
2023年7月から大阪中之島美術館を皮切りに全国で好評を博している『民藝 MINGEIー美は暮らしのなかにある』展が、7会場目となる福岡市博物館にて4月6日(日)まで開催中だ。約100年前に思想家の柳宗悦が説いた民衆的工藝は「民藝」と名付けられ、時代を経てなお私たちに生活の美を喚起する。本展では「衣・食・住」をテーマに、暮らしに用いられてきた民藝の品々約150点を展示。産地で働くつくり手と、いまに受け継がれる手仕事も紹介する。
新旧の民藝を一堂に揃え、つくり手の思いを伝える
会場には江戸時代の刺し子の着物や大胆な模様のアイヌの衣装、イギリスのスリップウェアの皿、美しいフォルムの芯切ハサミや手箒など数々の品が並ぶ。これらは、名も無きつくり手たちが生み出す日用品にこそ美が宿ることを発見した柳の視点を中心に選ばれたもの。東京・目黒区駒場の日本民藝館や静岡市立芹沢銈介美術館などが所蔵する、時代や地域も異なる名品が揃う。




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柳亡きあとも民藝運動は広がりをみせ、日本各地では伝統を受け継ぐ職人や手仕事の品が誕生しているが、展覧会では小鹿田焼(大分)、丹波布(兵庫)、鳥越竹細工(岩手)、八尾和紙(富山)、倉敷ガラス(岡山)の5つの産地を紹介。現代作の展示とともに、産地を取材したオリジナル映像により働く人々の想いや制作風景を伝える。

左から、角酒瓶 小谷眞三 倉敷(岡山) 1979 年、酒瓶 小谷眞三 倉敷(岡山) 1985 年頃、栓付瓶 メキシコ 20 世紀中頃。いずれも日本民藝館蔵 photo: Yuki Ogawa

また現在の民藝ブームの先駆者ともいえるMOGI Folk Artディレクターのテリー・エリス、北村恵子によるインテリア実例も展示。特設ショップでは東京・高円寺のMOGI Folk Artが日本各地のつくり手たちと交流して生み出した別注品の数々や、染色家/アーティストの宮入圭太が本展のためにデザインしたグッズ、各地の焼き物やガラス、布、和紙、木工などを多数販売。現代の暮らしに取り入れたくなる民藝と出合えるだろう。

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本展覧会に合わせ、会場となる福岡市博物館では『民具と生活―暮らしの中の意匠、暮らしのための設計―』(〜4月13日(日))が開催中だ。「民具」とは経済人で文化人でもあった渋沢敬三による造語で、私たちが日常生活を送るうえで欠かさず使用してきた道具を指す。博物館所蔵の日用雑貨を中心に、多種多様な民具が一挙公開される。さらに会期中は民藝についての理解が深まるイベントも続々登場。3月8日(土)は高木崇雄(工藝風向代表)による講演会、3月20日(木・祝)には鞍田崇(哲学者)と中原慎一郎(ランドスケーププロダクツ)によるコラボトーク、3月29日(土)〜30日(日)は終日さまざまなプログラムが実施される予定だ。


『民藝 MINGEIー美は暮らしのなかにある』
開催期間:開催中〜2025年4月6日(日)
開催場所:福岡市博物館
福岡県福岡市早良区百道浜3-1-1