業界きっての情報通が直伝! 大阪の最旬エリア「肥後橋・淀屋橋」の注目スポット11選

  • 写真:内藤貞保、齋藤誠一、蛭子 真
  • 文:植田沙羅、藤井亮一、脇本暁子
  • イラスト:別府麻衣
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1989年の創刊以来、「街の中心で遊ぶための雑誌」というスタンスで編まれ、関西圏で親しまれている雑誌『ミーツ・リージョナル』。2019年より編集長を務める松尾修平に、最旬エリア、肥後橋・淀屋橋を案内してもらった。

大阪がいま、大きく動き出している。そんな大阪の街をより深く知るために、最新の旬なエリアから、名建築やローカルフードまで、地元をよく知る編集者やクリエイターに案内をしてもらった。第2特集では開催直前となった「大阪・関西万博」の見どころを紹介。ダイナミックに変化を続ける“いま”だからこそ出会える大阪の魅力を発見しよう。

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大阪市のほぼ中央に位置する肥後橋・淀屋橋。“水都”大阪を象徴する川に架けられた橋の名がそれぞれ地名となっていった。周辺には日本銀行大阪支店や旧・住友財閥系のビルが立ち並び、1920年代頃、人口・経済力ともに東京をしのぎ「大大阪時代」と呼ばれた大阪の名残を感じられる。オフィス街として発展してきたが、近年はレトロ建築などを改装した飲食店やアパレルショップなどが増え、昼夜ともに賑わう街となっている。

①街に馴染む小さな書店は、大阪の建築界を支える礎

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上:10坪ほどの店内には建築関連が7割、そのほかの書籍や雑誌が3割のラインアップ。建築学科の教員の口コミで、学生たちも多く来店する。 左下:外観は馴染み深い街の書店の趣。大阪市内の設計事務所などに配達も行い、地域のつながりを大切にしている。 右下:オフィスが近い松尾編集長もふらりと足を運ぶ。肥後橋はデザイン事務所も多く、クリエイティブな人々がよく訪れる。

「こだわりの選書はアイデアソースにも。古書のセレクトも僕的に好み」(松尾)。“街の書店”らしい佇まいを残す「柳々堂」は、実は建築書籍を扱う専門書店の顔を持つ。創業は1894年頃で、建築に携わる肥後橋エリアの人々の要望に応えるかたちで、戦前から建築書籍や美術書が増えていった。現在はアートブックやデザイン関連の書物まで並ぶ。5年ほど前から古書の取り扱いもスタート。デザイン関連や洋書など古書のジャンルも幅広く、ゆっくりと一期一会を楽しむ者も多い。

柳々堂
住所:大阪府大阪市西区京町堀1-12-3
TEL:06-6443-0167 
営業日:9時~19時(月~金) 9時~15時(土) 
定休日:日、祝。土は不定休 
Instagram:@ryuryudo

②店主こだわりの酒が、焼き鳥に華を添える

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上:メニューはコースのみ(¥6,000~)で15品ほど。皮がパリッとしたねぎまをはじめ、こだわりの焼き鳥が楽しめる。ビールのきめ細かな泡がおいしい「シャープ注ぎ」¥800 下:シックなカウンターの中央にはこだわりのビールサーバー「スイングカラン」が備えられる。

「抜群の串×ナチュラルワイン×シックな空間、こだわりのビールも最高」(松尾)。愛媛県今治出身の店主が、大好きなものを集めたという焼き鳥の店。地元・愛媛の「媛っこ地鶏」の雌だけを使った焼き鳥は、健康的でほのかに野性味を感じさせる味わい。合わせるのは、そのおいしさに店主が感銘を受けたというサーバー「スイングカラン」で注ぐ生ビールと、ナチュラルワインだ。ビールは味わいの変わる5通りの注ぎ方で楽しめ、ワインセラーには約500本のボトルを揃えている。

焼き鳥とき
住所:大阪府大阪市西区江戸堀1-15-4
TEL:06-7410-2228 
営業時間:18時~23時 
定休日:日 
Instagram:@yakitori.toki

③昼と夜で表情が違う、蕎麦とうどんの老舗

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上:夜のメニューで人気のお造りの盛り合わせ(時価)、いわし煮付け¥580、カニクリームコロッケ¥480。日本酒も豊富に取り揃える。 下:そば屋の玉子焼¥550、カレーうどん¥850。どちらも鰹の出汁が決め手。

親子2代で38年続く老舗。蕎麦職人だった父親が独立して店を構え、4年前に代替わりした。看板メニューの蕎麦とうどんは、どちらも手打ちで提供し、昼は定食屋、夜は居酒屋の顔を持つ。セットのご飯が親子丼や炊き込みご飯など毎日変わる、うどん定とそば定が人気メニュー。木津卸売市場から仕入れた新鮮な食材が、出汁をたっぷりと使った多彩な料理に生まれ変わる。料理と酒を楽しんだ客たちは、名物のざる蕎麦で締めて家路につく。

喜作
住所:大阪府大阪市西区江戸堀1‐10‐33
TEL:06-6446-5678
営業時間:11時〜14時 17時~21時
定休日:土、日、祝 

④個性豊かな作家の器が、日々の暮らしを彩る

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上:木に漆をあしらった荒川蓮太郎の器。上から、盆皿6寸¥8,800、盆皿8寸各¥15,400、汁椀各¥15,400 下:1900年代のアンティーク家具にディスプレイされた器など。500点を超える商品から厳選し、常時入れ替えている。

「海外のテーブルウェアを思わせる作家作品が揃っているところがツボ」(松尾)。国内作家の器を扱うライフスタイルショップ。オンラインからはじまり、実店舗をオープンしたのは2022年。現在は土曜日のみの営業で、月に1度の個展やイベント開催時のみ不定期で店を開けている。陶器、磁器、木工、ガラス、カトラリーなど、店主が現地を訪ねて目利きした作家120人ほどの作品を販売している。3月15日からは3周年のイベントを開催予定。

スクレ
住所:大阪府大阪市西区京町堀1-18-27 西船場ビル 2F
TEL:06-6450-8355 
営業時間:13時~19時 
定休日:月~金、日(土曜のみ営業) 
Instagram:@secret_osaka

⑤服探しに苦心する、すべての“ビッグアンクル”へ

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左:セレクトショップや卸業務に携わって来た店主は、服の着こなしやケア方法まで豊富な知識を気さくに伝えてくれる。 右:アスリートの顧客も多いのが納得の品揃え。最近ではSNSを見て訪れる欧米からの観光客も多いという。

「店主は某セレクトご出身ゆえ、ビッグサイズながら上品なアイテムが揃う」(松尾)。身長188㎝の店主が、高身長や体格が大きな人に向け、服選びの楽しさを伝えるアパレルショップ。アメリカから仕入れた古着を中心に、新品や雑貨も揃う。サイズは4XLまで扱い、常時200点ほどのアイテムをラインアップ。あえてオーバーサイズを求める客も通うという。ラルフ ローレンを筆頭にブルックス ブラザーズ、エディー・バウアーなどのオーセンティックなアイテムをメインに扱う。

ビッグアンクルストア
住所:大阪府大阪市西区京町堀3-3-23
TEL:06-6867-9437 
営業日:13時~18時(月~木) 13時~19時(土、日) 
定休日:金 
Instagram:@big_uncle_store

⑥まだ見ぬアートと本に出会う、独立系書店

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左:インド留学の経験を持つ音楽家・HIROSから受け継いだチキンカレーは有機栽培のミルキークイーン玄米やトマトを使う。¥900 右:店内の棚には目を引くポップが添えられ、難解なアートブックにも自然と手が伸びる。

「並ぶ書籍はもちろん、店主・石川さんの本とアート愛を体感しに」(松尾)。ギャラリーとカフェを併設した静かな書店。アートに関する本を中心に、写真集、社会学や人類学などの書籍、ZINEやリトルプレスまで、店主・石川あき子がセレクトした本が並ぶ。インドネシアの独立系出版社が手掛けるユニークなコレクションブックなど、国内の書店ではここでしか手に入らないものも多い。ギャラリーでは年10回ほど展覧会が開催され、おもに関西圏のアーティストの活動の場となっている。

カロ ブックショップ&カフェ
住所:大阪府大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル5F
営業時間:12時~19時(火~金) 12時~18時(土) 
定休日:日、月
www.calobookshop.com

⑦米が主役の土鍋ご飯と、豪快な炭火焼き料理

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左上: 豪快に炭火を使う炙り料理も人気。 左下:鶏油を絡めて香り付けした「但馬鶏もも籠炙り~柚子こしょう菊菜のせ」¥1,320、コーヒー風味のエクレアにレバーペーストをのせた新感覚なひと皿「Thisエクレバ」¥660、「YESな生レモン黒糖サワー」¥605 右:「炭薫る鳥ひき肉めし~味噌糠漬け蘭王卵のせ」¥1,540

「いま、界隈で最も話題なご飯屋さん。多彩な土鍋めしは食べ比べがお薦めです」(松尾)。店主が生まれ育った、京都舞鶴産のコシヒカリを特注の土鍋で炊いた土鍋ご飯が人気。創意工夫を凝らす土鍋ご飯は、日によってメニューが変わるので、訪問するたびに新たな発見を楽しめる。この日の鍋ご飯「炭薫る鳥ひき肉めし~味噌糠漬け蘭王卵のせ」は下味をつけた鶏モモミンチと炊き込んだ釜飯に備長炭で追い炭。炭の薫香を纏ったそぼろに負けない、艶々なご飯の凝縮した甘さだ。

めし処 ゑノゐ
住所:大阪府大阪市中央区瓦町4-5-6 2F
TEL:06-7777-5072 
営業日16時~24時(月~土) 16時~23時(日、祝) 
不定休
Instagram:@enoi_meshi

⑧目にも美しい驚きある演出に、会話が弾むイノベイティブ中華

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左:最高峰の中国料理と謳われるスープ「佛跳牆(ファッチューチョン)」は、食材をひとつずつ説明するプレゼンテーションがうれしい。単品(¥16,500)のほかコースメニュー「温故知新」(¥27,500)でも楽しめる。右:木の温もりを感じる店内。

「ひと皿ひと皿のプレゼンテーションも楽しい」(松尾)。ANAクラウンプラザホテル大阪で10年間副料理長を務め、数多の料理コンクールで受賞歴のある花田洋平が、2024年にオープンした中華のファインダイニング。モダンな店内からは、活気あふれるオープンキッチンを見渡せる。幻の鴨といわれる河内鴨の北京ダックなど、日本の食材を活かしたこれまでにない中華料理には、紹興酒やモンゴルの酒などユニークなペアリングも楽しい。

アトリエ ハナダ by 森本
住所:大阪府大阪市中央区北浜4-3-1 淀屋橋odona A棟 2F
TEL:06-6926-8395 
営業時間:11時30分~15時 18時~22時
定休日:日 
https://atelierhanada.jp

⑨喫茶するひと時に向き合う、大人にふさわしい寛ぎの場

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左:店主・細井立矢がていねいに淹れる「モールブレンド」¥550。ライ麦パンにベシャメルソースを塗り、2種のチーズとハム、目玉焼きを添えた「クロックマダム」¥850 右:重厚感のある金庫扉は、隠れ家への入り口。 

「口数少ない店主・細井さんの醸す、緩い緊張感がちょうど心地よい」(松尾)。1927年竣工のレトロな芝川ビルに2008年にオープンした喫茶店。かつて金庫室だった地下の一角に、カウンター9席のコンパクトな店が佇む。浅煎りから深煎りまで揃うが、まず味わいたいのは「モールブレンド」。甘い香りとまろやかな苦みとコクが効いた、飽きのこない味だ。平日14時以降限定でネルドリップを選ぶこともでき、より味わい深い一杯を楽しめる。

モール&ホソイコーヒーズ
住所:大阪府大阪市中央区伏見町3-3-3 芝川ビル B1F
TEL:06-6232-3616 
営業時間:11時30分~20時(火~金) 12時~18時(土、日、祝)
定休日:月、その他不定休あり 
http://mole-and-hosoicoffees.com

⑩小麦そのものを味わう、香り豊かな自家製粉うどん

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上:自家製粉粗挽きざるうどん¥890、天ぷら盛り合わせ¥1,550、日本酒は¥710から揃う。うどんには五島灘の塩や静岡県産の本わさびを添えて。 下:店内には小麦を挽く製粉機が置かれている。

「粗挽きうどんは大阪でもここだけ。県外からのお客様の接待にも重宝します」(松尾)。手打ち蕎麦の名店で修業を積んだ店主が営むうどん屋。蕎麦のように石臼で小麦の実をまるごと粗挽いた、自家製粉のうどんは他にない味。ふすまが入った粉はやや目が粗く、赤茶けていて香ばしい。細めの麺は一本が長く、噛みしめるたびに小麦の甘みと香りが広がり、ざらりとした舌触りが新鮮だ。うどんつゆも蕎麦のようにかえしを用い、鰹節などから取った出汁と合わせる。

青空ブルー
住所:大阪府大阪市中央区平野町4-5-8
TEL:06-4708-8812 
営業時間:11時30分~14時30分、17時30分~22時30分(土、祝は〜21時30分)
定休日:日 
www.aozora.blue

⑪ジャンルを超えた“いいもの”を知る、心地よい空間

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上:プロダクトデザイナー・藤城成貴が手掛けた内装に、アートセラミックが映える。 下:アパレルはつくり手の顔が見える日本ブランドが多く、なかでもコモリは豊富に扱う。店舗には季節の生花を生けるのもこだわりだ。

「同系列店の中でもアパレルアイテムが多数あるので、カップルやご夫婦でぜひ」(松尾)。1999年にインテリアショップからはじまった「ディエチ」。カテゴリーにとらわれることなく、器や雑貨、アパレルを集め、現在は大阪で3店舗とギャラリーを展開する。芝川ビル店は常時30ほどのブランドが並び、うち7割がアパレルだ。アートセラミックも豊富で、フィンランドを代表するアーティスト、ビルガー・カイピアイネンや、ルート・ブリュックの作品などがディスプレイされ、購入もできる。

ディエチ芝川ビル店
住所:大阪府大阪市中央区伏見町3-3-3 芝川ビル305号室
TEL:06-6282-7334
営業時間:12時~19時
定休日:火、水
https://dieci-cafe.com/dieci

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案内人:松尾修平

『ミーツ・リージョナル』編集長。兵庫県生まれ。2002年、同誌を発行する京阪神エルマガジン社に入社。情報誌の編集などを経て、08年より『ミーツ・リージョナル』編集室。19年より現職。
https://www.lmagazine.jp/meets

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