大阪・関西万博で、我々が普段スーパーで見かける野菜をアートピースのような美しい姿で見られるのが、小山薫堂がプロデュースするパビリオン「EARTH MART(アースマート)」だ。本展示を担当する食文化の伝道師、奥津爾(ちかし)がその魅力を語る。
Pen最新号『大阪 再発見』の第2特集は、4月13日に開幕する「大阪・関西万博」。万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。会場には158の国・地域と7つの国際機関、8つのシグネチャーパビリオン、13の民間パビリオンと4つの国内パビリオンが並び、世界中からトップクリエイターと最先端テクノロジーが集結する。パビリオンを手掛けているクリエイターや研究者たちに、知られざる万博の魅力や見どころを案内してもらった。
『大阪 再発見』
Pen 2025年4月号 ¥880(税込)
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小山薫堂/シグネチャーパビリオン「EARTH MART」

小山薫堂がプロデュースする空想のスーパーマーケット「アースマート」。いくつかのセクションに分かれた展示の中で、最初に目にする展示が「野菜の一生」だ。
「展示する大半は薹(とう)が立ったり、枯れ果てた野菜たち。スーパーで見ることのない姿です」と話すのは、展示を担当する奥津爾。長崎県雲仙市の野菜直売所「タネト」の経営や農や食をテーマとした企画を手掛ける、食文化の伝道師だ。
枯れてなおアートピースのような美しい姿を見せる野菜たち。それらは、一般的なスーパーで購入する野菜とは異なるようだ。
「雲仙市の有機栽培農家、岩﨑政利さんが自家採種し栽培する在来品種です。岩﨑さんは40年にわたり在来品種を育てる唯一無二の農家。僕は彼が育てる野菜のおいしさに衝撃を受け、東京から雲仙へ移住しタネトを始めたほどです」
万博開催中、月に数度は岩﨑の畑に赴き、そこで見つけたものを持ち帰って、展示に加えるという。開催期間中は展示内容も変化する。
「枯れた状態だけでなく、花が咲き茎が伸びた状態も見てもらえるはず。在来品種の野菜は日本の豊かな食文化の礎となった存在。全国で存続の危機にある在来品種に興味を持ってもらえたら」
ほかにも食に関する「当たり前」がリセットされる体験がちりばめられているという。


奥津 爾
タネト店主
1975年、東京都生まれ。薬物依存症のシンクタンク勤務を経て、2003年、妻の典子さんと有機野菜や伝統製法でつくられた調味料などを使う料理教室「オーガニックベース」を開店。13年に長崎県雲仙市に移住し、『種を蒔くデザイン展』など食にまつわる多彩な企画を手掛ける。19年、オーガニック直売所「タネト」を開店。