子豚を“餓死へと追いやるアート”に批判続々…「虐待は芸術ではない」「拷問だ」

  • 文:山川真智子
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photo:Viktor Osipenko/shutterstock※写真はイメージ

デンマークのコペンハーゲンの展覧会にて、ショッピングカートに入れられた子豚の展示が物議を醸している。子ぶたたちは食べ物も飲み物も与えられず、数日以内に餓死することが予想されていた。製作したアーティストは、現代の養豚業がもたらす苦痛を知らしめるためだと説明しているが、現地では批判の声が上がっている。

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餌も水もない… 死を待つ子豚たちを展示

AP通信によれば、この作品は、チリ出身の芸術家、マルコ・エヴァリスティによるもの。オブジェや装置を置いて、場所や空間全体を作品として体験させるインストレーション・アートで、コペンハーゲンの“アンド・ナウ・ユー・ケア(そして今、あなたは気にする)”展の中心的展示として公開された。

置かれていたのは、ショッピングカートで作った間に合わせのケージで、中には3匹の子豚が入っていた。2月28日(現地時間)の夕方に展示が始まったとき、子豚たちはまだ元気だったが、食べ物も飲み物も与えられておらず、数日以内に餓死することが予想されたという。

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目をそらすのか? アーティストの狙いとは?

エヴァリスティは、血だらけの豚が載せられたデンマーク国旗の絵を自身のインスタグラムに投稿。この展覧会は、食肉処理場におけるデンマークの残虐な現実に立ち向かうものだと主張している。

デンマークでは、食肉処理場に送られる以前に、毎日2万頭以上の子豚が死んでいるという。病気や劣悪な扱い、尊厳ある生活を送る余地のない生産効率によるものだとエヴァリスティは指摘。特に、母豚が一度にたくさんの子豚を産むことを強いられるため、結果として乳にありつけない多くの子豚が餓死してしまうことを問題視している。

作品は、このまま目をそらし続けるのか、それとも責任を取るのかというシンプルな問いを投げかけているという。肉の消費を減らし、家畜動物の福祉を向上させる農業をサポートすべきというのが、製作者としての訴えだ。

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批判のコメント続々 過去にも過激な作品が…

この投稿には、「あなたも動物虐待に加担している」「虐待は芸術ではない」「拷問だ」「恥を知れ」などの批判のコメントが大量投下されている。エヴァリスティによれば、本人だけでなく家族にも脅迫やヘイトメールが届いているという。公然と批判を煽るような政治家もおり、名誉棄損として当局に届け出たとインスタグラムで報告している。

デンマーク最大かつ最古の動物保護団体、アニマル・プロテクション・デンマークは、エヴァリスティが問題に関心を寄せてくれたことには感謝するが、その伝え方には同意しかねると説明。憤りを理解しつつも、生き物を飢え死にさせることは違法であり虐待だとした。

過去にも、エヴァリスティの芸術は物議を醸している。ミキサーに金魚を入れ、見る人にスイッチを入れるよう誘うプロジェクトを行い、大きな批判を受けた。また、消費過剰な人々への批判と、さらにカニバリズム(食人行為)のタブーを超越する試みとして、脂肪吸引で取り除いた自分の体脂肪からミートボールを作って食べてしまうなど、過激な彼の芸術スタイルは挑戦的なものが多い。今回も、世間への挑戦的なアピールとなったと言えよう。

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アンド・ナウ・ユー・ケア展に展示された、三匹の子豚。FB KABB FOX 29 News, San Antonio

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エヴァリスティの投稿。デンマーク国旗の上に血だらけの豚が載せられている絵。Instagram @evaristtistudios

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エヴァリスティの過去作。ミキサーに金魚を入れ、見る人にスイッチを入れるか判断させる。Instagram @evaristtistudios

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エヴァリスティの過去作。自分の体脂肪からミートボールを作って食べてしまった。Instagram @evaristtistudios