素性の良さはDNA!? 「レクサスLBX MORIZO RR」がドリフト仕様な理由とは?【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】第217回

  • 写真&文:青木雄介
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「MORIZO RR」と刻まれたリアハッチのバッジ。

国産スポーツの走りで、「もっと大人向けのシックなモデルがあればいいのに」という潜在欲求がずっとあった。国産で、即サーキットに持ち込めるカリカリのチューンが施されたモデルは買えても、見た目が普通で内装にもお金をかけた大人のモデルは案外ない。唯一やっていたのはレクサスのFシリーズだけど、コンパクトモデルはなかった。それは“モリゾウ”こと豊田章男会長も分かっていて、「それなら僕の名前でやりましょう」となったのがプロジェクト、「LBX MORIZO RR」なのだと思う。

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車名の「RR」とは豊田章男氏のプライベートレーシングチームである「ROOKIE Racing」の頭文字。

狙いは、走りを忘れたくない先輩たち向けの上質なコンパクトSUV。アクティブな社長や重役クラスで、自分のアシに3ペダルのスポーツカーを選ぶセルフ・ブランディングはアリですよ。でも日産のZやトヨタのGRヤリスだと「社長としてちょっと……」みたいな、見栄えの問題で社員の手前乗りにくいケースはあるかも知れないよね(笑)。かといって、欧州製高級スポーツはガチに保守的な業界だと、悪目立ちしてやっぱり乗りにくい……。

そこで想像しよう。章男会長が「僕のLBXに乗ってみませんか」と誘ってくれているんだ(笑)

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デュアルマフラーと専用バンパーで武装。ノーマルより車幅を15mm拡幅し、車高を10mm 低くしている。

いざ、鎌倉へ。乗せていただきましょう。このクルマが名経営者にして名伯楽である豊田章男会長の名前が冠せられていることは、どんなにお堅い業界のお堅い御仁でも分かっていること。運転手をつけずに颯爽と打合せにゴルフにと、自ら3ペダルのレクサスを運転してやってきた先輩に、誰もが新しい風を感じてくれるはず(笑)

とまぁ、そんなことを、箱根に行く道すがらに妄想してたんだな。

つまり、刺さる層が確実に見えているプロダクト。まず防音材と二重ガラスでしっかり静音(整音)されたスポーツカーで乗り心地も上質。全開に出来る1.6Lの直列3気筒はよく回るし、エグゾーストノートは低くてず太いサウンドを響かせる。アクセルを抜くと、ブローオフバルブよろしくキュンキュンいってすこぶるエモい(笑)。モリゾウさんが劇的ビフォーアフターの“匠”みたいに「貴方の好きな音を残しておきました」って言っている気がして感涙ですよ。

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GRヤリスと同じ1.6L直列3気筒ターボエンジンは304PSのパワーと400Nmのトルクを弾き出す。アクティブサウンドコントロール機能によりドライビングサウンドにも演出が入る。

峠に行けば国産スポーツらしい、素性の良い走りですこぶる快調。ピーキーさはなくて自然な舵角で、アンダーを出さずにトルクベクタリングでフラットを保つ。アンダーを出したくなさすぎてオーバーステアリングになる傾向もあるけど、おそらく当日履いていたスタッドレスタイヤのせいだと思う。

「ヒール・アンド・トゥをやってください」とばかりのペダルレイアウトなので、峠のみならずついつい街中でもやっちゃう。クルマで回転数を合わせてくれるオートブリッピングは付いているけど、やっちゃいたくなるのは、こだわりを感じる“素性の良さ”への敬意に他ならない。

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小さな高級車というLBXのコンセプトはそのままに、専用デザインのシートが施される。

思えばトヨタの「スプリンタートレノ(AE86)」が象徴するように、国産メーカーはスポーツカーに素性の良さを求めてきた。後輪駆動で軽量モデルのドリフトのしやすさやハンドリングの軽快さは、そういう構造(素性)ゆえに才能のようにもたらされるという考え方だ。この考え方は広く、それ以降の国産スポーツ界の価値観に浸透していき、コミック『頭文字D』はもちろん国産スポーツの正義として君臨してきた。

国産の3ペダルモデルの魅力は特に“素性の良さ”がセットになっている。シフトチェンジにかけるひと手間を愉しいお約束として、スポーツカーらしい天賦の才で埋めなきゃならない。そういう意味で「LBX MORIZO RR」は見た目がホットハッチなコンパクトSUVだから、ステアリングの舵角をもっと絞ってクイックにしてデュアルクラッチにする方向もあったと思う。乗ってみると、まぁそんなシャープな操作感がLBXの素性の良さの引き出し方だったのではないか、と思うところはあったのね。

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19インチのワイドタイヤを履き、スポット溶接を増やすことでボディ剛性は大幅に上げられている。

ただ、そうすると欧州系コンパクトっぽいし、レクサスらしくなくなる可能性もある。もっといえばモリゾウさんが欲しいモデルでもなく、らしくもないのかも。そして、そんな箱根の帰り道で確信したことがある。

モリゾウさんはやっぱり前輪駆動のホットハッチより、3ペダルで後輪駆動のもう少し大きなスポーツカーが好きなんだろうな、と。そしてドリフト好き。これってもはやトヨタのスポーツカーを語る上でも大事な素性なのは間違いないよね。

レクサスLBX MORIZO RR

全長×全幅×全高:4,190×1,840×1,535mm
排気量:1,618cc
エンジン:直列3気筒ターボ
最高出力:304PS / 6,500rpm
最大トルク:400N・m / 3,250-4,600rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン四輪駆動)
車両価格:¥6,500,000 
問い合わせ先/レクサスインフォメーションデスク
TEL:0800-500-5577
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