【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『対馬の海に沈む』

人口3万人の長崎の離島。いつもと変わらぬ穏やかな海に、一台の車が突っ込んだ。近くにいた人の証言に基づくその際の描写からして秀逸だが、さらに予想外の展開は続く。溺死したのは日本一の実績を誇るJA職員で、巨額の横領の疑いがあることがわかったのだ。しかもそれはひとりの人間の悪事として片づけられるものではなく、背後にJAという組織が内包する営業ノルマの問題が深く絡んでいたことが明かされていく。緻密な取材と構成力にも説得力があり、一気に読み終えてしまえるノンフィクションの傑作。
※この記事はPen 2025年4月号より再編集した記事です。