腕時計ファンが到達するひとつの"結論"。ブレゲ「クラシック」のいま手に入れるべきモデル7選

  • 文:並木浩一、富永淳
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2025年の今年、創業250年を迎えたブレゲだが、そのラインアップに並ぶコレクションの中でも「クラシック」はとびきり個性的な、ブランドの正統性を語るモデル群だ。18世紀の創業者アブラアン-ルイ・ブレゲの天才ぶりを現代に継承するモデルは、腕時計ファンが到達するひとつの結論といっていい。現在入手可能な「現代の古典」の中から、7本を紹介する。

ブレゲ「クラシック」とは?

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アシメトリーなレイアウト、擬人化されたムーンフェイズの月、特徴的な“ブレゲ数字”、ブルースチール製の“ブレゲ針”。クラシック・デザインに好んで引用されるディテールの多くは、懐中時計時代に創業したブレゲに原典が存在するものだ。

ブレゲの「クラシック」は、ひとつのケースデザインを共有するといったような一般的な“コレクション”とは異なった意味を持つ、特別なコレクションである。共通するコンセプトとして高精度・視認性・エレガントなデザインといったような理想を掲げつつ、それぞれのモデルは極薄型時計から複雑時計まで、それぞれに際立った特性を持っている。それはこのブランドが持つ「古典の正統性」の総覧のようなものともいえるだろう。18世紀に創業し、フランス王妃マリー・アントワネットを魅了し、その後もナポレオンら時代を代表する存在を顧客とした現存する伝説であるブレゲ。そのブランドにとって「クラシック」の意味は、他と異なって重い。それは4世紀を跨ぐ技術や芸術性、伝統的な価値観に基づくものなのであり、つくり続けられる不朽の古典である。

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1. クラシック 5177

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自動巻き、PTケース、ケース径38㎜、パワーリザーブ約55時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥6,017,000

ブレゲの審美性を象徴するようなモデルである名品「5177」に登場した、待望のブラックダイヤルの新作。3針+デイト表示のシンプルな設えながら、“グラン・フー・エナメル”の高貴な光沢で魅せる文字盤は絶品だ。円を穿ったブレゲ針のスタイル、2や4に特に独創的なフォルムを採るブレゲ数字の採用は、古典派の時計ファンの期待に応えるものだ。ケースはプラチナ製と、ノーブルの極み。そのマテリアルを「クラシック」コレクションではしばしば登場するアイコニックなフルート模様=“コインエッジ”のケースバンドで造形し、ラグは溶接、サファイア製のケースバックから極上仕上げのムーブメントをのぞかせる。

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2. クラシック 5157

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自動巻き、18KWGケース、ケース径38㎜、パワーリザーブ約45時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥3,333,000

超薄型の自動巻きモデル。ブレゲの技術力を示す現代的なスタイルの一方で、「クラシック」コレクションが継承する優美な伝統的デザインの魅力も兼ね備えている。シルバー仕上げの贅沢なゴールド製文字盤は、手彫りギヨシェで伝統的な“クル・ド・パリ”の模様が施されたものだ。このダイヤルの仕立ては18世紀の創業者である初代ブレゲが先駆者であり、当時のブレゲ製懐中時計に特徴的に見られるものだ。ギヨシェ彫りはいまも手回し式の工作機械を用いて手作業で施されている。時分針は焼きを入れて自然の発色を得るブルースチール製のブレゲ針。ローマ数字の12を挟んでシークレット・サインが刻まれている。

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3. クラシック 7787

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自動巻き、18KWGケース、ケース径39㎜、パワーリザーブ約38時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥5,357,000

他のブランドでは滅多に見かけることのない12時位置にレイアウトされたムーンフェイズは、顔を描いて擬人化されたチャーミングな複雑機構。ブルースティール製の時分針と秒針はブレゲ針、アワー表示は4の横棒先端を十字に描くブレゲ数字。文字盤は高温焼成(グラン・フー)のホワイトエナメル製と、ノーブルを極めたものだ。その一方で3時位置を基軸とするパワーリザーブ針はおそろしく長尺だ。端正さを自ら破調する大胆なアシメトリックのダイナミズムも、またとないブレゲらしさ。間違いなく稀代のアバンギャルドだった、"時計の歴史を200年早めた天才"、初代ブレゲの伝統は、「クラシック」の真髄だ。

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4. クラシック パーペチュアルカレンダー 7327

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自動巻き、18KRGケース、ケース径39㎜、パワーリザーブ約45時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥13,497,000

ブレゲ「クラシック」の大きな魅力のひとつが、デザインの大胆さだ。そのダイナミズムを永久カレンダーの複雑機構と融合させた品が「クラシック パーペチュアルカレンダー 7327」である。閏年までも表示する永久カレンダー機構では、視認性に気を取られるあまり盤面にリズム感のないデザインに陥りがちだが、このモデルではそうした小心さは微塵もない。ポインター式の巨大なデイトカレンダーと、対照的な曜日表示、1年かけてフライバックするレトログラード式の月カレンダー、表面をハンマーで叩く手仕事で仕上げたムーンフェイズの月と、スパンコールが煌めく夜空。どれも複雑機構の表象らしく、心躍らせる。

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5. クラシック トゥールビヨン エクストラフラット オートマティック 5367

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自動巻き、PTケース、ケース径41㎜、パワーリザーブ約80時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥28,754,000

現代高級腕時計の寵児ともいえる機構=トゥールビヨンは、ブレゲ創業者アブラアン-ルイ・ブレゲの発明品だ。1801年にフランスで特許を取得した自らの発明の魅力を、いまも再解釈し続けるのもまたブレゲである。「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット オートマティック 5367」は、“ブレゲ・ブルー”の異名を持つ美しいディープ・ブルーのエナメル文字盤を無二の機構に合わせ、パウダリーシルバーの表示や針と調和の取れたトゥールビヨンの美意識を完成させてみせた。しかもムーブメントの厚さはわずか3㎜、ケースの厚さも7.45㎜の極薄自動巻トゥールビヨンである。

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6. クラシック オーラムンディ 5717

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自動巻き、18KRGケース、ケース径43㎜、パワーリザーブ約55時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥13,266,000

「クラシック オーラ・ムンディ」の複雑機構は日付、デイ/ナイト、都市名表示のすべてが連動する“インスタント・ジャンプ・タイムゾーン”表示だ。一般的なデュアルタイム機構では、時差のある複数都市の時刻を、2本目の時針や別ダイヤルで表示して完結する。一方で「オーラ・ムンディ」では、任意に定めた第2の時間を「機械的にメモリー」し、8時位置のボタンで第1時間と自在に行き来する。第2時間は時刻も分単位でセットできるので、サマータイムやインドの30分単位の時差でもまったく問題としない。日付も記憶し、バックデイトが可能なので、たとえば東京の早暁からヨーロッパ時間に飛べば、日付も正しく1日戻る。その秀逸な機構を、絵画的なダイヤルで見せる洒落っ気もまた魅力だ。

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7.クラシック ダブルトゥールビヨン ケ・ド・ロルロージュ 5345

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手巻き、18KRGケース、ケース径46㎜、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、ラバーストラップ、1.6気圧防水。価格未定

まさに「手首の上の芸術品」ともいえる超大作。初代ブレゲの発明であるトゥールビヨン機構を2基備えただけでなく、その機構自体が12時間で1回、盤上で回転することで時針の役割も果たすという超絶発想を現実化した。それぞれの機構に動力を供給する香箱上には、ブレゲの頭文字Bを象った意匠を施すなど、サファイヤ製の文字盤が見せる全体像も見事なスペクタクルを提供する。ディテールの至るところにブレゲの装飾技巧が駆使されているのも魅力で、外観に一分の隙もない。シースルーバックからのぞく裏側は、パリのケ・ド・ロルロージュ39番に位置した初代ブレゲのアトリエを鳥瞰した、彫刻作品とも呼べるエングレーブで仕上げている。

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並木浩一(桐蔭横浜大学教授/時計ジャーナリスト)
1961年、神奈川県生まれ。1990年代より、バーゼルワールドやジュネーブサロンをはじめ、国内外で時計の取材を続ける。雑誌編集長や編集委員など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。ギャラクシー賞選奨委員、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『ロレックスが買えない。』など多数。

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