〈京都府京都市〉
長者湯
京都は銭湯の聖地だ。年々減少しているとはいえ、市街地の歩いて行ける距離に真っ当な銭湯が何軒も点在している。それに、なんといっても京都は水がいい。薪を焚いて沸かした地下水は、時に温泉を凌ぐ心地よさを誇る。しかも、ほとんどが水風呂を備えていて、サウナ無料は京都では常識だ。日曜日に朝風呂営業をしている銭湯が多いのもうれしい。本当はすべての京都銭湯を湯道百選に入れたいのだが、今回はあえて「長者湯」を選んでみた。
大正6年に創業し、今年で108年目。戦前からの風情をきちんと残しながら、徹底した清掃で「京都一きれいな風呂屋」と湯主は胸を張る。しかし実は数年前、三代目の間嶋正明さんは廃業を覚悟したことがあった。それを覆させたのが、サラリーマンを辞めて実家に戻ってきた息子の健太さんだ。四代目は30年ぶりの大改装を決意。洗い場を縮小してサウナを設置し、水風呂を倍の広さにした。
ただ大切なところはなにも変えていない。薪窯の奥の地下にある石組みの井戸を見せてもらった。とびきりの水脈から湧き出した地下水のなんと美しいこと! よい湯のために、贅を尽くすとはまさにこういうことなのかもしれない。
京料理や京野菜が一つの価値として語られるならば、京都の銭湯を「京湯」と呼ぶのはどうだろう? 伝統と革新を繰り返しながら、京湯は輝き続けるのである。
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長者湯
住所:京都府京都市上京区上長者町通松屋町西入ル須浜東町450TEL:075-441-1223
営業時間:15時10分~24時
定休日:火曜日
料金:大人¥510、6~12歳¥160、0~5歳¥60
https://1010.kyoto/spot/choujayu
※この記事はPen 2025年4月号より再編集した記事です。