【Penが選んだ、今月の音楽】
『マーラー:交響曲第7番』

英国出身のサイモン・ラトルは世界最高の指揮者のひとりだが、“Brex(it 英国のEU離脱)”を避けてロンドン響の監督を急に辞任。多くの音楽ファンを心配させたが、バイエルン放送響の首席指揮者に。良好だった両者の関係はさらに深まり、古巣ベルリンフィルとはまた異なる蜜月関係を築いている。本盤はまさにその成果で、かつてはヘンテコな作品とみなされがちだったマーラーの7番さえ、精緻で柔軟な対応力によって真っ当な交響曲にしてしまう。重箱の隅まで明晰なのに窮屈ではないのだから、開いた口が塞がらない。
※この記事はPen 2025年4月号より再編集した記事です。