カップルとして互いに影響し合った、ふたりのアーティストの軌跡――『ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ』展が開催

  • 文:青野尚子(アートライター)
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左:『「ダダ・ヘッド」とゾフィー・トイバー』 1920年、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト photo: ニック・アルフ 右:『「臍=単眼鏡」とジャン・アルプ』1926年頃、アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト © VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4762

夫婦ともにアーティストだったゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ。彼らがどのように影響を及ぼし合い、カップルというパートナーシップが創作の上でどのように作用したのかを探る展覧会が開かれる。

彼らが活躍した19世紀後半から20世紀前半には女性アーティストの増加に伴い、アーティスト・カップルも見られるようになっていた。そのなかでもゾフィーとジャンはそれぞれ前衛芸術の前線で活動しながら、コラボレーションによる制作も行っている。1943年にゾフィーが逝去したのちも、彼女の作品はジャンにインスピレーションを与え続けた。

この展覧会はこれまで日本で紹介される機会の少なかったゾフィー・トイバー=アルプの作品をまとめて見られる貴重なものになる。1889年、スイスのダヴォスに生まれた彼女は応用芸術学校で学び、テキスタイル・デザインの教育を行うとともに家具、建築、絵画など多方面で創作を行った。2021年にはニューヨーク近代美術館ほかで回顧展が開催されるなど、再評価の機運が高まっている。

一方、日本でもたびたび紹介されるジャン・アルプについては、よく知られている有機的な形態の彫刻作品のほかにレリーフやコラージュなど、幅広い作品が展示される。1886年ドイツ出身のアルプは絵画と詩を起点として創作活動を開始。マルセル・デュシャンが「アルプその人がアート」と評したように、どんな表現手段であっても彼にしかできない造形を生み出した。

彼らが活動していた頃は、女性には芸術よりテキスタイルなどのほうが向いているとされていた。そんななか、ゾフィーは前衛芸術の世界で男性と肩を並べるまでになる。美術史における女性の位置付けといった観点からも興味深い展覧会だ。

『ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ』

開催期間:3/1~6/1
会場:アーティゾン美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間;10時~18時(金曜は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(5/5は開館)、5/7 
料金:一般¥2,000(ウェブ予約¥1,800)
www.artizon.museum

※この記事はPen 2025年4月より再編集した記事です。