私たちの“生”のありようを哲学する。---fadeinPager---

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『火の鳥 休憩-INTERMISSION-』©Tezuka Productions

手塚治虫は、作家人生43年のうち、35年もの間『火の鳥』を描き続けたが、物語は未完で終わった。第3章では、彼はいったいどのようにして物語を完結する予定だったのかという本作最大の謎に、福岡がひとつの答えを導き出す。

「生命とはなにか」という根元的な問いについて、作品とともに考えるまたとない機会となる本展へ、この春にぜひ出かけてみたい。

『手塚治虫「火の鳥」展 ー火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴ー』

開催期間:開催中〜2025年5月25日(日)
開催場所:東京シティビュー
東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52F
開館時間:10時~22時 ※最終入館21時
入館料:一般 ¥2,300
https://hinotori-ex.roppongihills.com