原研哉が手掛けるパビリオンのテーマは「海の蘇生」。単に海洋汚染の問題を提起するのではない。「子どもたちが忘れられなくなる経験を生み出したい」という思いから、「感動して心が動く体験」を提供するのだと語る。
Pen最新号『大阪 再発見』の第2特集は、4月13日に開幕する「大阪・関西万博」。万博テーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。会場には158の国・地域と7つの国際機関、8つのシグネチャーパビリオン、13の民間パビリオンと4つの国内パビリオンが並び、世界中からトップクリエイターと最先端テクノロジーが集結する。パビリオンを手掛けているクリエイターや研究者たちに、知られざる万博の魅力や見どころを案内してもらった。
『大阪 再発見』
Pen 2025年4月号 ¥880(税込)
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グラフィックデザインに興味を覚える以前の原研哉にとって、1970年の大阪万博は忘れがたい体験だった。「万博は大人のためというより、子どもたちの未来への目覚めをいざなう機会です。大阪万博の時は小学校6年生でしたが、他では得がたい素晴らしい刺激になりました。そういう意味では、子どもたちが忘れられなくなるような体験を生み出したいですね」と語る原が手掛けるパビリオンは、「ブルーオーシャン・ドーム」。テーマは「海の蘇生」だ。プラスチックによる海洋汚染の問題の現状をセンセーショナル、かつ感動的に伝える空間になっている。
「パビリオンは衝撃的であり、同時に美しい表現を目指しています。醜い汚染の現状を突きつけるのではなく、水という物質やその循環の摂理について目覚めたり、水の惑星としての地球の存在感や美しさを認識し直したりしてもらえるような表現を考えてきました」
原は、今回の万博は人々の態度変容を促す大きな機会と捉えている。
「人類が誕生して20万年ですが、人類の存続にとって、非常に危機的な分水嶺に僕らは立っていると思います。このパビリオンを見た方々が、海の環境やその蘇生について、単なる情報摂取ではなく、感動して心が動く体験を持ち帰っていただくことができれば、微力ながら未来への影響力を発揮できると思っています」


原 研哉
グラフィックデザイナー
1958年、岡山県生まれ。日本デザインセンター代表取締役社長。武蔵野美術大学教授。デザインの最前線にいながら教育の現場にも身を置き、美術系大学における知のあり方を模索。領域を問わないデザイン活動を行い、長野冬季オリンピックや愛知万博では、日本文化に深く根ざしたデザインを実践した。
(C)Takashi Sekiguchi